第6話 消えない絆
「調整は以上だ。明日に備え2人とも今日は休め」
『アルジル』の『γ・ブレイク』格納庫。紅の太陽が沈む頃に乗機『コロッサス』の最終調整を終え『ローグ·トリスタン』中尉と『テオ·キャニオン』中尉は、食堂にいた。
「なんだよ?」
「なにがだ?」
「なにがじゃねーだろ」
「と言われてもな」
「なんか面白い話しろ」
「そういうのはお前の得意分野だろ?テオ」
「お前がだんまりじゃあ話が膨らまねーだろうが」
「勝手に話を膨らませるのがお前だろ?」
「・・・・・どんな結果でも気にすんじゃねーぞ」
「なんの話だ?」
「悪いのは『EMNG(エミング)』だ。それに勝つのは俺達だ」
「フン」
「なんで笑う」
「そういう根拠の無い自信。どこから出るんだか」
「ローグ。てめぇー」
「ここいいかしら?」
2人組の女性が隣の席に座る。
「元気にしてたかよ?フルム!ソラも」
「相変わらずアンタはうるさいわねテオ。」
「なんだど!じゃじゃ馬!!おめーもギャアギャアうるせーぞ!!」
「もう・・・・・あの2人ったら、元気ローグくん?」
「元気だよソラ。無事でなによりだ」
「『火星圏撤退戦』で別れて6年か・・・・・昨日のブリーフィングでお前ら見た時はビックリしたぜ」
「それはこっちのセリフだ!お前なんてもう死んでると思ったよ。昔から死に急ぐタイプの奴だったからなテオは」
「んだと!?死に急ぎはおめーだフルム!」
「んだと!やるか!?」
「上等だコラ!!」
周囲がざわつき始める。
「ちょっと2人とも」
「いい加減にしろ2人とも」
「うるせー」「うっさい」
溜息をつくローグ。隣から凄まじいオーラを感じる。
「貴方達・・・・・」
「おっ落ち着けソラ?なっ!?」
「そっそうだよソラ?ほら喧嘩する程仲が良いっていうだろ?」
「いい加減にしなさーい!!」
「ギャー」「ギャー」
「・・・・・ここでは皆さんの邪魔になるしどうローグくん。私達の部屋で昔話でも?」
「いいよ。そうしよう」
食堂を離れた4人は再び思い出話に花を咲かせた。
「・・・・・ローグ?まだ起きてたのか?」
「フルム。あぁ」
「お前強いな?」
「そうか?3人が弱いだけだろ?」
「にしてもテオがあんな弱いと思わなかったぜ、1杯目で顔真っ赤にしちゃってさ」
「あいつは下戸だからな」
「知ってて呑ませたのか?」
「あいつが勝手に吞んだんだ。」
「まあ、確かに」
「・・・・・・」
「ったく。人の気も知らないで幸せそうに寝ちゃってさ」
「さっきまでお前もそうだったんだが」
「!?それはだな・・・・」
「恥ずかしがるな、結構な量いってたから無理もない」
「・・・・・なあ、テオは・・・・・どうなったんだ?」
「俺達の船団は火星圏を脱出してすぐ『レーヴェン』の襲撃にあった。あいつは人員不足の船団護衛隊に志願して・・・・・」
「そうか、あいつらしいな」
「・・・・・・」
「知りたい?」
「・・・・・・」
「どっちが【そっち】だと思う?」
「・・・・・・」
「私が【そっち】の方が良かった?」
「!?馬鹿言うな!!」
「うし!テオからその顔引き出せたなら焦らしは成功だな」
「お前な」
「お姉ちゃんはさ、地球圏到着まであと僅かってところで『レーヴェン』に襲われた私達の船団で仲良くなった逃げ遅れた女の子と一緒にいるって言ってそのまま・・・・逝っちゃった」
「なんだよ?それ」
「ご両親を亡くして1人で泣いてたその女の子と仲良くなって、いつのまにか母替わりもたいになって・・・・・そういう子昔からほっとけない人だったでしょ?」
「そう・・・・・だったな」
「いくらほっとけないからって、唯一の肉親遺していくかね?普通。」
「フルム・・・・・」
「ホントお姉ちゃんそういうとこ馬鹿なんだよね、ホント・・・・・」
「無理するな」
「ローグ!」
くしゃくしゃな顔を隠すようにローグの身体に顔をうずめるフラム。
「あんたは、あんただけは・・・・逝かないで」
「それは、お互い様だ」
「うん・・・・・そうだね。」
「邪魔したな部屋に戻るよ」
「えっ、テオは?」
「そのまま寝かせといてくれ」
「わかった。おやすみローグ」
「あぁ、おやすみ」
思い出に浸った4人に待ち受ける過酷な現実。それぞれの決意を胸に明日を迎えた。
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