第10話 意地と意地
これより決闘計画(プラン・デュエル)による評価試験2日目。XE-γB07『ティアマト』VS XO-γB03『リヴァイアサン』を開始します。
評価試験2日目が始まる。圧倒的機動力を誇る『ティアマト』が『リヴァイアサン』を翻弄する流れで評価試験は先行していった。
「『オセアン』の『γ‐ブレイク』も悪くない機動力を持っていそうだが、相手が悪いな、極限まで装甲を削ぎ落して軽量化してある『EUN(ユーン)』の『γ‐ブレイク』は基本性能で比較したら恐らく6勢力随一の機動力を持った機体だろうな」
「『オセアン』の『γ‐ブレイク』の救いは『EUN(ユーン)』の『γ‐ブレイク』が近接特化型の為に、遠距離武器をまともに持ち合わせていないことでしょうね。『ブレイク』シリーズ共通兵装のライフルでは被弾は出来ても破壊までは出来ないでしょうね」
「それ故に『オセアン』の『γ‐ブレイク』が速射性のある威力が高い武器が無く、ミサイルや実弾しか持ち合わせていないのが痛かったろうな」
「・・・・・長くなりそうですね」
「あぁ、ひとつのミスが命取りだ」
「お兄ちゃん」
「どうした?」
「どっちが有利なの?」
「なんとも言えない、お互い決定打に欠けてるみたいだ」
(ソラお姉ちゃん・・・・・)
(マリナ大尉・・・・・)
「くっそ速すぎる!『USKA(ウィスカー)』のとは違ったスピード感で厄介だ。なんとか防いでるけど、これじゃあ反撃もままならない」
フルム。勝負をかけよう。
「勝負たって、どうする?」
『リヴァイアサン』の力はこういう相手で本領を発揮するんじゃない?
「確かに・・・・・でも大丈夫なの?ソラへの負担が大きいけど」
私の心配してくれるなら早いとこやっつけて
「・・・・・了解。それもそうだな。わかったよ形勢しろソラ!」
(くっ、やはり決定打にかけるか。手持ちの標準ライフルは破壊するにはいたらないがこちらの一撃が軽いからか剣が敵の装甲を貫けない)
マリナ!機体から離れろ!!
「どういうことだソルト?」
いいから距離をとれ!!
『リヴァイアサン』から距離を取った『ティアマト』。
「なんだ!?あれは」
『リヴァイアサン』が周囲を青い球体で包み込む。
「ちっ!優秀な『サブパイロット』だ」
「なんだ奴を包むこの青い球体は?」
試しにライフルを放つも瞬く間に弾は青い球体の中で消えた。
(ビーム効果無し・・・・・実弾の有用性の確認と下手に近づけない以上。打つ手無しだな)
すると『リヴァイアサン』はエンジンを吹かし距離を詰めてきた。
「なっ!さっきより速い!!」
咄嗟に『ティアマト』専用実体ビーム剣の両刀を構える『ティアマト』。
マリナ!あの球体は危険だ回避だ!!
