第2話 side誠人

俺は、着替え終えウォークインクローゼットから出る。

ちょうど、紗愛がこっちを向いていた。

「誠人さん、私も大好き。愛してます」

ドキっとした。

凄い笑顔で俺にそう言ってきたから。

「え、ありがとう」

顔が熱い。

不意打ちは、心臓に悪い。

でも、紗愛の笑顔は可愛いから好きだ。

この笑顔の為ならなんだってできるって思える。

「誠人さん、ご飯できてます。

食べましょう」

「ありがとう、紗愛」

俺たちは、ダイニングの椅子に腰を掛ける。

あれ?置いてある位置がおかしいような。

紗愛は、エプロンをはずして俺の隣の席に座った。

「やっぱり、そのネクタイ似合いますね」

「ありがとう、選んでくれて。

紗愛の選んでくれるものはセンスがいいから助かるよ」

ただ、ちょっとデザインが可愛い気がするがまあいいだろう。

俺が選んだらシンプルな物しかきっと選ばないだろうし。

「でも、生徒さんにモテたら困るなぁ」

紗愛は、何を言っているんだろう。

俺が、モテる?そんなわけはないだろう。

学生時代、モテたことがないというのに。

いつも一緒にいた紗愛なら知っていると思うが。

「ないない。俺には、紗愛しかいないから」

「えへへ、そういってもらえると嬉しいです」

紗愛は、可愛い。

だから、俺の方こそ心配になる。

「紗愛、君こそモテるだろう。気を付けてな」

「誠人さんは、何を言ってるんですか。

私が、モテるのは誠人さんだけで充分です」

俺たちは、朝ごはんを食べ始める。

たぶん、食べさせ合いをしたかたんだろうけどできるものがなかったんだろう。

静かに食べ終わるのだった。

「紗愛、洗い物は俺がしとくから」

「え、いいんですか?」

「もちろん、俺の方はまだしばらくは出勤に時間があるから」

俺の仕事は、予備校の講師。

出勤も少し遅めでまだ時間の余裕がある。

着替えはしたが、着替えた姿を紗愛に見せたかっただけだ。

本当にネクタイが似合っているかは彼女に品評してほしかったから。

「あ、そうでした。

じゃあ、お先に私は学校に行きます」

紗愛は、下膳して流しに置く。

高校までは、徒歩でも大した距離はない。

15分も余裕を見れば充分行けるだろう。

俺の務める予備校も、このマンションからそこまで離れていない。

高校とは反対の方向に等間隔といったとこだろうか。

だから、紗愛のクラスの子達も通っている。

「お弁当、用意してあるので持って行ってくださいね」

「ありがとう、紗愛」

彼女は、玄関先で俺を待っていた。

ああ、そうか。

俺は、玄関へ向かい少し屈んで紗愛の唇に口づけをした。

いってらっしゃいのキスを彼女は待っていたんだ。

でも、やっぱり恥ずかしい。

俺は、顔を赤く染めていた。

「誠人さん、いってきます」

「ああ、いってらっしゃい」

そういって、紗愛は玄関を開け行ってしまった。

一人になると寂しくなる。

彼女の存在が、俺にとって大事で大きなものなんだと気づかされる。

さて、片付けと洗濯、掃除と家事を終わらせよう。

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