第8話 真の聖剣

 街道の分かれ道のことである。


「ねえ、このままポットノに向かう前にフェアリーの国に行かない?」


 ウエルが突然、フェアリーの国に行きたいと言い出すのであった。


「あの国に行くって何用だ?」

「ちょっちね」


 意味深だがポットノに急いで向かう理由はない。


「よし、フェアリーの国に行こう」


 街道の分かれ道は北に向けることにした。確かフェアリーの国に入るにはモンスターの多い峠道を通るのだが。


 大丈夫かな。


 山が近づき峠道に差し掛かると。案の定、リザードの群れが現れた。リザードは石斧に皮の盾を使い襲いかかってくる。


「皆、行くぞ」


 私はフェアリーソードを抜き。ウエルは術式を走らせて魔術の準備をする。プラハは月草に憑依されて大剣を召喚する。


「私とプラハが前に出る、ウエルは後方支援を頼む」

「了解と」


 私は空気を切りウインドカッターで先制攻撃をする。


「ぎゃー」


 よし、効いている。大剣使いのプラハは敵陣に飛び込み、片っ端から切り裂く。ウエルは炎の魔術で火矢を放つ。


 リザード達の体制は崩れ散り散りになって敗走する。快勝の戦いに私達はハイタッチで喜ぶ。


 私達は強い。決してバッハ帝国などには負けない。


 フェアリーの国に着くと厳重な検疫を受ける。相変わらずの陰険な国だ。当たり前か、私が初めて訪れた時は隣国の傭兵であった。陥落しかけた、この国は私に裏切りを提案してきて、私はその誘いに乗ったのである。


 気ままな傭兵である。この国の聖剣が報酬であった。故に、裏切りに迷いは無かった。


 そして、私はフェアリーソードを使い隣国の進行を止めたのだ。戦後、私がフェアリーソードを持ち出そうとすると。ウエルを連れて行く事が条件であった。最初はエロフェアリーに難儀したが、その後、貧乳の私に飽きてしまい。今にいたるのであった。


「それで、ウエル、この国に何の用だ?」

「えへへへへ、フェアリーソードの真の力を解放するの」


 やはり、このフェアリーソードでは力不足と感じたのか。大体の予想はついていた、この剣が真の力を秘めていることだ。


 そして、女王間に通されると。ウエルが現状を報告する。


「バッハ帝国の脅威に対する為です。フェアリーソードの力の解放を許しましょう」


 私はフェアリーソードを抜くと光出す。すると、フェアリーソードは錆びた普通の剣になってしまう。


「ここからが試練です。この国の天界に剣の力を封印しました。サナ、あなたは天界のダンジョンをクリアして真のフェアリーソードを手にするのです」


 天界への階段が現れて試練が始まる。


「ふ、試練か……」


 私は独りで階段を上るのであった。階段を上り進めると、やがて、浮遊島にたどり着く。浮遊島の上には神殿があり試練そのものであった。私が神殿に近づくと石像がある。その石像は剣と鎧を装備していた。そして、目がビンと光ると動き出す。ここは戦うのがセオリーかな。案の定、襲いかかってくる。


 私は錆びた剣を抜くと戦闘になる。三メートル程の石像の動きは鈍く、これなら対等に戦えそうだ。


 しかし、あの剣は危険だ、ヒットすれば一撃で終わりの可能性がある。


 私は剣の動きに気を取られて、石像の蹴りが当たる。しまった!!!叫んでも後の祭りである。そして、後ろに吹っ飛ぶと。更に剣の斬撃が襲ってくる。素早くかわすが、左腕が折れたか。


 くっ、かなり劣勢だ。


 何度か石像を剣で切り付けているが手ごたえが無い。私は呪われた力を使うことにした。


 ふ、二度と使うまいと思っていたがここで生き残りたくなったのだ。それは、魔導少女としての力だ。体内の気を魔導の力に変換して剣にまとわすのであった。剣は黒く光、いかにも呪われた力だ。私が石像を切りつけると。簡単に石像が壊れ始める。確かに勝てた。しかし、呪われた力での勝利だ。


『そなたは受け入れた。呪いの力を使っても、生を望んだ。そなたは自分の存在を軽視し過ぎる。それでも生を望んだから我が壊れていくのだ』


 石像の言葉を受けて剣の様子が変わっていく。剣が熱い。この錆びた剣が聖剣である証拠だ。


『真のフェアリーソードを受け取るがいい』


 そう言うと動く石像は崩れ落ちる。私が剣を上に掲げると黒い剣が聖なる光を帯びていた。


 私は折れた左腕をかばい、浮遊島から降りるのであった。地上まで降りてくると、ウエルが寄ってくる。


「少し、負傷した回復魔法をかけてくれないか」

「もう、心配かけて」


 ウエルは術式を走らせて回復魔法を折れた腕にかける。


「しばらくは痛いかもしれないけれど傷は完治したわ」

「あぁ、ありがと」

「それで、真のフェアリーソードは手に入ったの?」


 プラハが訪ねて来ると、私は首を縦に振り。肯定する。


「大丈夫だ、これこの通り」


 私がフェアリーソードを抜くと黒く光っている。そう、魔導の力と聖剣が一体化したのだ。


「確かに魔導の力と新たな聖剣の力が合わさった感じです」


 プラハが関心していると。月草が牧を用意する。おいおい、と思うが試しに切り付けてみる。


『スバ!』


 牧は割れるのではなく、完全に豆腐の様に切れるのであった。切れ味も上がっているし、魔力も格段に違う。これなら、バッハ帝国の鉄のバハムートにも対抗できるかもしれない。


「過信は禁物です。バハムートは神なる存在、フェアリーソード一本ではかなわないでしょう」


 女王様がたしなめる。確かにバッハ帝国の軍事力は強大だ。とにかく、ポットノに行ってバハムートの里を探そう。





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