第41話 告白
「ど、どうした? 改まって」
「改めまして、今回は本当に有り難うございました。詩織さんに色々アドバイスを貰ったので目標だったカクヨムコンの中間審査をパスできたんです」
「うむ、よく頑張ったな。私も誇らしいぞ」
「詩織さんが最初に部屋に来た時はビックリしましたが、でも詩織さんがいなければ中間審査どころか、きっと小説を書き上げることもできなかったでしょうし、もし書けていても『活動』なんて分からないので散々な結果だったと思います」
「だからそれはお主が……」
「それから、詩織さんが神無月で出雲に行っていた時、色々考えちゃって……結果的に課長のお陰で出雲に行けましたけど」
「……」
話がカクヨムコンから少し逸れたので、どことなく神妙な面持ちになった詩織さん。神様に『神妙』もおかしいかな。いつになく真剣な詩織さんの顔を見て吹き出しそうになるのを堪えつつ、いよいよ本題だ。でも、いざ言おうとするとなかなか言葉が出てこなくて、さっき取ってきた物をポケットから取り出し、蓋を明けて彼女の眼の前に差し出した。
「えっと……」
「な、なんじゃ、これは?」
「け……け……」
「け?」
「結婚してください!」
「!!」
目を固く閉じて、やっとの思いで言葉にする。詩織さんの反応が何もなくてこわごわ目を開けると、詩織さんは目に涙をイッパイ溜めていた。
「えっ!? ちょ、ちょっと! なんで泣くんですか!」
「だって……いい加減追い出されるのではないかと思っておったから」
「そ、そんなことするわけないじゃないですか! さっきイッパイ感謝したところですよね!?」
「追い出す前振りかと……この指輪は記念品か何かかと……」
どんな前振りなんですか! おかしいなあ、課長の言葉通りなら詩織さんは僕が告白するのを待ってる様な雰囲気だったのに……って、課長に担がれた!? あれだけ小説を読んでいるんだから、この状況はプロポーズとわかりそうなものだけど。
テーブルの上にあったティッシュで溢れそうな彼女の涙を拭いて、左手を差し出してもらう。薬指に指輪をはめるとぴったりだった。詩織さんが寝ている間に、何回も自分の指と太さを比較しておいたからね! ようやく笑顔が戻った詩織さんは、しばらく指輪を見つめていて、やがて勢い良く抱きついてきてソファーに押し倒される。
「わっ……」
「聖也はズルいのう、喜ばせおって! そんな素振り、まったく見せてなかったではないか」
あれ? そうでしたっけ? 確かに詩織さんに対して直接『好き』とは言ったことないですけど、いつも一緒にいて楽しかったし、そういう表情をしていたつもりだったんですけど。
詩織さんの話では、一年以上この部屋で生活をしていて僕が身の回りのことを全部やってくれるので、そろそろ自立した方がいいのでは? と考えていたらしい。カクヨムコン9の中間審査は良い機会だったし、『次の祭りが楽しみだ』とはいったものの、終わってしまってちょっと寂しかったと……因みに僕の感情表現については、
「お主は大体ニコニコしていて優しいし、好きなら好きと言わなければ分かるわけなかろう?」
と、言うことでした。好きでもない相手とキスしたり寝たりしないと思うんですが……どうも、すみません。
「それにしても、私で良いのか?」
「それは僕のセリフです。詩織様は神様ですし、人間の僕と結婚するとなると色々と面倒なことがあるみたいだし。不釣り合いなことは自覚してます、でも、す……す……」
「す?」
「好きなんです!」
「!!」
今度はすぐに抱きついてきて、またソファーに押し倒されてしまった。
「私も聖也のことが大好きじゃ。こんな神じゃが、よろしく頼むぞ」
「はい」
抱き合っての長い口づけ。まだ昼間だったけどお互いに気持ち昂ぶっちゃって、そのままベッドに移動。今までで一番詩織さんとのつながりを強く感じた時間だった。
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