第廿㭭話 違う運命だったのなら
まぁ、期待に添えるか添えないか評価をするのは俺ではなく、天皇猊下陛下なんだから、自分のしたことについて反省するのは、その機会が来てからやればいい話なんだよな。
だから、自分の行動を肯定はせず、須くを打ち倒さんとする行動力で持って、このジェネリックを全てぶっ潰せばいいという、至極簡単な答えに行き着くことができ、目の前にいる奴に少しは感謝してあげたい気持ちだ。
先ほども晴れやかな気持ちであると表現していたが、俺は天皇猊下陛下の忠誠を改めて自覚させてくれてありがとう。と言う意味で、晴れやかな気持ちであると。
俺のような人間が何をなしたところで、気にも留めないだろうが、自分自身がやっていた行動……やっている行動に疑問を持つ事は、人間にならば誰にでもあるんじゃないか?
人間は
「ふ……ふふふふふふふふふふ!バレては仕方ないっす。あたしの変装を見破るとは……中々に強い御仁であるっすねぇ!その皮を剥いで、必ず報いを受けさせろ!とか何とか上は言ってたっすけど、自分には関係のないことっす!こんな御仁の相手させられるとか、ほんとにあたしはついてないっすねぇ〜!今からでも、すぐに逃げ帰りたいっす」
あっ、やべ。こいつの存在をはっきりと言って忘れていた……なんて言う事はできないから、取り敢えず相槌だけ打っておこう。
教員に指されていない時でも、適度な相槌をしておけば、授業中は何とかなる可能性が高い。「あ、こいつ話聞いてなかったな?」って廊下に立たされるよりは、相槌をして「聞いてたけどわからなかったのか」と思わせた方が心象が何倍も良いだろう。
まぁ、これを覚えたところで受験に役に立つとか、授業を何倍も早く覚えられるだとか、そんな裏技めいたものではないと言う事は、分かってると思うが言っておこうと思う。
「………………最初から気づいていたから。
「ははははははは!ここを消し飛ばすっすか!豪胆なことを考えるっすねぇ…………しかもそれができてしまいそうなのが怖いんっすよね……!あぁ、質問にお答えするっすね。私はジェネリックの第八研究所からきた
相手の事情は分かったが……分かったが!その行為を肯定する事はできない。
今までやってきた事全部を精算は仕切れないし、それをさせる気もない。
ハーフだからと言って、全部が全部辛いと言うわけではないだろうが、この世界では確かに辛いだろう事は、大いに理解できる。
俺もこいつも、その程度の事では精算できる事はないだろうな……と言うことも理解できるから、余計に辛いだろう。相手にとっても、俺にとっても。
「………………貴方の事情は理解できたけれど、それで全部が全部許されるわけではない。…………肯定する事はできない」
「それは重々承知している事っす。私だって危ない事にだって全力で飛び込んで行ったし、悪いこともそれなりにしてきたと言う自覚はあるっす…………だけど、今更引くわけにはいかないっすし、足を洗うことなんて到底できない事は貴方もご存知っすよね?」
相手に問われた通り、足を洗うことなどできないだろう。
こいつが俺の予想通りジェネリックだろうと、国家の諜報員だろうと……運命を変える事はできない。
理不尽が足を生やしてこちらに向かってくる状況で、逃げられる
俺も含めて、そんな人間は非常に少ない。絶望的に、自分自身の運命を決定づけるものは、環境によって生成されていくものであると言うのは、何と残酷な話だろうか。
そして、その絶望を嘲笑うかのように、死神が目の前に現れたこの少女の心境や如何に……他の誰にも推しはかることのできないそれは、彼女の心を確実に
「………………それも、そうだね」
「そうなんっす……だから、目の前にいる
そう言う彼女の手は途轍もないほどに震えていた。
それは恐怖によってなのか、俺への共感性からくる「殺したくない」と言う気持ちなのかは知らないが、彼女が何かに怯えていると言う事は理解できる。
俺も、自身より強い存在が出てきたら、どうなるかわからないし、もしかしたら逃げ出してしまうかもしれない。
……だから、お前をここで全力で逝かせてやるのも、俺に決定づけられた
「とうとう戦いが始まっちゃうんっすね…………一度でもいいから、攻撃が当たってくれると嬉しいっすけど、貴方はそれを全て避けてしまう……そんな幻視も見えてくるほどっす……!あたしもちょっとは気合いを入れ直さないといけないっすね!いつまでもふにゃけていたらそれこそお終いっすよ!!」
彼女の目は、とっくに覚悟が完了している時の目だった。
こちらが強大な敵であると断定して、玉砕覚悟で挑んでくるその様に、俺はハーフを超越して、大和魂を見ることができた。
本当に大和魂というのは、日本人の誰もが持っているものだと俺は考えていて、その大和の精神はお前にも宿っているんだよと、口に出して言いたい。
よく頑張ったから……そんなに涙を流さなくていいから…………今はただゆっくりと、おやすみ。
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