第8話
「うわぁぁぁ」
何とも情け無い言葉だった。
男なら少しはこんな俺と同じサイズの非力そうなモンスターくらいには抵抗ができる方が格好はつくだろう、でも俺は見たことのない生物にただ怯えるだけだった。
死を恐れて目をつぶって、手を前にして、
「く、来るなー」
と大声で叫んだ。
「危ねぇぇ!」
とすぐに来ない俺を気にした兄の声が聞こえた。
すると兄は信じられない光景を目の当たりにする、
見たことのないとんでもないサイズの氷塊に、フィルと同じくらいのモンスターが閉じ込められ凍死している。
「これはフィルがやったのか?」
と思っていると白髪の髪の毛が少し青色に染まっていた。
「え?え?どうなってるの?し、死んでる」
俺はさっきまで俺を襲おうとしていたモンスターが目の前で氷漬けにされていた。
誰がやったのかはさっぱり分からない、けど救われた事は確かだ。
「大丈夫かフィル!」
兄さんの声が聞こえた。
もしかして、兄さんが俺を助けてくれたのか?
「ありがとう、本当にありがとう」
すぐに感謝を伝えた。この時には完全に兄さんへの恐怖は消えていた。
なにせ命の恩人だから。
「い、いやこれはお前が…」
「ありがとう、ありがとう」
俺は感謝し続けた。
兄さんは何かを諦めたかのように、
「良かったよ、間に合って、」(ドヤ顔)
かっかっこいい〜
「お、俺、兄さん見たいなかっこよくて強い人間になりたい!」
と兄さんの前で堂々と決意表明をした。
兄は心の中で、
「こんなに早くフィルにやりたい事が見つかるなんて、でもこの世界は」
俺に憧れてくれるのは嬉しい、けれど俺と同じようになるのは、と考えるとすぐには頷けない。
しかしそんな俺を目を輝かせて見るフィルを見捨てる事はできなかった。
「ま、まあ分かったから取り敢えずあと一年と三日!大人しく待っておけ!待つ事が出来たら、俺みたいな人間になることを許可する」
「分かった絶対に待つよ!」
と言うと今の目的を完全に忘れて家に走って帰って行った。
兄は一人でエルナに近づき、頭を下げる
「母さん、ごめんフィルも俺と同じクローシス隊員になりたいそうだ、母さんはフィルの入隊に反対だったよな、でもこれはあいつのやりたい事なんだ。だから母さんも天国でフィルの成長を見てあげて下さい。」
と言うとエルナが
「フィルのやりたい事だったのなら反対はしないよ」
と笑って言っているような気がした。
「母さんの死体をそのままにしておいている、そしてエイズがこんな所に辿り着くとは、間違いない母さんを殺したのは隊員の中にいる!」
とリューニス=フリートの目つきが変わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます