第31話 いすずとご褒美⑴

 それから1週間が経過した。

 気がつけば、いすずをリラックスさせたい作戦の当日になっていた。

当日まで、あっという間だった。


「よし、なんとか成功させるぞ!」


 気合いを入れるために頬を叩き、鏡の前で服装を確認した。準備万端、あとは本人に来てもらうだけだ。


 ちょうどその時、スマホが鳴った。表示を見るとそこには青の名前が書かれていた。俺はスマホの画面をタッチしすると、スマホを耳に当てた。


「もしもし、弘人。あたし、あたし!」

「オレオレ詐欺かよ。準備はバッチリか」

「もちろん、大丈夫だよ! 待ち合わせ場所の猫の像前に行くからね!」

「あぁ、わかった! じゃあ、あとでな」


 俺はスマホの電源を切るとバックを持ち、家を出た。

 目的地は駅前の広場だった。

 駅前の広場に着くと人がごった返していて、休日の日曜日だなって思わされた。俺は青と約束した猫の像前……ではなく、少し離れたところから青が来るのを待った。


 数分後、青が到着した。青は猫の像前に着くと、猫の像前でスマホをいじっている。


「(青は到着した。あとは……)」


 さらに数分後、青の近くにメガネをかけたツインテールの女の子が現れた。女の子は青に話しかけると、仲良さそうに何かを話している。


「じゃあ、いこっか」

「うん」


 立ち話が済んだのだろう、2人は駅の方面に向かっていった。


「(よし、作戦成功!)」


 俺はこっそり2人の後をつけ、駅の方面に着いて行った。

 2人は仲良く話をしながら駅で切符を買い、改札口に入っていった。見失わないように俺は後を追う。


「でね、弘人がね」

「お兄ちゃん、そんなことしてたんですか」


 2人が電車を待つ近くで、俺は2人を見ていた。

 会話で分かるように、俺が追いかけていたのは青と変装したいすずだった。俺はどうにか、休日にいすずを呼び出すことに成功したのだ。


「(作戦が成功してよかった)」


 あの日俺は、どうやっていすずを呼び出そうか考えていた。

 考えに考えて……青にいすずを呼び出してもらうようにお願いしたのだ。

 青はすぐに承諾してくれて、いすずにメールを送ってくれた。

 するといすずからすぐメールが返ってきたみたいで、会えるという内容のメールが来たみたいだった。(俺はいまだにシカトされていたので、ショックだったが)


 とにかく、いすずとの約束を取り付けることに成功した。あとは、俺と青が考えたプランで、いすずに今日一日リラックスしてもらおうと考えたのだ。

 本来であれば俺がエスコートすべきだが、シカトされているので青にいすずのエスコートをお任せした。


「まっかせてよ! いすずちゃんをしっかりリラックスさせるからね!」

「青、ありがとう!」

「どういたしまして!」


 あとは青にいすずのエスコートを任せて……俺は2人の様子を見るべく、こっそり2人の後をつけることにしたのだった。

(ちなみに格好はサングラスにマスクをして、準備満タンだ!)


「それでさ、弘人が公園で……」

「それは、かわいいですね!」


「(ってかさっきから弘人って名前を呼ばれてる気がするんだが、何を話しているんだ? あの2人)」


 2人の話をもっと近くで聴きたいが、近寄りすぎるとバレるかもしれないから気をつけないとな。


「あっ電車来たぞ!」

「電車久しぶりに乗るな」


 ちょうど電車が到着した。電車に2人が乗ったのを確認して、となりの車両に乗り込んだ。俺はスマホを取り出すと、青に連絡を入れた。


《こちら、弘人。今、隣の車両にいる!》

《了解! こっちも電車に乗ったぞ! 今のところ順調だね》

《だな》


 スマホをポケットにしまうと、空いている席に座った。あとは、電車が到着するまで待つだけとなった。今2人が向かっているのはとなり町なので、数十分でつくだろう。


「なり町、なり町〜」


 数十分後、となり町に着いた。俺が電車から降りると、2人も降りてきた。

 2人は電車から降りると改札口を出て、商店街のある方に向かっていく。


「実はこの近くに、穴場のプラネタリウムがあって」

「へぇー、この近くにプラネタリウムがあるんですね!」


 最初の目的地は2人が言っていたように、プラネタリウムだ。となり町の商店街近くにある穴場スポットだった。


「じゃじゃーん、ここがプラネタリウムだよ!」

「ふふ、プラネタリウム楽しみです」


 2人はプラネタリウムに着くとチケットを買って、中に入って行った。俺もチケットを買って中に入ったが、めちゃくちゃ受付の人に怪しい目で見られた。なんでだ?


 とりあえず2人から離れた位置に座る。それから数分後にプラネタリウムが始まった。

 星座の説明がされ、久しぶりにプラネタリウムを観たけど俺自身楽しむことができた。


「(いすずは、どうだろうか)」


 いすずを伺うと、いすずは星の説明に聞き入っているようだった。


「(よかった、楽しんでいるみたいだな。青は……)」


 ガクガクと頭が上下に揺れていた。どうやら眠っているようだった。


「(眠ってるんかい!?)」


 青は終始ずっと眠っていたのだった。

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