7度目はアンラッキーかラッキーか
凰 百花
ラッキーとアンラッキーは紙一重
アンのスキルは【ラッキー】で、一日に7度まで使える。この能力は
「【ラッキー】」
お嬢様の代わりにアンが拐われてしまった。仕事としてはお嬢様を守るのが第一だし、自分以外の護衛も居るのでアリっていえば有りかもしれないが。抱えていたはずのお嬢様が護衛の人間に替わってしまったのに驚いたところをねじ伏せる。誘拐犯たちは取り押さえられた。
「相変わらず、訳解んないスキルだよな。この前は取り囲まれたのに、反対にこちらが取り囲む形になっちゃってたし」
相棒のギルバートは誘拐犯たちを縛り上げながら笑っている。
「でもさ、今回の仕事おかしくない?襲撃はこれで6度目だよ。私達の仕事って、家から結婚式場までの平凡な護衛だよね。お嬢様、無口で何も言わないしさ」
助けられたお嬢様といえばお礼を言うでなし、ぼうっとしている。ほとんどお人形さんみたいで、ここまでの襲撃では易易と捕まってくれている。
「僕らは与えられたお仕事をしてればいいの。そこら辺はあんまり突っ込まない」
ギルバードに窘められたアンは、そういうものかと黙った。大手企業のご令嬢は、今日、ある政治家の息子と結婚式を挙げる。今回の結婚式を邪魔する計画があるという情報が入ったので、護衛を願いたいというのが依頼内容だ。大企業に政治家、色々とあるのだとか。そういう事なら、襲ってくるほうが真っ当ということもありえるのかな、そう考えて先を考えることを止めた。なんでも屋の自分たちには、関係ない。正義だけではご飯は食べられないのだ。犯罪への加担でなければ、目の前のお仕事を熟すだけだ。
そうこうするうちに、結婚式場に到着した。その後は、何事もなく式典が進んでいき、お嬢様はウェデングドレス姿となり新郎と神父の待つ場所へとヴァージンロードへ。バァン、と会場のドアが開け放たれ
「マルガリータ!」
若い男が一人、お嬢様へと駆け寄っていく。何人もの護衛が彼を捕まえようとするがそれらをするりと掻い潜りお嬢様の手を取ったが、お嬢様はなんの反応もしない。
「可哀想に、薬で意思を奪われているんだね。大丈夫だよ、僕と一緒に行こう」
周りがあっけにとられる中、会場の隅に待機していたギルバードがアンの名を囁いた。
「えっと、これで今日、7回目になるんだけど。どうなるか判らないよ」
ギルバードがうなずいたので、仕方無しにアンは「【ラッキー】」と発動させた。
スッパーンと大きな音が響いた。お嬢様が侵入者の頬を張り倒したのだ。
「何してくれるのよ、式場に来る前に攫えって言ったわよね。せっかく私が作り上げた組織を貸してあげたのに、そんな簡単なこともできないなんて。せっかく、親と婚家から身代金で大金をせしめるつもりだったのに。ちょっと能力が高いから目をかけてあげたのに。ど・こ・が・大丈夫よ。台無しよ!式場で、こんなことしたって一文の得にもならないでしょうが、指揮する者がしゃしゃり出てきてなにしてんの、この能無し」
薬が突如切れたお嬢様は、鬱憤を晴らすかのように一気にまくし立てた。散々まくし立てて一息ついて冷静になり、自分の喋ったことに居直ってしまったお嬢様とドン引きの周りの目。頬を叩かれて腰砕けになって座り込んでしまった彼氏?その中で、なぜか一人爆笑している新郎(そして静かに爆笑をしてるギルバード)。
だから、使いたくなかった、7回目のラッキーは騒動を引き起こすことが多いのだとアンは真っ青になっていた。
結論から言おう。お嬢様は無事に政治家の息子に嫁いだ。あのやり取りを見て、息子に惚れ込まれたらしい。楚々とするだけの面白みのないお嬢様には興味がなかったそうな。こんな活きの良いお嬢様ならば是非とも娶りたいということになったという。お嬢様はそれなりに?猛々しいので、親は心配して婚約者と会うときや結婚式の時は、大人しくしているようにとちょっと薬を盛っていたらしい。それもどうかと思うが。お嬢様はそれで色々と密約を交わしたとか、交わしてないとか。
色々とあったものの、アン達にとっては今回は口止め料なんかも含めて、よいお仕事になった。今回の7回目の【ラッキー】が、アンラッキーになって支払い無しにならなくて良かった、と喜ぶアンだった。
7度目はアンラッキーかラッキーか 凰 百花 @ootori-momo
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