第43話 『美桜とのキス』


……

…………


「ただいまー」


 少し平常心を意識しつつ、静かに扉を開けた。


「美桜ー?」


 声を掛けるが部屋の中は静かで。


 ……部屋の奥まで入ってみると、俺の枕を抱きしめながら、美桜はすーすーと昼寝をしてた。


 そっと髪を撫でる。

 可愛いなあと思う。


 普通の猫なら、寝ててもすぐに起きそうなものなのに、美桜は一度寝てしまうと、こちらが起こそうとしない限りは触ったくらいじゃ起きない事が多い気がする。


 それを知ってから知らないでか。


 俺は寝てる美桜に添い寝して、そっとそのまま髪を撫でて抱きしめた。


 ……可愛い。安心する。

 ……俺、やっぱり美桜が好きだ。


 勝手に再認識しつつ、俺はそのまま、眠る美桜にキスをした。


 今まで散々我慢してたくせに、もう我慢しようなんて意識はその時の俺からはすっかりなくなっていて。


 髪を撫でて抱きしめながらキスしてたら、


「ん、……にゃあ……?」


 寝ぼけながら美桜は俺に身体を預けて甘えてきて。


「ん……っ」


 キスするたびに漏らす声が可愛くて。


 少しそんな美桜にドキドキとしてきている自分に気づいて、美桜をぎゅっと抱きしめた。


「ん、……んん、あれ? ごしゅじんさま……」


 いつもよりぼんやりとした口調で美桜は俺を呼んだ。まだ半分眠っているような美桜に


「ただいまー」


俺は声を掛ける。


「ん……、おかえりなさ……い」


 美桜はぼんやりとした声で答えて、へにゃっと笑ってまた俺に抱きついた。



 はあ、可愛い。美桜は俺に対して、まるで警戒心なんてなくて。


 もう、美桜、俺のだよな。

 誰にも渡さないぞ?

 

 ふつふつと湧き上がる独占欲。


 また俺はまだ半分眠そうな美桜にキスをして、猫耳を撫でた。


 あれ? 美桜の猫耳、また少し小さくなった??


 そんな気がしたけれど、


「ん、にゃあ……」


くすぐったそうに身体を捩る美桜のその仕草が可愛くて、それどころではなくて。俺は猫耳を撫でながら、そっとまた、キスをした。


 すると美桜の身体が少しピクッとして


「んっ、……」


 声とも息とも言えないような、甘い声を漏らした。


 あ、だめだ、止まらない……かも。


 俺はそのまま美桜の猫耳を撫でながらキスをする。


 その度に美桜は甘い声を漏らしながら身体を軽く跳ねさせてて


 だんだん目を覚まし始める美桜は


「ん、だめ、ごしゅじん、さま……みみ、だめ……ぇ」


 身体を捩りながら甘い声で訴えてくるのだけれど


————”がまんして”


 そんな事を言って、そのまま続けたくなったけど、それも少し可哀想かなと思ったりもして。


 猫耳に触れる手を髪にそっと移動させて、髪を撫でて抱きしめた。


「美桜、起きた? おはよ」


「ん、おはよお、ごしゅじんさま……」


 俺は美桜を抱きしめたままぐるんと回って、俺の身体の上に美桜が来る様にする。


「えっ」


 美桜は少しびっくりした顔をしながら俺の顔を見つめてて。


「美桜、美桜、キスして」

 

 俺は美桜にそう言った。


「え、え、えっ」


 美桜は俺の上で真っ赤な顔をしてて


「だめ? したくない? キス」


俺の言葉に恥ずかしそうに顔を赤らめながら、そっと俺にキスをして抱きついた。


 美桜のキスは、柔らかくて、控えめで……可愛い。


「ねぇ? ごしゅじんさま……ちょっとだけ、恥ずかしい……」


「ん? 恥ずかしい? ……でも、俺は嬉しいよ?」


 そう言って俺の胸に顔を埋める美桜の髪を優しく撫でる。


「……美桜も。うれしい。ごしゅじんさまが喜んでくれるの、うれしいなー。すき……」


 ……ああ、俺はやっぱり美桜が好きだ。


 さっき凛にされたキスを思い出しながら、申し訳なくもやっぱり、そう思うのだった。

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