第廿弐話 神の一声
「うーん、華恋ちゃんは大丈夫かなぁ?」
この大日本帝国を守護する天井の存在。
華恋の様子をのぞいていた猊下陛下は彼女の安否が大いに心配であった。
自身が任命した者を失うというのはとてもではないが耐えられないという、猊下陛下の御心は決して守られねばならない……という事はなく、自身のいじれるおもちゃがなくて寂しいと思っておられるのである。
「猊下陛下……お言葉ですが、彼女ならどの様な攻撃を受けても無事であるはずでしょう。とても強い御仁ですし、何より彼女はこんなところでくたばる様な人間ではありますまい」
と、冷静に分析するのは、この国の軍事機動部隊・自衛自己判断組織マジェスティ隊の陸軍総司令官たる
彼も、華恋の強さを認めている者であり、普段から猊下陛下の御話を聞いているので、彼女の人となりはよく分かっている……はずだ。
「そうは言ってもねぇ、絢爛君。彼女もあの大爆発に巻き込まれてしまったとなると、良くて重症……悪くて死亡だ。生きていたら、ゾンビであることに疑いを持たなくてはならないよ?」
事実、あの時の大爆発では、直前になって龍が爆発することに気が付き、逃げ
そんな内心を知ってか知らずか、絢爛は言葉を口にする。
「猊下陛下に
「君ぃ、いくらなんでも僕だって、一人の人間に肩入れするわけじゃないよ?ただね、彼女は僕の
猊下陛下はそう仰られるが、事実として心配はしているとも口に述べる。
そんな心配される華恋のことを羨ましくもあり、
自分は芸が陛下に見初められてから、三十数年この部隊の編成を任されてきたからこそ言えることなのだが、猊下陛下はイタズラが大好きなのだ。
繰り返し繰り返しイタズラされていれば、嫌でも慣れるし、実際にイタズラが嫌だと思った事は一度もない。これが天皇猊下陛下の御心のままであるのであれば、自身から言うことなど何もないであろうと思う次第の絢爛である。
「そうですね……確かに猊下陛下の仰られる通り、猊下陛下の玩具を奪うというのは些か不敬でございますれば、部隊を編成し突撃させましょうか?」
「いや、それには及ばないよ絢爛君。華恋ちゃんがいるのならば、あのジェネリックすら破壊することができるだろう。彼女の能力は、あの一番合戦と同じ【強化】なのだから、万一負けることなどあり得ないよ」
この国の防御や攻撃を担う絢爛も、猊下陛下と同じ意見であった。
それほどまでに彼女の力は途轍もない物であるというのがわかっていたからである。
しかし、彼女には危うさもある。それは、彼女の固有の思想に基づく物であるのだが、個人の思想などを尊重する大日本帝国では、それをとやかく言うのは恥知らずがすること……強く本人に言えないのが辛いところだ。
彼女が軍に入隊すると言う形であるのならば、本人に伝えることもできようが、彼女はまだ軍所属の人間ではない。
それも、このジェネリックを破壊すれば、その
「そう……ですな。しかし、今一度、彼女には救援を送った方がいいのではないかと、愚考致しますが……
「そうだねぇ、華恋ちゃんにもしものことがあった、僕も嫌だし……遠くから支援出来る子って居たっけ?僕たちの存在に気付かせることなく、任務を遂行出来る子は……あぁ!あの子に頼んでみようよ!」
妙案が思いついたとばかりの満面の笑みで絢爛に微笑んで見せる猊下陛下の顔は晴れやかだ。
そして、あの子と呼ばれた軍部にいる人間とは……絢爛とは立場的に仲があまりよろしくない
「お呼びでしょうか……猊下陛下。何やら私の事を考えているなと、恐れ多くも感じまして、馳せ参じました」
そこで、何もない空間から現れたのは、海軍総司令官たる女…………
彼女の異能は【瞬間移動】と言う強力な物であり、物資の調達・運搬、人的物資の運用も彼女なしには語れないと言う御仁だ。
海軍と陸軍が仲が悪いと言うのは昔からのものであるが、絢爛と豪華個人のやり取りでは、気が合う様で、文通をしているほどの仲だと専らの噂である。
そんな彼女が、物資の運搬をしてくれるとなると、心強いものだと猊下陛下はお考えになる。
「豪華ちゃん、君の力が頼りになるよ!
「承知しました!この名和左大臣豪華が、天皇猊下陛下のご勅命賜りましたっ!今すぐに実行致します!」
ご機嫌の様子で、豪華に対して命令を下す天皇猊下陛下は、それはそれは…………
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