第42話 反省会
その日の夕方、課長から『今から行く』と連絡があり、お酒やらお寿司やらを買い込んで部屋にやってきた課長。
「おめでとう、遠藤くん。カクヨムコンの中間審査、初通過ね!」
「有り難うございます! 課長も流石ですね。今度は賞も狙えるんじゃないですか? 順位もかなり上の方だったし」
「どうかなあ、こればっかりは私でも分からないからね。でも、いいのよ。祭りは十分楽しんだから」
玄関先でちょっと会話してから部屋の中へ。ソファーに座っていた詩織さんを見るなり、何かを察した様子の課長。僕に荷物を渡すと、スタスタと詩織さんに寄って行ってドカッと隣に座った。
「な、なんじゃ?」
「なんじゃ? じゃないでしょう。これは何かしら?」
詩織さんの左手を掴んで、ニヤニヤしながら指輪を指差す。真っ赤になる詩織さん。凄く長い年月生きている神様のハズなのに、こういう所はウブなんですね。
「こ、これはその……」
「もう! あんたも意外に奥手ね!」
ガバっと詩織さんに抱きつく課長。
「おめでとう。大事な部下なんだから、大切にしなさいよ」
「ああ。もちろんじゃ。こうなれたのもお主のお陰じゃな、七緒」
「まあね。感謝しなさい!」
『そんなことはない』と言わないところが課長らしい。でも、本当に課長のお陰です。僕からも有り難うございます! あ! でも、詩織さんに関しては色々と聞いていた話と違いましたよ!
「課長! この間飲みに行ったときに『詩織さんからは逃げられない』みたいなことおっしゃったじゃないですか!」
「遠藤くんのことだから、ああでも言わないと決心できなかったでしょう? 会社では一番年下で色々遠慮してるし、相手が神様ともなれば普通は決心できないでしょうからね」
流石僕の上司、良くお分かりで。そこから反省会と称した宴会が始まり、まずはカクヨムコン9の中間審査を通過したお互いを労って乾杯! 反省する部分を聞かれて、ちょっと仕事の延長の様に感じながら答えた。
「そうですね、前半は割りと順調でしたけど、後半は結局執筆が追いつかなかったし、最初に詩織さんに立ててもらったスケジュールから大幅に遅れてましたね。でも臨機応変に対応できたとは思います」
「年間スケジュールなんて、なかなかきっちり守れるものじゃないわよね。間に出張なんかもあったし、良く頑張った方じゃない?」
「そうじゃな。聖也は良くやったのじゃ」
ペースを大幅に崩したのは、詩織さんが家を空けたのがきっかけだったんですが……まあ、参加するきっかけになったのも詩織さんだから、結局詩織さんに振り回されっぱなしだったってことかな。
「他の人の文章を読んでて、自分の作品もあそこをああすれば良かったとか、後から色々思いましたね。一作目を書いてたから余裕はあったんですけど、それでもやっぱり未熟だなと……」
「フフフ、そうやって文章も上達していくのよ。仕事と一緒ね。仕事じゃないから強制はできないけど、先輩としてはこれからも続けて欲しいわね」
「もちろんです、七緒先輩!」
『その呼び方で呼ぶな!』と小突かれた。でも、カクヨムコン9についても、そして詩織さんとの関係についても課長にはめちゃめちゃ感謝しているんですよ。僕の上司が課長で本当に良かったと思ってます、マジで。
それから僕と詩織さんの今後の話になって、
「乗りかかった船だから、最後まで私が面倒見てあげるわ」
と、言ってくれた課長。もう、ホントに男前で一生付いていきます! って言いたくなる。いつもの三人だけど宴会は大いに盛り上がり、夜も更けていく。と、いつもなら泊まっていく課長が『そろそろ帰る』と言って立ち上がった。
「泊まっていかんのか?」
「婚約したばかりの二人の間に入るほど野暮じゃないわよ。シタいこともあるんじゃないの?」
「……」
また、そんなストレートな! でも、もう既にシテしまった後だったので、僕と詩織さんは気まずい顔をしながら黙っていた。その様子をみて課長も察した様子。
「詩織! あんた、ちょっとは自重しないさよ!」
「し、仕方ないじゃろう! 嬉しかったし、そういう雰囲気だったのじゃ!」
「まったく……自分の婚約者に別の神がくっついていてもいいわけ?」
「七緒は特別じゃ」
「大丈夫ですよ、僕がソファーで寝ますので。もう遅いですし泊まっていってください」
で、結局泊まっていってくれることになった課長。でも、やっぱり寝室に引っ張られていって、結局三人で寝ることになってしまった。これは変わらないんですね、神様の価値観って不思議だなあ。
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