ホワイトデーだよ

藤泉都理

ホワイトデーだよ




「はいこれ」

「なにこれ」

「なにって。あれだよ。あれあれ」

「あれあれっていう名前のカップラーメンなの?」

「ちげえし。そもそもカップラーメンじゃねえし」

「どう見たってカップラーメンじゃない」

「いやいやいや。よく文字を読んでみろ。カップラーメンの容器にそっくりだけど。ちげえだろ」

「え?なに?花とかリボンとかの絵が多すぎて文字が読めない」

「おばか!」

「おばばって言う方がおばばなんですー」

「ちげえよ!おばかって言ったんだよ。つーか!ほら。ここ!ここを読め!」

「えー。なになに。チョコっとお返し。いやいや。ちょこっとって量じゃないでしょ」

「そこじゃねえだろ!チョコだよ!チョコケーキ!お湯を注いで三分待ったらチョコケーキができんの!」

「はあん」

「なんだよ」

「いや。最初にバレンタインチョコのお返しって言わないあんたが悪いし。手作りには手作りで返すっていう約束も破ったわね」

「人にはなー。得手不得手って言葉があってだなー」

「どんなに不格好でも気にしないのに」

「味も気にしないってか?」

「味は気にするわよ」

「だからこれを買って来たんだよ」

「なるほど。ちょっとは苦労感を示したかったわけね。で。これはどういう経緯で手に入れることができたの?」

「いや。いつも行ってる薬局に期間限定で置いてあって。おまえ。期間限定も珍しいのも好きだろ」

「まあそうだけど。まあいいか。じゃあいただきます」

「いやおい」

「え?なに?」

「いや。あの。バレンタインの返事はいいのかよ?」

「え?受け取った時点で交際しましょってことじゃなかったの?」

「ちげーだろ。受け取るけど返事はホワイトデーにするってことだろ」

「ああそうなの。で。返事は?」

「かっる!そっけな!」

「で。返事は?」

「ああ~~~。の。お願いしまーす」

「うんよろしく。じゃあ食べようか」

「おう」




 晴れて交際することになった二人はチョコケーキカップに熱湯を注ぎ、三分待ってから、美味しく食べた。












(2023.3.14)


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