第5話 side誠人
チャイムが鳴った。
12時半。昼休憩の時間だ。
俺は、自習室から講師室へと戻ってきた。
「秋月先生、お疲れ様です。
お昼いきますか?」
「柴先生、すいません。
俺、今日から」
俺は、巾着からオレンジ色のバンダナに包まれた弁当を机に出す。
「あ、愛妻弁当ですか。う、羨ましい」
柴先生は、しょんぼりしながら講師室を出て行った。
いままでは、彼と良く昼休みを共にしたものだ。
「あれ?秋月先生は、今日はお弁当なんですね」
ちょうど講師室に入って来た藤野先生に言われた。
「ええ、妻が用意してくれたんですよ」
「愛妻弁当ですか、いいですね。
愛されてますね」
藤野先生は、自身の席へいきお弁当を出した。
「私のこれは、自分で作ったものなので」
「お弁当が作れるなんて尊敬しますよ、料理は得意ではないので弁当まではつくれないんですよ」
「え、秋月先生でも苦手なものあるんですね」
「いや、流石にありますよ」
俺は、弁当を開けてみることにした。
そして、一瞬で止まった。
いつそんなのする時間があったのか、ご飯に桜でんぷんでハートマークが付けられていた。
「うんうん、愛妻弁当のテンプレですね」
そういって、藤野先生が笑っていた。
「これは、なかなか恥ずかしいものですね」
「あらあら、秋月先生のそんな緩み切った表情が見れるなんて。
ちょっと、得してしまいました。ご馳走様です」
たぶん、俺は顔を赤くして笑みを浮かべているのだろう。
人に弱みを見せるなんて。
俺は、スマホで弁当を撮影して、その画像を紗愛に送って「いただきます」をして食べ始めた。
美味しい。それにしても、今日はとても弁当が甘く感じる。
きっと、気のせいだとは思う。が、食べ終わったらコーヒーでも飲むか。
俺は、早めに食べ終わると紗愛に「美味しかった。ありがとう」とメッセージを送ると講師室から出て向かいのコンビニへと向かった。
ああ、そうだ。
紗愛に、電子マネーの送金しておこう。
誠人「放課後に美桜と美味しいものでも食べてきなよ」
とメッセージを送っておいた。
もちろん、電子マネーの送金もした。
さて、コーヒーコーヒー。
コンビニでコーヒーを購入してるとピコンとスマホから通知音がした。
スマホを確認する。
紗愛「誠人さん、ありがとう」
紗愛「なんだけど、金額間違えたの?」
金額?確か俺は1万円分送金したはずだが。
一度確認する。が、たしかに1万円の送金がされている。
紗愛「高校生が放課後に遊びに行くのにこんなには使わないよ」
誠人「ああ、すまない」
誠人「ご飯が美味しかったし、紗愛のおかげでネクタイも褒められたから」
誠人「嬉しくなっちゃって」
誠人「紗愛、朝からいろいろありがとう」
誠人「今日してくれたことに対しての感謝だと思ってよ」
紗愛「う、そういわれると怒れない」
紗愛「でも、多いからね」
紗愛「私が必要だといった時だけいただけたらいいから」
誠人「俺も、考えが至らなくてごめん」
紗愛「ううん、ありがとう。誠人さん、大好きです❤」
ドキっと心臓の音が早まる。
ダメだ、また顔が緩んでしまう。
誠人「紗愛、俺も君だが大好きだよ」
と送って、コーヒー片手に講師室へと戻った。
その時の光景を、生徒に見られていたらしくあとでひどく後悔することになる。
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