第廿漆話 スパイはバレないようにやりましょう
縄跳びできるチャンス(裏切り者だったら、それかスパイだったら)が刻一刻と迫ってきていると思うと、俺は晴れやかな表情(表情筋は相変わらず機能はしていない)になることができる!
それは自身のストレスを発散できるからじゃないぞ?
ただ単純に学園長先生に化けていると言うのが気に食わないと言うだけで……本当にだぞ!?オレハウソツカナイゼンニンナニンゲンダヨー。
「しかし、ここはどう言った構造になっているんだ……まるで訳がわからない迷路のようなところだな。目が回ってしまって、寄る年波には勝てないと言ったところだ!はっはっはっ!」
嘘その一。学園長先生は見た目を操作することができ、変幻自在であると言うことが洞窟及び研究所突入前にわかっていること。明らかな嘘をついているな。
こんな分かりやすい嘘をついて一体何になるんだと言ったところだが、こいつはアマチュアのスパイなのかもしれないと思うと納得もいくのだが……俺に対して送ってくるには、多少問題ありなんじゃないか?
多分、これは研究所を破壊しすぎて、命令系統がうまく機能していない可能性もあるな。
欺瞞作戦を成功させようと思ったら、しっかりとした司令塔がいなければ成功することはできないだろう。
そんなこともあってか、こいつは不運にもここに送り込まれてしまった……と言う筋書きの方が俺としても分かりやすくていいだろう。
分かりやすい指標があれば、それを踏まえて殲滅作戦に移れるし、こいつを揺さぶって情報を逆に吐かせることだってできるし、色々と良いことづくめではあるんだが、悪いこともある。
こちらの情報もまた、相手の何処かの情報部には筒抜けになってしまうと言う点だな。ここは切ってもきれないところだから、我慢するしかない。
我慢するのが嫌だったら、自分にとっては大したことのない情報を、さも大層大したことのある情報だと、こちらも欺瞞をもって伝える悪魔的作戦。
相手の情報部に切れものがいたら、取捨選択をしてどの情報が使えるものか精査するだろうが、俺の予想が合っているのであれば、精査する時間も、人もいない状態なのは間違いない。
「………………学園長はまだまだお若い。貴方は不老人間なのですから、精神は引っ張られているのかもしれませんね……?」
「あっ……あぁ、そうだな!そうだとも!今の年齢に引っ張られて変な発言をしてしまったかな!いや〜、この体になると物覚えも悪くてねぇ!本当に困った話だろう!」
ああ、本当に困った話だ…………嘘そのニ。まさか俺の発した言葉に動揺をして目を逸らした
普通にここまでの物的証拠が揃っていれば、他の諜報員はそいつのことを暗殺しているだろう。暗殺する奴が暗殺されるとは何とも笑えない話だが……。
しかし、こいつ本当に隠す気があるのかと思えてくるようなことの運び方だし、これは初心者確定でいいんじゃないですかね(投げやり)。
多分上層部と情報部は「あーもうめちゃくちゃだよ」って思ってるからなぁ。
いやぁ、層が低いとこうもしんどい人材が来るのかぁ……俺はきっとそう言う人材だったので、そっち側の気持ちがよくわかるからこそ、自分を恨んでいたって言うのはあるんだけど、こいつの場合は誇らしげに思ってそうでなんか嫌だな。
どんなことが起きても……天と地がひっくり返ってもお前の行動を肯定することは、敵側の俺でもできないんだよなぁ。
もうここはあれか?やっちゃうか?
腑で縄跳び作戦という名の、ただ腹を切って内臓を取り出す殺人鬼も惚れる、殺人行動にすぎない。
自分の全ての行動を肯定する奴は、碌でもない人間であるのは間違いない。とどのつまりは最低なクズ野郎ってことだな。
俺はマッドだけにはなりたくない……あの人間の顔がチラつくからだ。
それこそ、自分が忌むべき相手と同じようになっては、いつかあの人間と同じことをしてしまうのではないか?と考えてしまうのは人間として正しい行動であろうと俺は思う。
「………………もう、下手な三文芝居はやめたら?お前がどこのスパイかは知らないけど」
そう口にすると、奴は少し焦ったように言葉を紡ぎ出していく。
「な、何を言っているのかな?一番合戦君…………私は私以外の何者でもないというのに……急におかしくなってしまったのは私以外にもいるということかね?それだったらそうと先に言えば良かったではないか!」
問答無用でナイフを向けて切り付けると、それを避けて、全力で俺との距離をとっていた。
正しい判断だな。そのまま避けようともしなければ、俺の射程圏内であったのは間違いないだろうし。今の動きで、俺は情報を手に入れた。割と訓練された動きだってことがわかる
多分プロの中では一番下位の方にいるであろう奴…………擬態行動がうまくいっていない奴なんじゃないか……?という推測まで立てることができるのだから、最初から攻撃すれば良かったのでは?とも思ってしまうな。
果たして、こいつの正体は一体何なのか……何処かの国のエージェントとかだったらめんどくさいことになるんだけど、ここの情報を掴まれたってことは、大日本帝国にとって痛手であるということは間違いない。
確実にここは皇国の恥部であるし、見られて気持ちのいい部分ではないからだ。
さっきからダンマリを決め込んでいるこいつは一体何者なのか……それを知って、消すか消さないか判断しないといけないっていうのは嫌な話だ。
しかしながら、給料分(天皇猊下陛下から賜った軍服分)の働きをしなくてはならないといけないのが、ご期待に添えるかどうかすらもわからない状態でやるのは、かなり精神にくるものなんだなぁ。
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