第33話

身内との試合。特訓ではない決戦をするの初めてだ。


「じゃあ行くか、食後の運動がてらに」


「よろしくお願いします!!!」


 二人は超越仮想世界に転送される。


「フィル=フリート、ダックス・サラムゾー2名の転送を開始します。その場から動かないで下さい。」


 サラムゾーって言うんだ、初めて聞いた本名だ。

一緒に特訓をしたことがある。ダックスさんはかなり強いが、俺は相性は悪くない勝機は十分にある。

 

 もうあの空間にはかなり慣れた。人がやられたりしてもすぐに再生されるし本体にはダメージは一切入らないことが分かってからは俺もかなり動けるようになった。


 「始まるぞ!1本勝負」


 互いに動き始める。 訳ではなかった。両者共に初めは自分のいつも通りの動きをする。


 ダックスは大盾を前に構え防御の体制を整える。

これはいつものダックスさんの戦い方だ。圧倒的な防御力があり、攻撃力もしっかりある。がかなり持久戦が得意とする。


 そして俺は魔術による魔法と召喚魔剣を使用した、魔術師だ。今の俺にはダックスさんには知られてないレイルバスターがあるし、展開の早い試合も得意としている。


「ドン!!!」


 ダックスさんは静かに大盾を地面に叩き、地ならしを起こす。この攻撃こそがダックスさんが強いと思う最大の理由だ。広範囲による回避の難しい攻撃。


「ぐっ」

 

 俺はその攻撃は大人しく食らうことにした。


「俺の攻撃をよく理解してるじゃあないか、やっぱやるなあぁフィル」


 そう、この地ならしをした後、大盾は機動力がほぼ無いからその後の攻撃に繋がらない。

 俺はダックスさんに褒められて少し浮かれていると、


「では、そろそろ俺も一肌脱ごうか!武器変形トランスフォーム!」


「え?」


浮かれていて反応が少し遅れる。

 大盾が両剣に変形される。そして一踏み込みで接近して来る。それに俺は短剣で対抗する。


 「甘いな、そんな剣じゃ俺には届かん!」


 初めて見る攻撃に俺は防戦一方となる。扱いの難しいと言われる両者をダックスさんは完璧に扱う。


「終わりだ!」


 そして、両剣を斜めに振り下ろす。会心の一撃だ。


「待ってましたよその攻撃を」


 と俺は両剣が振り下ろされる前に短剣を胸元に刺そうとする。

 勝った─────




 

と思った俺の身体は横に真っ二つになっていた。


「えっ」


「対戦が終了しました。転送を開始します。その場から動かないで下さい。」


─────転送が完了しました。



 俺は負けた。完全に、あの瞬間俺は何されたのかが全くわからないまま完膚なきまでに負けた。俺の有利な状況で、



「俺の勝ちだなフィル」


 勝ち誇ったドヤ顔で俺の方に歩いて来る。


「剣使えるですか?」


 俺はダックスさんの事がより知りたくなった。

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