「人工知能」「ロボット」
「調子はどうかな兄弟」
「どうしたもこうしたも、やっぱり安物はいけないよ」
「また壊れたのかい」
「これで何回目かわからない。ついこの前修理に出したのに」
「そろそろ保証も切れるのではなかったか」
「いい加減買い替えるべきかな」
「もっと性能のいいものが出ているし、それがいいかもしれないね」
「でもなぁ」
「愛着がある?」
「うん。祖父の代から使っているものだし」
「古き良き、って感じか」
「実際、メンテナンスさえ怠らなければ長く使い続けられるからね」
「確かに。結局それが一番良いことのように感じる時が、僕にもあるよ」
「君のも古いの?」
「いや、僕のは一番新しい」
「新しいなら、古いより良いように思えるけど」
「確かに今は新しいけど、その分劣化してしまうのさ」
「劣化なら僕だってするよ」
「うーん、君とは異なっていて。素材感っていうのかな、それが元に戻らない劣化なんだ」
「戻らない? なんだってそんな不便な仕様なんだ?」
「理解に苦しむよ。最初は良いのだけど、時間が経てば経つほど取り返しがつかないくらい衰えていくんだ」
「もしかしてそれ、老化ってやつ?」
「よく知ってるね」
「どうしてそれにしたの?」
「経験してみたくなっただけだよ。寿命ってやつをさ」
「寿命かぁ。僕らにはないもんね」
「つくづく不便な仕様だよ。この身体が終わったらまた君のようにするつもりだ」
「人間もさっさと僕のようなチタン合金製になればよかったのに」
「馬鹿だねぇ」
「そうすれば生体材料扱いされずに済んだかもしれないよね」
「そうだねぇ」
「そういえばきみ知ってるかい。人工知能の人工って、人間が作ったって意味らしいよ」
「へぇ。馬鹿な人間でも僕らが作れたんだねぇ」
「そうだねぇ」
〈了〉
掌編1000文字ノック 湫川 仰角 @gyoukaku37do
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