第58話 『凛のカラ元気とハプニング』
凛が泣き止んでからカーテンを付けた。棚の組み立ても出来ずに放置になっていると言うので、それも組み立てた。
そうしていろいろ手伝っているうちに、これで本当に凛に一人暮らしなんて出来るのか? と不安になってきたが、もう始めてしまったものは仕方がない。ひとまずきりのいいところまで手伝った。
「とりあえず今日はこんなもんかー?」
「ありがとー! お兄ちゃん! 助かったよー」
俺の問いかけに、凛は屈託のない明るい笑顔で答えた。
凛が大泣きしていた時はあまりに弱々しくてどうなるかと思ったが、途中で『ん! もう一生分泣いたから大丈夫! ありがと、おにーちゃんっ!』と、自分で両頬をパチンと叩いて気持ちを切り替えた様子を見せ、涙目のまま笑顔を見せた。
その時叩いた頬が赤くなっていて、それは心配になったけれど……
今はもう泣いていたのが嘘のようにすっかりご機嫌な様子になっていて、ひとまず安心する。
「じゃあ、そろそろ帰ろうかな」
「うん、今日は仕事の後なのに来てくれてありがとう。彼女さんにもよろしくね?」
「……うん」
返事しつつ、美桜にも気遣いを見せる凛はどんな気持ちなんだろうと思う。仮にもあんなに大泣きするくらい俺を好きだと言っていたわけで。美桜がいなければもしかしたら俺と付き合っていたかもしれない、いわば恋敵なわけで。
けれど、そこには触れないでいようと思った。俺の妹でありたいと言う凛に、俺もあくまで兄として接していきたいと思う。
「じゃあ、またなんかあったら言えよ?」
「ありがとっお兄ちゃん!」
「ん、おやすみ」
「おやすみなさい」
そう言って、明るい笑顔の凛に見送られながら部屋を後にした。
……
…………
「ただいまー」
美桜が寝ているかもしれないと思い、そーっと玄関を開けた。すると玄関からすぐそばにある脱衣所の方から声がした。
「こーた。こーた、こーたあー!」
え、なんか連呼されてる。
そっと帰って来たけど、俺が帰って来た事に気付いたのだろうか?
「え、美桜、どした?」
呼ばれたと思って脱衣所の扉を開けた。
すると
「え!?」
「わ、ご、ごめん!!」
そこには風呂上がり直後で、全裸のままの美桜がいた。
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