第10話 戦争の理由

 このサザン王国は静かな田舎街である。しかし、妖魔に狙われていた。街の人々に聞くと東の森から来るらしい。


「どうだ、ここで妖魔を倒して賞金を得ないか?」

「えー面倒臭い」


 プラハさんは反対らしい。


「月草はどうだ?」

「私は皆さんの決めた事に従います」


 ウエルは贅沢が大好きなので当然賞金が欲しいはず。念の為に聞いておくか。


「私はあの日なのでパス」


 は?どの日なのだ?もういい、私一人で行く。私は皆を残して東の森に向かう。森の中は綺麗に手入れがされており。人が住んでいる様子である。更に森の中を進むと村が姿を現す。


 ここは一発、カッコよく決めよう。


「我名はサナ、旅の賞金稼ぎだ。この森に住む妖魔を賞金に変える為に来た、心当たりのある者は潔く前に出てくるがいい」


 きまった、我ながら百点だ。


 すると、村の奥から妖魔が歩いて来る。そのセクシーな姿は妖艶であった。


「サナと申したな、私はこの森のダイアだ」


 ダイアは剣を抜き勝負を仕掛けてきた。剣術での決闘か、私も黒いフェアリーソードを抜くと構える。そして、戦闘になると、森の中に鈍い金属音が鳴り響く。私は今、ダイアと名のる妖魔と戦っている。この妖魔、かなり素早く、私の剣術では追いつかない。まいったな、劣勢だ。ここはどうする?私は師匠の言葉を思い出していた。


『泥臭くても、生きる為に勝て』


 師匠は名の知れた賞金稼ぎで今は引退して田舎町でスローライフを送っている。仕方がない、フェアリーソードに頼るか。私は空中で剣を振り『霧がくれ』を発動する。黒いフェアリーソードから霧が噴き出し辺りを包む。この霧は特殊な力を持ち敵にだけ作用するのであった。つまりはこちらからは丸見えなのだ。先ずは背後に回り威嚇をする。これを繰り返して敵の精神力を剃るのだ。何故、一度に切り込まないかと言うと敵であるダイアの方がスピードは速いからである。スキを突いたつもりでも、カウンターをくらう可能性があるのだ。


 そう、私はこの妖魔の女剣士を過少評価はしていない。全力でぶつかっているのだ。私は更に影分身を使う。気配の乗った影を分身して放つ技だ。これにより、ダイアには何体もの私の気配のする、影が現れるのだ。


『スクリュードライバー』



 ダイアは片っ端から私の影を強烈な突きで攻撃を始める。ようやく、切り札を出してきたか。私は距離を取りしばらく様子を見る。


『スクリュードライバー……』


 五発目で剣から気が消える。力尽きたのだ。私は霧を解くとゆっくりとダイアに近づく。


「勝負有りだ、私は剣の力に頼っても勝利を選んだ。しかし、これが勝負の世界だ。どうする、サザン王国から手を引くか?」

「ふ、元々は平和に暮らしていた我が民の森の木を切り始めたのがきっかけだ」


「……」


 紛争の理由などそんなモノだ。同情などしない。


「その剣の腕に免じて、私はこの森に怖くて入れなかった事にする。好きなだけサザン王国と戦争するがいい」


 そう言うと、私はサザン王国に戻るのであった。


 あータダ働きになってしまった。腹減ったなあ。

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