「この距離では間に合わん!」
衝突する剣と矛。
(馬鹿な!いくらなんでもここまでパワー差はないはずだ)
すぐさま押し切られると判断したマリナは矛を払う回避運動に移る。容赦なく襲い来る『リヴァイアサン』の矛。
「馬鹿な!スピードで『ティアマト』が押されているだと!?」
捌ききれないと判断し実体ビーム剣の片方を背中にマウントし防御に専念する『ティアマト』。
「こいつ!『リヴァイアサン』のフィールドの中でまだこれだけの動きを」
それだけじゃない。随所に装備されたビームサーベルが盾の役割を果たしていて機体にダメージを与えられない
「だったら!」
背面に装備されたコンテナから大量のミサイルが放たれる。
「なに!?」
「いくら足自慢の機体でも、機動力の低下した状態では避けれないだろ!?」
「これは直撃・・・・・ソルト!?」
集中砲火を浴びる『ティアマト』。
「さてまだ機体が残っているようなら・・・・・なっ!なんで!?」
爆風の中には機体はおらず、フィールドから出た『ティアマト』がこちらを睨みつけていた。
「ありえない。回避どころか『リヴァイアサン』のフィールドから抜け出しただと!?」
ダメージを与えることは出来た。でもまさか抜け出すとはね
「関心してる場合じゃない。さっさと分析してよ」
わかった。
「右腕軽微、左脚部軽微、左腕中破、頭部半壊・・・・・ソルトお前」
ごめん。やられた
「馬鹿を言うな、助かった。ありがとう」
どうやらあのフィールドは半径5キロメートル範囲内を自分の有利な環境に調整出来る特殊空間のようだ。
「それで『ティアマト』の機動力が急に低下したのか」
恐らくな
「貴様大丈夫なのか?アレ使ったんだろ?」
問題ない。今のでわかったがアレなら敵フィールドを突破して敵機を破壊出来る。
「!?しかしアレは貴様の負担が・・・・・」
大丈夫だ。さっさとケリつけて、昨日の話の続きだ
「こんな時になにを」
あの後戻ってきたらさっさと寝やがって俺は納得してないからな
「・・・・・わかった。納得するまで付き合ってやる。・・・・・踊れソルト!」
フルム!相手が動いた。
ゆっくりと前進してくる『ティアマト』。
「・・・・・機動力が取り柄のその機体でそのスピードは致命的なんじゃ・・・・」
フォーー-----
突然周囲で聞こえる風の音
(なに?この音)
フルム!
実体ビーム剣片手に自らフィールドに入る『ティアマト』。
「自らやられにくるとは・・・・って嘘でしょ!?」
『ティアマト』を包むフィールドが切り刻まれていく。
「なんで!?そんな!?」
各部に設置したビームサーベルを過剰放出してフィールドを形成してる。
「あっちもそういうタイプなのか!?クソ」
突き伸ばした矛は『ティアマト』を覆うフィールドに粉々にされる。
「どっどうするのよ、これ?」
これまで完璧に攻撃を防いできた盾も瞬く間に粉々にされた。
「あっ・・・・あぁぁぁ」
フルム!!
膝をつく『ティアマト』。バラバラの『リヴァイアサン』からコックピットが地面に落ちる。
試験終了。勝者XE-γB07『ティアマト』。
「よくやったソルト。ありがとう」
カプセルを開け手を差し出すマリナ。
「いいのか?」
「私は年下は対象外だ」
「そうか」
差し出された手に捕まるソルト。
「私がここにいる理由」
コックピットを外を眺める2人。
「?どうした」
「思い出したんだ。私がここで戦う理由」
「そうか」
「気になるか?」
「別に」
「・・・・・そうか」
「お陰で迷いが消えたならそれでいい。頼むぜ『氷の貴婦人』」
「あぁ。必ず成し遂げる」
「ねえ、噓でしょなんで?なんでそんな・・・・・」
意識を失っていたフルムは暫くして医務室で目を覚ます。
五体満足の自分の隣に全身包帯で生命維持装置に繋がれた姉。
「なにが・・・・なにがあったんですか?」
状況を呑み込めないフルムは近くにいた看護師に聞こうとする、しかしあまりに鬼気迫った表情に皆明言を避けた。
「お前達の機体」
そんな中男が意を介さずフルムに近づく。
「ローグ?」
「ローグ中尉。今の彼女には酷です御止めください」
「『EUN(ユーン)』の機体の未知の現象でボロボロに刻まれていくお前達の機体が突如発生させていたフィールドをコックピットの一点に集中させた」
「だったらなんで私だけ!?」
「『サブパイロット』が『メインパイロット』を守るようにフィールドを集中させたからだそうだ」
「なにそれ」
「検証の結果だがあの時点で『EUN(ユーン)』の機体はお前達の機体の約3倍のエネルギーを使用していた。あそこで両パイロット均等にフィールドで防御していたら、2人ともダメになっていたそうだ」
「まただ。またソラは私の気持ちも考えないで勝手に居なくなろうとする」
「・・・・・フルム」
「アッ・・・アァァ・・・・ワアァァ~~~~お姉ちゃん!お姉ちゃん!!」
叫び嘆くフルムをローグは力強く抱きしめた。
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