第38話 始まりの鐘は鳴る
???視点
これは賭けだった。
「真上さん、どうします? この写真が出たら終わりですよ」
「っ」
「かしこいアナタならわかりますよね?」
真上さんが私の元に来てくれるならそれでよかった。
だから私はこんなズル賢い行動をしている。
「さぁ、どうしますか?」
私は目の前にいる真上さんにあの写真を突き出す。
真上さんの表情は変わっていなかったけど、きっと内心焦っているのだろう……額から汗が噴き出ている。よかった、どうやら私の願いは果たせそうだ。
「……何を君は望んでいるんだ」
「そんなの決まってます」
私が望むものはたった一つだ。
「真上さん、アナタは私とーー」
ーー第二部 始まり
◇
弘人視点
「これからもよろしくね、お兄ちゃん」
「こちらこそよろしくな、いすず」
いすずと和解(?)をし、俺たちは本当の兄妹になれた。
これからも兄妹として仲良くしていこう! 普通にな!
俺はそう思っていた。けれど、どうやらいすずは違うようだ。
「お兄ちゃんどうしよう! 明日から顔合わせなんだけど!!」
「……」
「お兄ちゃん聞いてる? なんで無視するの? ねえってば」
寝ている俺の上に跨りながら何やらギャーギャー喚いてる妹、そしていつもの朝。夏休みの始まり。
あの日、ようやく兄妹になれたと思っていたけど、俺たちの関係は変わらなかった。というか、前よりも過激度増した。
今日は指定のブレザーの制服をいすずは着ていて、跨っている影響もあってスカートの中が見えそうになっている。白い太ももも剥き出し状態だし……いすずは何を考えてるんだ!?
俺は紳士だからあえて目を逸らした。妹の下着を見て照れるわけにはいかないからだ。
「(狼狽えるな俺! ここは平常心だ!)」
が、いすずは何を思ったのかキャハハッと笑い出した。
「なにお兄ちゃん。まさかスカートの中見えそうで照れちゃった?」
「いや別に」
俺がそう言うと、いすずの声が少し変わった。予想するに恐らく照れていないと分かって拗ねているのだろう。
「……ふーんそっか、そっか。お兄ちゃんは妹の下着が見えそうで照れないか」
「あっあぁ、そうだ「なら、これはどう?」えっ?」
と言いかけた瞬間。
いすずはスカートの両端を持つと、ゆっくりスカートを上に上げ始めたのだ。
「はっ! な、なななにやって」
慌てて目をつむる俺。視線が合う。対するいすずはそれはもう楽しそうで、
「じゃーん、ごらんなさい!」
「……っ!」
「あっお兄ちゃん目を開けて大丈夫だよ」
「いや、さすがに妹の下着を見るわけ」
「もぅ、目を開けていいんだってば。さすがの私だって、下着を兄に見せつける痴女じゃないって」
「いや、痴女だろ?」
「ひっどい! とにかく目を開けろおおお!!」
いすずの「目を開けろ」コールがうるさく、仕方なく目を開ける。うっすらとだけどな。
「ん?」
しかし目の前にあったのは下着ではない。真っ黒いスパッツだった。
「ドヤッ! お兄ちゃんはパンツだと思って慌てていたけど、しっかりスパッツを履いてました!」
「……」
「あれれ? まさかパンツじゃなくてがっかりした? 残念でした。変態のお兄ちゃん」
キャハハと笑う妹に、俺は腸が煮えくり返っていた。
「(うん、これはしっかり仕返しをしないとな)」
俺は心の中で作戦を瞬時に立てる。
「(よし! これがいいだろう)」
俺は寝ている上体を勢いよく起こすと、いすずは「きゃ」っと言いながらベッドに倒れ込んだ。
急いで体を起こすと、俺はいすずの上に跨った。形勢逆転だ。
「なっなっ!」
いすずの顔はそれはもう真っ赤っかで、トマトのような赤さをしていた。(本人には言えないけど)
「お、おにいひゃん。一体なにを」
「それは決まってるだろ、いすず」
俺は片手でいすずの両腕を一纏めにすると、もう片方の手で髪をかきあげた。するといすずの目にはハートマークが浮かぶ。
「……いすず、おしおきだ」
「ひゃい♡」
「お前堕ちるの早くないか?!」
我が妹ながら、将来が心配である。
「はっ! お、堕ちてないし! お兄ちゃんからのあんなことやこんなことに屈するかぁぁ」
「なんか俺がエロ漫画みたいなことをしようとしてるみたいな言い方だけど違うからな」
「えっ違うの?」
「いすずの中の俺の評価ってどうなってるんだよ……コホン、まぁとりあえず」
俺は気を取り直す。そして、髪をかきあげた手を自分のパジャマの裾に手をかけると、ゆっくり捲し上げる。まぁそうすることで、俺の腹がチラ見するわけで。
俺はあえて同じ状況をつくり、いすずに恥ずかしい行為だということを分かってもらおうとした。
「いいかいすず。さすがに俺のパンツは見せられないが、お前がやってるのはこういうことなんだぞ?」
「……」
「聞いてるのか、いすず?」
なぜか下にいるいすずの反応がない。
気になって下を向くといすずはパクパクと口を動かしていた。
「お、おにいちゃん」
「うん?」
「腹ちらとか、えろっつ……(パタリ)」
「お、おい! いすず!?」
なぜかそのままいすずは気を失ってしまった。鼻血を流したまま。
「なんで??」
まったく俺は、訳が分からなかった。
「(普通の兄妹って兄の腹チラで鼻血出すか??)」
普通の兄妹とは、なんだか違うような気がする。そう思った俺だった。
◇
それから数十分で目を覚ましたいすず。なぜか目を覚ましたいすずに「お兄ちゃんはエロいんだから、腹ちらしないで!!」となぞのお叱りを受けた?。なんで??
まぁ、それは置いておいてだ。
とりあえず俺たち兄妹は、腹が減ってはなんとやら。朝ご飯を食べることにした。作るのは、もちろん俺だ!!
「さぁ、めしあがれ。いすず」
「ちぇっ私が作りたかったのになぁ」
「(よ、よかった、ジャンケンに勝って!!)」
「お兄ちゃん、なにガッツポーズしてるの?」
「な、なんでもない!」
今日のメニューは洋風気分だったので、サンドイッチと野菜スープ、それにサラダを作ってみた。
いすずは自分が料理を作れなかったことに不満げだったけど、サンドイッチを一口かじると、すぐ機嫌が良くなった。ほっ、よかった。
パクパクと朝ご飯を食べるいすずを観察しながら、俺はいいタイミングでいすずに話しかけた。
「なあ、いすず」
「ん~~?」
「朝なんか俺に跨りながら言ってたけど、何を言おうとしたんだ?」
するといすずは思い出したのか、ハッとした顔をした。
「顔合わせだよ! お兄ちゃん! そう顔合わせ!!」
「うん」
「明日は私が主演のドラマの顔合わせだよ!!」
いすずの顔はどちらかと言うと興奮していた。
そう、いすずの言う通り明日はドラマの顔合わせがあったのだ。
*
お久しぶりです。
近況ノートに報告させていただいた通り、38話から書き直しました。(詳しくは近況ノートに書いてあります)よろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます