第30話 いすずの様子がおかしい
最近、いすずの様子がおかしい。
やたらと疲れた顔をするようになったり、どこか挙動不審だったり、
《お兄ちゃん。今日は家に帰れそうにないから、よろしくね! しっかり戸締まりをするんだよ〜》
《俺は子どもか!?》
家にあまりよりつかなくなったり……
いつもなら仕事があったとしても必ず家に帰ってくるのに、どうしたんだいすず?
俺は心配で仕方がなかった。
だって、この間もいすずは無理をして熱を出したことがあったからだ。
「(あまり、無理をしていないといいけど)」
念には念をいれて、メールしておくか。
しかし、いくらいすずにメールを入れても《大丈夫だよ!》としか返ってはこない。
「うーん、本当に大丈夫なのか?」
だが、あまりいい過ぎてもよくない気がする。口うるさいと、いすずにかえってストレスを与えかねないからな。
「せめて、少しでもリラックスさせてあげられたらな」
そこまで考えた時、俺はあることを思い出した。
「そうだ、いすずに勉強を見てくれたお礼をしてなかったっけ!」
テストが終わってからなんやかんやあって、俺はいすずにテストのお礼を返せていなかった。今こそそのお礼を返す時なのかもしれない。
「そこで少しでもリラックスさせてあげられれば、いいからな!」
そうと決まればさっそく、いすずをリラックスさせたい作戦を計画することにした。
まずこの作戦で重要なのは、いかにいすずを休ませてあげられるかが重要だ。どうやったらいすずを休ませてあげることができるのか?
「リラックスといったら温泉だけど、それじゃあ星夜いすずだってバレちゃうしな」
俺はネットを駆使しながらああでもない、こうでもないと計画を練り続けた。しかし、なかなかいい作戦は思いつかず……気がつけば、朝になっていた。
「朝まで考えてしまった……」
おかげで眠いは、頭が痛いわで大変だった。でも、なんとしてでもこの計画を早く練らなければ!
「おっはよー! 弘人。って、どうしたんだ!? そんな暗い顔して」
「あぁ青か、はよっ。実はかくかくしかじかで」
「ふむふむ」
俺は登校中に出会った青に、いすずをリラックスさせたい作戦を実行しようとしていることを話した。青は俺の説明に、うんうんと頷いて聞いてくれた。
「そっかそっか。弘人、優しいところあるじゃん」
「ちっ違うって、俺はいすずに無理してほしくなくって」
「はいはい、すっかりお兄ちゃんだね」
ニコニコと微笑ましいものを見る目をしながら青が笑うもんだから、居心地が悪くて仕方がない。
「とにかく、なんかいい場所とかないかな?」
「うーん、そうだな。家とかは、どうなの? 1番落ち着くんじゃないの?」
「それも考えたんだけど、家でも自分の部屋に入ると無理するとこあるから、どっか連れて行ったほうがいいかなって」
「なるほど、なるほど、たしかにそうだね! なら、いすずちゃんのことを考えると人が少ない場所がいいよね」
「そうだな」
「人が少なくて、いすずちゃんがリラックスできそうな場所か……」
うーんと、青はうなりながら必死に考えてくれる。それがとっても、ありがたかった。
「あっそうだ、あそこなんてどうだ? ほら、となり町にあるプラネタリウム! あそこ、穴場スポットだから人少ないよ!」
「たしかに、知る人ぞ知るスポットだからな。たしかにいいかもしれない」
「で、プラネタリウムに行った後に2人で……」
それから青がたくさんのリラックスできそうな場所を教えてくれた。おかげで、あんなに悩んでいた計画があっという間に決まってしまったのだ。
「ありがとう青! おかげでいすずを休ませてあげられそうだ! 何度お礼をいったらいいのか!」
「いいよ、気にしなくって! 自分で言ったように、いすずちゃんを休ませてあげてね!」
これで行く場所は決まった。あとはいすずに休みの日を聞いて、連れ出すだけだ!
「さっそくいすずに、メール入れてみるわ!」
「うん!」
俺はいすずにメールをした。次の休みの日はいつなのかと。
さすがにその時は、返信が来なかった。
「まぁ、あとで来るだろうな」
「そうだね、またあとで結果教えてね」
「了解」
キンコンカンコーン。
ちょうど学校の朝のチャイムが鳴った。どうやら青と立ち話し過ぎたらしい。
「まずい、遅刻だ!」
「早く行こう!」
俺たちは慌てて、学校に急いで向かった。
「(どうにか、作戦が成功しますように!)」
俺はそう願っていた。
しかし、あれからいすずのメールは返ってくることはなかった。
「(ど、どういうことだ? まさか、無視されてるのか!?)」
いくら返信を待っても、なかなか返信がこないもんだからかなり落ち込んでいた。いつもは、返信をすぐに返すのにどうしたんだろう。
「(ま、まさか、いすずに何かあったんじゃ!?)」
心配になった俺は、いすずのお母さんである鈴さんにメールを入れた。
すると、すぐにメールが返ってきた。
《いすずは、いつも通りよ。何か心配事でもあった?》
どうやらいすずはいつも通りみたいだ。ホッとした。
《いや、ちょっと気になることがあって》
「(そうだ、ついでにいすずの休みの日も聞いてしまおう)」
《あの鈴さんに聞きたいんですが、いすずの休みの日って今月ありますか?》
俺は鈴さんに、いすずの休みの日を聞くことにした。すぐに、鈴さんから返事が来た。
《いすず来週の日曜日は、休みよ》
《そうだったんですね! ありがとうございます》
《なになに、その日なんかあるの?》
《別に何もないですよ!》
《そう? なら、お願いがあるんだけど……あの子、今月仕事ばっかりだったから、ゆっくり休むように言っといてくれない? 最近思い詰めた顔ばかりしてるの》
《でも、鈴さんが言った方がいいんじゃ?》
《私が言っても聞かないのよ、あの子》
《そうなんですか?》
《そうなのよ。でも、弘人君の言うことは聞くみたいだし、お願いしてもいいかしら? ごめんなさいね》
《はい、分かりました》
《ありがとう弘人くん、あなたがいすずのお兄ちゃんになってくれて、よかったわ》
俺はスマホを閉じると、ふぅーっと息を吐いた。
どうやらいすずは、母親である鈴さんからみても疲れているみたいだ。
「(だったら、なおさら休ませてあげないとな!)」
俺は頬を叩き気合いを入れると、新たに作戦を練ることにした。
「(次はどうやって、来週いすずを呼び出すかだ!)」
いすずは俺のメールをなぜか無視している。普通にメールしても、もしかするといすずはその日来ないのかもしれない。
それじゃあダメだ、確実にいすずに来てもらわないと。なぜなら、いすずにリラックスしてもらいたいからだ。
「なにか、いい案はないか?」
そこまで考えた時、ある作戦が思い浮かんだ。
「そうだ、こうすればいいのか!」
俺はスマホをとると、ある人物に電話をしたのだった。
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