第弐話 おっぱいをでかくしなければ即死だった
叩きつけられる前に、おっぱいをデカくしてため無事だった模様。
うまく成功するかどうかが鬼門だったけど、どうやらロリ体型が固定じゃなかったとは思いもよらなかった。
胸部装甲の【強化】という、なんとも間抜けな方法で危機を回避したため、流石の悪の幹部らしき男でも面食らうようだ。
面食らう姿を見るのが楽しいが、俺は全く楽しくない。
ボコボコにされているなんてのは気分が悪い。っていうか、されっぱなしの自分に腹が立つというか、なんというか。
しかしながら、なんで胸部を【強化】なんて、概念的なものが強化できるようになったのか……これが分からない。
夢中になって敵を倒していったのが【強化】を強化する鍵だったのかと思うと、向かってきた奴らに感謝をしなければならないなぁ。
まさに無限の使い方ができるわけだから。
ほら、口を強化するみたいな感じで。
「あー、あーあーあーーーあー。俺は俺であるがために俺であるのだから、俺は俺である」
うんうん、発声もうまくいってるね。
あー、急に喋り始めたから、この悪の幹部らしき男の人が驚いてるじゃない。今真面目モードだからさ、ふざける暇がないんだけど……それでもこちらがふざけなければ無作法というもの。
だから目一杯ボコボコにしてからふざけることにするから、覚悟しとけよ?お前、俺を怒らせるなんていい度胸してるわぁ。
「お、お前、喋れたのか………………?」
「おいおい、一人称は”君”じゃなかったのかよ、三下野郎。化けの皮が剥がれてきたんじゃないのぉ?この研究所の塗装みたいに剥がれてるじゃないのぉ〜?」
「きっきききききききききききききき!!!!貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!もう怒った!そのまま叩きつけられて死ねぇぇぇぇぇえええ!!!」
相手が癇癪を起こすと同時に、自分が駆け出す。
あいつのタネがわかれば、仕掛けも自ずと見えるというもの。相手が癇癪持ちで助かったぜぇ。流石の俺でも、解決の糸口が見当たらなかったら
あ、そんなこと言っている間に、相手の体の周りにある空気のバリアを突き抜けるように、風を纏わせながら自身の拳を振り上げると、風が逆に巻いて、悪の組織の幹部らしき男の腹を傷つけながら拳がモロに直撃する。
「がはっ!?…………ゔぉっぇ?!………………なんで、なんでなんでなんでなんでなんで!なんで俺の異能がわかったんだよぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!」
「最初に感じた違和感から、お前のさっきの言葉の発言から読んだ。なぜ当たらなかったのか、それは風による受け流しがあったからだ。お前の異能は【風を操る】異能だろ?あとは簡単だ。自分の指を唾液で濡らしておいて、拳を振り上げて風の方向を感じた後に、その風とは別の方向から風を引き起こしてから、テメェの土手っ腹に殺意を込めて拳を撃ち抜く。タネがわかれば仕掛けなんてないも同然だよな?」
「ひ、ひぇ……いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいゃだいゃゃだぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああ!!!!まだ死にたくない!死にたくなんてないよぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!!!助けて、たすけてよぉぉぉぉあぉぉあぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁあああああ!!!!!!」
あれま、発狂しだちゃった。
これ、悪の組織の幹部じゃないですねぇ。落ち着きがないし何より、悪の組織の幹部には幹部なりの美学があると思うんだよね。
こいつの登場の仕方って、周りの奴ら全部犠牲にしてから自分が登場してきたもんだから、自分が目立ちたいだけの、承認欲求の塊のような奴じゃねぇか。
他の人間を見捨てて自分だけ助かろうとするなんて………………………………。
「恥を知れ」
せめて一瞬でも苦しまないように、鼠蹊部を完全に叩き折って絶命させた。
よく見たら体が痩せ細っているため、この施設に飼われていた囚人であることが窺える。
他の人間よりも強かったもんだから、自分は最強なのだという強い自意識が生まれてきてしまったのかもしれないなぁ。
俺も自分のことを最強だなんだと考えては見るが、自分が強いだなんてことを思えば思うほどに感覚が鈍ってしまう。自分は最強ではなく最弱だと思っていたほうが、心持ちは楽なのかもしれないなぁ。
沸騰した頭の温度が急に冷めていくのを感じ始めて、口を動かすのもしんどくなってくる。
普段から動かしていない筋肉だったためか、表情筋が痙攣し始めてきた。そのピクピクと引き攣った頬が貧乏揺すりを始めて、俺の頬をリズミカルに揺らしてくる。
それ、なんで状況?って自分でも思いながらも、前を向かって歩き出していく。
このまま人に出会ってしまったら、確実に不審者だと思われないか心配になってきたなぁ。あっ、この施設にいる奴全員犯罪者だったわ!
相手も不審者なら、こっちが不審者だって思われるのも、また一興だよね!
おっぱいも不自然なぐらい痙攣してるから……側から見たら、ロリの体型に不釣り合いなデカいメガトンおっぱいが揺れていて、頬を痙攣させているトンデモやばい奴みたいに見えるのではないか……!?
流石にこんなところを知り合いに見られたらまずいから、【強化】を解除しないといけない。散々な目に遭う前に、おっぱいだけは解除して…………頬の貧乏揺りはまた後で回せばいいや。
表情筋なんてあってないようなもんだし?別に痛くも痒くもないっていうか?そんなんで驚かれても不可抗力っていうか?兎に角俺は悪くねぇ!悪くねぇぞ!先生がやれって言ったんだ!
「………………………………え?」
「…………………………………………ぇ?」
なんか、白衣を着てる女性の人に会いましたっ!
即気絶したけどね☆
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華恋は自身の姿を全く見ていなかった。
自身の姿など、今の環境では気にする必要などないからだ。
デパートに何かを買いに来た人間が、血みどろだったら流石に二度見の一つや二つするだろうが、今は戦場の中にある。そんな状況で身なりを気にするほうがおかしいのだ。
しかしながら、痙攣した口が笑っている表情に見えた少女が、血みどろの服で急に現れたら、どんなに心臓の強い人間でも、秒殺ノックアウトであろう。
「………………………………………………あれ、倒れた……………………」
不思議そうな顔で見る華恋は血化粧をしているため、ホラーでしかない。
そして精神の箍が外れている華恋は、ホラー映画よりもホラーだった。
倒れた白衣を着た人間を、すぐに組織の人間だと断じて、首を刎ねた。
戦場では、誰よりも信用するのは、自分自身だけなのだ。自分自身の感覚や考え方を疑ったら、全てが終わるという状況下において、疑わしきは罰するということをしていかないと、味方だと思ったのが実は敵でした!なんていう状況は笑えないのである。
非情とも取れる判断をすぐにできるのは、基本的に他人のことは信用していない華恋だったからこそできる芸当である。
戦火に身を置いていなかった一般人が急にできるようになるというのもおかしな話だ。
「……………………ごめん…………………………言い、訳…………………………しない………………」
華恋は、人をいたぶるのが好きではない。
殺すなら確実に息の根を止めるというのが彼女の流儀だ。
彼女が今言った通り、自分に嘘はつかない。相手にも嘘はつかない。
ただただ、事実がそこにあるだけなのだと、命を奪った者たちへ手を合わせながら、場所を後にする。
ダンジョンのようになっているこの研究所の最初の部分でしかないここを、突破したら…………………………模造の海が広がっており、華恋の表情筋は
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