第7話 焼け落ちる街

 ドワーフの里を後にすると、交易の街ザワにたどり着くのであった。

 

 このザワは鉄の交易で知られていた。鉄は銅に変わって、道具の使用される材料であった。玉鋼は街の鍛冶屋の材料になるのだ。この街の近くに大きな製鉄所があり、交易の品として、この街を支えている。ここは酒場でバハムートの情報を得ることにした。


「バハムート?知らねえな、ここは最新の鉄を扱う街だ。伝説なんて要らね」


 ダメか……。


 この街の歴史はまだ浅く、情報屋も存在しない。


「どうでしょう、この旅に必要なのは馬車なのでは?」


 プラハが提案してくる。聖女様には歩く旅はキツイか。交易の街だ、馬車も安く手に入るだろう。誤算も無く簡単に馬車は手に入った。


 そして、ザワの街を出発して数十分後のことである。街が燃えているのだ。私達は急いでザワの街に戻る。そこに居たのは鉄の翼のバハムートであった。バッハ帝国からこの貿易都市のザワに宣戦布告が出ていた。


「おっほほ、旅の方どうです、このたくましいボディーの人造バハムートの威力は」


 バッハ帝国の女騎士団長のマーゼルであった。


「何故こんな酷いことをする?」

「鋼の人造バハムートが完成したのです、いまとなってはこの街の鉄は邪魔なだけです」


 あんな化け物に勝てる訳がない。私は泣き言を呟く。作戦会議を開く時間はない。三人で特攻するか?


「あの鉄の化け物、本物のバハムートに近い戦闘力です。撤退を進言します」


 プラハも心の底から恐怖を味わっていた。方針は決まった、逃げるぞ。私達は馬車を走らせて街から逃げ出すのであった。バッハ帝国の暴挙は何時まで続くのだ。言い知れぬ無力感に襲われた。


 旅の宿の事である。ザワの街を鋼バハムートが街を焼き尽くし、私達は何もできず敗走した。それは破壊神そのものであった。


「まー皆さん暗いですね」


 幽霊の月草が皆を元気づけようとしている。


「ここは私が舞をお見せします」


 可憐な扇を取り出して。ゆっくりと舞う。これが遊郭のたしなみなのかと関心する。


「本当ならここで、三味線なる楽器があると盛り上がるのですが」

「すまない、私がふがいないばかりに」

「あれは破壊神です。深く考えない方が良いかと」

「……」


 私が黙り込むと月草は貝殻を取り出す。それは、紅なるものであった。月草は私の唇に紅を塗る。手鏡を渡されて自分の顔を見る。これが化粧なのか。


 それは旅の賞金稼ぎには関係ないモノであった。少し女子の気分に浸っていると。私は過去の事を思い出す。バッハ帝国の研究所で人工的に生まれた魔導少女であることだ。帝国は私に特別な力を持たせていた。しかし、私は使い捨ての兵器である。そして、ついに人工的にバハムートまで作り上げた。


「私は兵器にすぎない。化粧など……」

「それは過去の事です。今は仲間がいる、普通の人間です」

「月草……ありがとう」


 私が素直に照れていると。


「鋼のバハムートなど怖くはありません。こちらには本物のバハムートがいるのです。早く治療して倒してしましましょう」


 プラハが意気込んで言う。確かにそうだ。早くバハムートの里を見つけようと誓うのであった。

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