第2話 最高の親友菜々

 訂正。

 それは、たしかに心にもないことではなかっただろう。

 この菜々なな、別名ボケ菜々とは、たしかに中学校のころにはいろいろあったけど、中学校三年のころには最高の親友になっていた。

 菜々にはいろんな友だちがいるから、菜々にとってわたしが最高だったかどうかはわからない。でも、わたしにとっては、ほかのだれにも言えないことを言える相手がこの菜々またはボケ菜々だった。

 いまもそう。

 まあ、「ボケ」だから気やすく言える、というのは、あるけどね。

 なかなかツッコんでこないから。

 だから、「おんなじバンドでいっしょに吹きたい」という気もちは、たしかにあった。

 高校に進学して、わたしがマーチングバンド部に入ると決めたとき、ボケ菜々が「もういい」と言ったのを残念に思ったのもたしかだ。

 しかし。

 やっぱり言ってはならなかったのだ。

 なぜなら。

 それが中間試験前だったから。

 高校進学後初めての中間試験前だったから。

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