第13話 出発

光り輝く長い長い列車には、、、


悠利が微笑んで乗っている。


悠利が手を振ってくると、麗子はその列車に近寄った。



「おいで。麗子。一緒に行こう」



麗子は…その景色を懐かしく感じ。そして……


悠利の手を取り、

列車に乗り込むとママ待って、と

麗子を呼ぶ声が聞こえた。



振り返ると、そこには、




1面、美しい花畑が広がっていた。


「僕を、僕を……産んでくれる?」




クスッ……


「そうね。いつか




麗子は…悠利の手を握り締めて、

その列車は

銀河へと走り出した。



列車から見える景色は……

それはそれは美しいものだった。




麗子が感動していると、

後ろから悠利が抱き寄せてくれた。




「麗子。君をずっと愛するから。だからね?」



「ふふふ。何かしら?」



「僕らは、いつか……出逢おうよ。」



「ん??意味が分からないわ。」





「だからさ。出逢おう。」



「逢ってるわよ?」



「いいや。僕は旅立たなくちゃならないんだよ。」



「何処へ?」



優しい花の香りが、さらに麗子を包み込む。


その香りの主である悠利が笑顔を見せた。







「君だけを……愛するから。また、逢おう。」



「悠利?意味が分からないわ。」




「分からないかい?なら仕方ない。いつか…必ず」





抱き寄せた腕を、悠利は振り払って、旅立った列車から

花畑へと悠利は……麗子を突き落とした。





悠利?!





悠利の腕の中には、三宅に似た男の子が笑顔を向けていた。




ママ。またね。






そう言い残し、列車は高く高く

飛び立って行ってしまった。





花のクッションに包まれた麗子は優しい香りにいい気分になり、



突然現れた大きな時計を目にする。






《早く目覚めなさい》



「……え?」



《目覚めなさい》




《貴方は、生きるしか無いのです。》




✤✤✤✤✤





ガバッ!!!


「いっ、痛っ!!」




目覚めると、そこには三宅が

くしゃくしゃな顔をしながら泣いていた。



麗子の手を握りしめながら、三宅は…すまなかった

すまなかった。



と、ずっと泣いていた。




麗子は……記憶が何も無い。



「どうして泣いてるの?」





「麗子。ごめんな。うぅ。……」


麗子は…笑顔を向けながら、こう言った。






「平気よ!私には出来ない事は無いわ。全てが順調よ?」




握り締めた手を、麗子は不思議がる。





その一言を聞いた三宅は、

いたたまれなくなり、






その場で、泣き崩れた。




この後、麗子は……記憶喪失がネックになり、

入院生活を余儀なくされたが、、、





そばにはいつも、

暖かい空気が流れていた。




麗子は…病室から空を眺めると

写真を撮りながら、三宅と仲良く過ごしていく事になるが、





三宅は……麗子への想いを……

抑えきれずに




良く花束を買ってはプレゼントしていた。



麗子の病室は、


いつか見た甘い香りのする花畑の様に……





愛する人、悠利と、三宅の子供が

見守ってくれていた。







キャリア・ウーマンであった麗子。

女性の幸せを掴みきれなかった麗子。




記憶喪失になり、

全て一からやり直しだが、麗子は幸せだった。





何故なら、

新しい記憶がされていくから。




静かに目を閉じて、麗子は思う。






「ありがとう」






【最終話終わり】

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落しの麗子さん見参❤ たから聖 @08061012

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