第50話 『やっぱり美桜が可愛すぎてしんどい』


『……嬉しすぎて、どうしたらいいのかわからなくなっちゃうよ』



 美桜がそんなことを言うから、“いやなわけではないんだ” と、妙な自信が出てきて。


「どうもしなくていいから、キスされてて」


 そんな事を言って俺はさらに美桜にキスをした。


「ん……っ」


 その時に漏らす美桜の声が可愛くて、その時の美桜の表情が、たまらなく可愛くて。


 なんかもう、止まらなくなって来て。


 だんだん激しくキスしてたら、



「ご、ごしゅ、じんさまっ、んうう、だめ、も、だめ」


 美桜がそんなことを言い出して。


 顔見たら真っ赤で、首まで赤くなってて。


 うわー、なんかもう、可愛い。


 そう思って、また抱きしめた。


「もう、だめ?」


 聞いてみると


「……だめ」


 小さな声でそう言うと、美桜はまた俺の胸に顔を埋めて赤い顔を隠した。



 はー、可愛い。


 美桜は……全部が初めてなんだもんなあと思う。


 そんな美桜の髪を撫でながら


「撫でるのは?」


 聞いてみる。


「それは、嬉しい」


「……じゃあ、抱きしめるのは?」


「……考え中です」


「でも、今、抱きしめられてるよ?」


「……そうだけど、考え中ですっ」


 拗ねた子供みたいに答える美桜が可愛くて。


「そかそか。じゃあ、そのまま俺に抱きしめられながら、考えてて」


「うん」


 俺に抱きついたままの美桜を、俺はそのまま抱きしめていた。すると


「ごしゅじんさまー?」


 俺に抱きついて俺の胸で顔を隠したまま美桜が呼んできて


「ん?」


 聞いてみると


「美桜……ごしゅじんさまのこと、今までよりもっと好きかもしれない。……ドキドキしすぎて、苦しい」


 そんな事を言いはじめて。


「俺も。今までより美桜が好き」


 俺までも、恥ずかしげもなくそんな言葉が出てきて。


 でも、名前呼びがまたご主人様呼びに戻ってる事が、少し残念だったりして。


 けれど、それもこれから徐々に慣れていってくれたらいいかなとも思ったりして。


 このまま美桜を撫でて寝ようかな……少しそう気を緩めた時。


 美桜は顔を上げて俺を見つめながら、美桜の両手で俺の両頬を優しく挟んだ。


「え……?」


 びっくりして美桜を見る俺の顔に、美桜はゆっくりと近づいてきて。


「こーた……」


 唐突に俺を名前で呼んできて。


 俺の両頬を優しく挟んだまま、ゆっくりと一度だけ、深くキスをした。


 ……な、に、これ。不意打ちなんだけど。


 びっくりして声が出ないでいる俺に、


「美桜ばっかりドキドキしてるの、くやしいんだもん。ねぇ、ちょっとくらいは美桜に……、ドキドキしてくれた?」


 子供みたいな大人っぽい顔で言ってきて。


 はー。……もう。


 『美桜が可愛すぎてしんどい』


 俺は再びそう思うのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る