第廿玖話 死神の慟哭
胸にしっかりとナイフが刺さり、
確実に、人をしっかりと殺すことだけを目的としていたら、彼女は苦しみから解き放たれる事はできていたのだろうか?
そんなことを考えると、自分のした事は間違いなんじゃないか?本当にするべき事は違う事なんじゃないか?と、自己嫌悪に陥る。
「ごぼっぉあ!…………あ、ありがとうっす。あたしは最後まで………………とことんついてない.そんな………………人間だった……けど、最後の最後………………で死神が.微笑んで…………くれた…………ような気が、したっす」
そう言い残すと、彼女は絶命してもう喋らなくなってしまう。
戦争というのは、なんて愚かしい行為だろう。自分が正しいと思って行動していたというのに、それを敵に踏み
彼女の最後が幸福であったかなど、俺には知る
敵から死神と言われて恐れられている俺が…………向けられていい感情でないにも関わらず、俺は恥にも似たようなものを感じる。
やるならば徹底して行わなければならないであろう、自身の行動には…………甘えが残ったものになっている。
最期に善人振ろうとして、明るくさよならなんて……どの口が言えたんだ、このクソ偽善者が……!
最悪な気分と共に、泣き出してしまいたくなるような辛い経験に……俺に許されている行為ではないことはわかるが、それでも…………それでも彼女はここで死ぬべきではなかった。
彼女の代わりに、俺が死ねばよかったのではないか……しかし、それは無責任というもので、俺の後ろには大日本帝国国民の命が背負わされているわけだ。
後退などできるはずもない。自分の命を助かるためだけに、多くの人間が犠牲になるのならば、犠牲者は俺一人で十分だ。
後退などする必要もない。俺が居れば安全だということを、大日本帝国国民は安堵して、仮想敵国には俺がいるだけで戦況を動かすことが可能なんだということを、知らしめてやらなければならない。
自身の闘志の炎に
今もなお燃え広がり続ける、この苛烈な血では……生きることを諦めたやつから死ぬ。
残酷な事に、女子供でも容赦はなく襲いかかってくるだろう。
自分たちの利益のためだけに動く機関など、この大日本帝国にとって必要はないものであると言うのは、周知の事実であると共に、ここ全てを焦土とかして……痕跡さえ残さないように。
俺が俺であり続けれるように、身命を賭して…………この戦いに勝利しなければならない。
「……………………ごめん。貴方を助けることができなかった。我が祖国を恨むのではなく、私を恨んで」
誰に謝っているかもわからない。
右も左も分からない。
ただ分かっているのは、自信がこの戦場にいる一人の死神として機能していると言うことだけだ。
死神と恐れられた奴が、随分と人間らしい感情があるのだなと、
俺を止められるのはもう、天皇猊下陛下のみだ。
自分の意思も、このまま逃げ帰る……そんな気持ちにはならないのは当然だろう。……俺は多くの命を奪ってきた。奪われそうになったから、それが嫌で殺した臆病者なんだ。
危ない場面も多少あったが、それでも生き残った…………いや、生き残ってしまったと言った方が正しいか。
迎おう…………俺たちの戦場へ。
もうとっくのとんまに止まることのできなくなった死神が、戦地を求めて
歩き疲れたと思ったら、休憩をしよう…………いや、俺に休憩なんてものは許されていない。
俺が許されているのは、敵を如何に殺して……敵を如何に苦しめるかが俺の存在意義だ。人間様と同じ感情で死神が動くわけがない。動くわけがないんだ
自身の中で考えが
そこで目にした光景は……とてもではないが、信じられない光景だった。
我が大日本帝国国民が悪魔のような見た目をしたものたちに虐殺され、殺されている……蹂躙されているものだった。…………なぜここに我が国の臣民がいるのかは存じないが、天皇猊下陛下はこれをお気づきで俺に軍服を…………?
そうか……俺はここにいる敵を…………全て殺し尽くすまでは、絶対に後を引くことなどできないと言うことか……!
やはり、運命がこちらの行動を決定づけているのであれば、神なんか要らない。
神と崇め奉るのであれば、我が偉大なる大日本帝国の天皇猊下陛下のみに注ぐものだろう…………!
完全なる忠誠を誓い……自身に階級をつけてくださったこと、ここに誘って下さった事を光栄に思う。
それで、この悪魔のようなやつを…………遠慮なく殺し尽くすことができるのだから。
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