「777回目の結末は」‥KAC20236‥アンラッキー7

神美

始まりか終わりか

 776回目の君が死んだ。


 君が初めて死んでしまった時、俺はなぜかこのループの力を手に入れた。

 その力を毎回使って俺は大好きな君を助けようとする。


 けれど何をやっても君はこの世から消されてしまう。君にどんな言葉をかけても、どんな所に連れて行っても。最後に現れる車が君の体をはじき飛ばし、命を奪う。


 俺はその度にループで最初に戻る。

 これで777回目、途方もない数。

 始まりは大勢の人がいる、このロータリー。 

 バスを待つ君が携帯を落とすんだ。


 俺達は学校で顔なじみだったから。俺がそれを拾って君に渡せばそこから会話は広がる。

 何度も見れる君の笑顔。

 でも何度も失う笑顔。

 守りたい、どうすれば君は死なずに済むのか。


 777回目、俺は今までしたことのない行動を取ることにした。

 君に声をかけるのをやめた。

 大好きな君がそこにいても俺は声をかけなかった。


 しばらくしたらいつものあの車が現れた。

 これで何か、変化するのだろうか。


 車がエンジン音を響かせて向かってくる。 周囲の人達も異様な気配を察したのか、動揺しながら逃げていく。


 何度も君の命を奪った車。

 その車はまっすぐに俺に向かってきていた。


 目前に来た時、俺は運転席にいた存在が誰なのかがわかった。

 そうか、これはすべて俺のせいだったんだ。

 因果応報とはよく言うものだ。


 なぜこの力を授かったのか。それはきっと関係のない、あいつを巻き込むなという神様のお達しなのかもしれない。


 運転席にいたのは俺の元恋人。すごい表情でハンドルを握り、俺を睨む。

 俺は『好きな人ができた』と言って、そいつを振っていたのだ。


 この世でいなくなるべきは君じゃない。

 俺だったのだ。




 目を開けると白い天井が見えた。

 俺は息をしている、体は動かない。


 けれど君は側にいた。

 心配そうに俺を見ていた。

 この事態はラッキーなのか、違うのか。

 でも一歩を踏み出し、あのループから抜け出せたのなら良かった。

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