第三節

 クスクスと彼女は笑う。僕は苦笑いを浮かべながら夢の中の彼女に問いかける。「なんであんないたずらをしたんだい?」と。当然ながら自分の夢の中の彼女は都合のいいことしか答えない。その答えは彼女らしいし、やはり僕が望むものであった。

 かなりの明晰夢めいせきむだった。彼女の手を取ることも容易だったし、抱きしめることも容易だった。ただ、最後の一歩までは踏み出せなかったのだが、それでも抱きしめるその温もりだけでよかった。ただそれでよかった、良かったんだ。

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