第35話 いすずを守るため

 いすずに話を聞き、ストーカーされていた事実を知った。

 なんとしてでも、ストーカーをしている犯人を見つけ出さないといけない。


 とりあえず犯人を探るために、いすずがストーカー野郎から受け取った写真を見てみることにした。


「うわっ」


 写真は何百枚とあって、並べるとその数は圧巻だった。どれも隠し撮りをしている写真で、いすずと目線が合っていない。中には着替えをしているところもあったりした。


「いすず悪いな、その……見ちゃって」

「犯人を見つけるためだし、仕方ないよ」


 とりあえず手分けして写真を見ることにした。いすずには申し訳なかったけど、何か手がかりがあるかもしれないからだ。


「とりあえず手がかりを探すか」

「だね」


 2人で写真を見ること30分。


「なぁ、いすず。この写真の場所って、一般人が入れない場所で撮った写真じゃないか?」

「えっ?」


 俺はいすずの前に、室内で撮ったであろう写真を並べた。


「ここってたしか、身分証がないと入れない丸々テレビ局の控え室だよな?」

「そうだね。丸々テレビ局の入り口は厳しいからね」

「なら、この写真を撮れたってことは一般人じゃなくて、テレビ局に入れるような人間ってことじゃないか?」


 俺がそう言うと、いすずは驚いた顔をした。


「たしかに、ここには簡単に入れないからね!」

「あぁ」

「ありがとうお兄ちゃん! でも、よく気がついたね、ここが丸々テレビ局で入り口が厳しいって」

「あ、まっ前にテレビで見たんだよ! それとネットの記事」

「なるほどね!」


 いすずは、納得したようだった。


「ということはお兄ちゃんの言った通り、ストーカーしているのは丸々テレビ局に出入りできる関係者ってことだよね」

「そうなるな、心当たりあるか?」

「考えてみたんだけど、全然ないな。だって、毎日何百人にもあってるから」

「それもそうだな」


 たしかにいすずの言う通りで、毎日何百人とあっているのなら怪しい人物を割り出すのは難しいだろう。


「困ったな、これじゃあ犯人を割り出せないな」

「あっ! なら、郵便ポストに入れる瞬間捕まえるのはどうかな?」


 いすずの提案についてよく考えてみる。が、その提案には穴があった。


「まぁ、その方法もありだけど……いつ犯人が来るか分からないしな」


 犯人は不定期で入れているらしく、時間がバラバラっぽかった。張り込むのはいいが、学校に行っている間に来ている可能性もある。

 もし、学校に行っている間に来ていたら捕まえられないだろう。


「とりあえず親父たちに話をして、監視カメラをつけるのはどうかな?」


 そうすれば24時間カメラが監視してくれるからだ。さすがに監視カメラをつけるなら親に言わないといけないがな。


「えっ、で、でもそれじゃあ、迷惑かかっちゃうよ」


 いすずは両親にバレるのが嫌なのか眉毛を下げ、困った顔をしていた。


「いすず、頼ることは悪いことじゃないんだ」

「で、でも」

「むしろお前に何かあった時の方が嫌だと思うんだ。いすず、もし俺がストーカーの被害に遭っているのを、お前に隠していたらどう思う?」

「頼って欲しいって思うかも」

「だよな、ならこのことはしっかり親父たちに話をして警察に行くべきだと思うんだ。俺はいすずに危険な目に遭ってほしくない」

「お兄ちゃん」


 いすずはグッと唇を噛むと、目元を拭いた。


「そうだね、しっかりお母さんたちにも話すよ。ありがとうお兄ちゃん」

「俺も解決できるように、しっかりサポートするから」

「うん」


 ということで、親父たちにこの件のことを知らせた。


「なんだって、いすずちゃんをストーカーしている野郎がいるのか!!」

「いすず、気づかなくてごめんなさい」


 父は烈火の如く怒り、鈴さんはいすずに謝っていた。俺たちは2人に持っている情報を提示。

 父さんは家に監視カメラを付けてくれ、鈴さんはいすずと一緒に警察に行った。


「いすずには、ボディーガードをつけようと思うわ。ありがとう弘人くん、教えてくれて」

「いえいえ、こちらこそ力を貸していただきありがとうございます」


 あとは、犯人が見つかるだけ。何にもなければいいなって、そう思っていた。


 まさか、あんなことが起きるとは思いもしなかった。

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