第参話 Bボタンが効かない

「この学園に入ると良いこともあるのだよ。聞いてくれるね?」


「はい  

 いいえ←」


 ここはやっぱりBボタン連打でしょ。

 常日頃から親指だけは鍛えてたからねぇ。ブラック企業に勤める傍らにこんなことしてるなんて碌な人間じゃないな俺。しかも親指だけ鍛えるって何してるんだよと言われるかもしれないが、普通にゲームしてました^^。


「この学園に入るといいこともあるのだよ。聞いてくれるね?」


 寸分すんぶんたがわず同じこと言ってきたんだけどぉ!?これRPGの世界じゃないよね?!王様に「おぉ、勇者よ……死んでしまうとは情けない」とか、国の命運を分つ様なことをしてる奴に対して罵倒すんな!って毎回思ってたんですけど?

 これがRPGだったら、誰かに……上位存在に見られてる…………ってこと!?

 これはちょっと怖くなってきたんだけど……壊れかけのレディオやんけ。

 はぁ、なんか聞くのが嫌なんだけど、聞かないと話進まない気がしてきちゃったし、何度もローラ姫押し付けられるの嫌だなぁ。

「いえいえ、そんなこと言わず!」みたいなこと一生言ってきそうじゃん?だから、俺の選択肢はほぼないに等しい者であったというのは間違いない。


「……………………はい」


「それは良かった!異能学園に転入することで得られる金額があるんだ」


 苦渋の決断をした後に金額の話とかされても、俺の心は懐柔なんてされないんだからね?!意味ないんだから、あんたになんか興味ないんだからね?!(中身アラサーのおっさんのツンデレはキモイだけ)

 しかし…………お金がもらえるんですか(ゲス顔)。とりあえず、後学のために全額いただくのは確定として……話を進めていきましょう(ニッコリ)。

 いや、本当に転入しただけで、しかもタダでもらえるというのが、俺がブラック企業勤めだったこともあり…………それがいかに大切かが分かる。それだけがブラック企業に勤めて良かったと思う点である。

 虚しいなぁ。争いは何も生まないというのに、お金というのはそれだけで争いの火種になってしまうというのですね…………おぉ、救世主メシアよ。

 どれだけもらえるかによって、自身の態度を改める必要がありますねぇ、これは。やはり人間の心を簡単に動かすのはお金なんですよ!生きるに金のかかる種族ですのでね、やはりそこら辺は動物の社会とは異なる点だ。


「その額…………10億円」


「…………………………10億円」


 莫大な金が手に入りそうで、目が眩む俺氏。

 いやいやいやいやいや、これは入ってもいいんじゃねーの?確定で入る決定だろこれは。

 そうして、俺はこの学園に入ることが決定したわけである。

 俺は……初めから快く快諾するつもりでしたがぁ〜?この金額をご提示いただけるのであれば、さらに

 快諾したと同時に、俺はこの病院の謎めいた地下に連れていかれる。一瞬莫大な金額を手に入れたことによる、監禁生活が始まるのかなとも思ったが、そんなことはなく…………。

 地下に連れて行かれるのは、俺の異能を判別するためということだった。説明を受けなかったら、普通に逃げ出しているシチュエーションなので、早めに言ってもらえて助かったわ〜。

 そうであるのならば!厨二病だった一人の男として気になりはするよなぁ?普通に考えて。…………自身の能力が高い者であれば、もっと厨二心が昂るぅ!

 最初はね、異能って聞いて「どうしよう?!」って慌てふためくだけだったんですが、その焦りと慌てることがなくなると、今度は憧れの方が強くなってくるのですよ。自分、この能力ほんとに使っていいの〜?って、子どもみたいに何度も確認してしまうな(天使の微笑み)。

 人間って生き物は、なんて現金なんでしょうかねぇ?…………あぁ、転入する条件としてお金ももらったから、本当に二つの意味で現金主義ですわ。

 その地下の謎めいた施設の中には異能を判別するような装置(これも国家重要機密だと言う代物)に連れていかれて、手をかざすように指示をされる。国家機密しかない場所とかあったりするだろ。

 このかん、俺は目隠しをされた状態でここにいるため、装置の形などは不明瞭で、一体自分が何に触っているのかは分からない。

 異能に目覚めたって言うことを…………この異能と言う存在をそこまで世に知らしめたくないと言うことかなぁ。秘密事項が多すぎて、覚えるのが難しくなっちゃったから、頭働かせたくないめぅ。

 とりあえず考察は尽きないんですが、この連れてきた人の指示には従順になって、言葉にも従っとくことにしよう。


「そう、そこです。そこに手を触れて念じてみてください。自分の中にある異能というものがイメージとなってこの所に現れます」


 手を置いて、イメージ……イメージ…………イメージ?

 厨二病心全開で行くぜぇ!!

 うぉぉぉぉぉぉぉぉあぉぉぉおおおおおおおおおおおお!と、かっこよく力んでみるが、亀たちの波は出てこないし、特にこれといった自己の変化もない。俺は野菜人では無かった…………?

 野菜人では無かったが、仮想敵国に勝利したイメージをしてなんとかこの場を切り抜けていく。


「…………!?これは、もの凄い……ですね。貴女の才能はまさしくこの世に轟くものだ。こちらでも制御できるかどうかわからない……」


 どうやら、すごい異能を手に入れたらしい。

 何でも、この世に轟くほどのものとかで、全てを変える力を持つと言う……。

 どう言うことよ……これぇ?

 端的に説明するとするならば、異能とは才能であり、自分の体の一部であるとも言える。

 そんなものが強く、さらに強力であるのならばそれはもう凄いことで全てを【強化】する異能と言って差し支えない。

 俺の異能は文字通り色々なところを【強化】する異能らしかった。

 身体能力を強化、筋力を強化、頭脳を強化、強化……強化……強化か。そう考えてみると、無限の可能性が出てくるし幅も広がってくる。

 なんか、名実共に最強の称号を手にすることに相なったんですが…………ご都合主義展開もいいとこじゃね?

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