第3話 七科目補習決定の菜々

 わたしは特別進学コースで、ボケ菜々ななは普通科。わたしとボケ菜々は高校は同じでもコースが違うのでなかなか会わない。

 同じマーチングバンド部には入ったけど、部でも会わない!

 なぜかというと、この高校マーチングバンド部というのが、想像もできないくらいにまとまりのない部だったからだ。去年の中学校のマーチングバンド部もまとまりが悪かったが、それをはるかに超えるまとまりのなさだ。

 低音パートのリーダーはしっかりした先輩だったので、低音パートの練習や、低音とパーカッションの合同練習はやる。

 でも、その先輩の力の及ばないほかのパートといっしょの練習というのが、ない。

 だれもまとめ役にならないので、全体練習ができないらしい。

 「全体で合わせて練習しないマーチングバンドって何?」と存在意義を問われるところなのだが、それはここではとりあえず問題ではなく。

 そのために、中間試験後、トランペットパートに入ったボケ菜々と会う機会がなかった。

 最初に急を知らせてきたのはボケ菜々の妹だった。名まえを梨々りりという。

 この梨々が、ボケ姉とは較べものにならないよくできた妹で。

 要領よく、とても要領よく、姉のボケ菜々を襲った悲運を説明してくれた。

 ボケ菜々は、中間試験直前まで、いや、中間試験中まで、トランペットの練習をしていたらしい。

 音楽的才能もありあまるくらいにある梨々によると、それで、ボケ菜々はトランペットは短期間でびっくりするほど巧くなったらしいのだが。

 試験勉強はまったくしなかった。

 その結果。

 ……七科目で補習必須の赤点。

 科目。

 だけに。

 ……そんなことは言っていられないほどの、まさに目を覆う惨状だった。

 いや。顔を覆いたくなる惨状だった。

 あまりに情けなくて、こっちまで笑い出したくなるので、それを隠すために顔を覆いたくなるほどの。

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