第弐話 俺は……入学ぅ!?

 この病院のセンセイらしき人が入ってくると、事態は収束……するはずないんだよなぁ。

 整体検査とかされて、体をいじくり回して捕縛される未来しか見えないんだけど、何か文句ある?

 これさ……絶望的な状況なのでは?何で俺こんなことに巻き込まれてるわけ?

 素直に異世界転生とかさ、させてくれないの神様ぁ!

 神はいなかったのか……そうですか。

 こうなったら自力で生きるしかないなんて、突拍子もないこと思い始めるけど、どうなんのよこれ。

 まるで地獄だが?元男の女とか、忌むべきものとして見られるに決まってんじゃん。

 しかも開口一番になんて言われたと思う?


「君には異能が目覚めたと思ってもらってもいい」


 とか抜かしやがるわけよ!頭沸いてんじゃねぇのかな、このヤブ医者がペッ!

 そんなのなぁ!異世界転生したらぁ、素直に受けてやってもいいんだけどさぁ!

 現代日本らしい技術だし、これ中世の技術とか言われても信じないわけよ!

 服とかも科学技術の発展の上で大事な要素だよ、ホムンクルスとかが服着てるなんて事あり得るわけないじゃん!

 いきなり異能とか言われてもさぁ、信じれないよねぇ?普通に考えて!


「…………?」


 そりゃこんな反応もするでしょ。

 普通だったらありえないことが起きるなんて、この体の変化で十分だっての!

 俺は一杯一杯なわけさ!

 いきなりのことを全部が全部「はいそうですか」なんて肯定できるとでも…………あ、ブラック企業勤めの時全部「Yes」だったわ。

 あー、そう考えると俺はYesマンだわぁ〜、辛いわぁ〜。

 断れない仕事は数知れず、やり切れない仕事も数知れず、ずっと一辺倒にやっても叩かれて、平凡でいい人生だったけど、それでも誰かには常に馬鹿にされる毎日。何だろう、ちょっと涙出てきたからやめようかなこの話。

 いつまでもYesだけが人生ではないのだよ。Noと言える日本人になろうねっ!日本男児であるならば、それぐらいのこと……日本女児になったけどさ。

 これからは攻め立てられてもNoと言おう。

 差し当たってはこの異能とかいう意味わかんないのをNoと言う日本人になりますか。


「落ち着いて聞いてほしい。君は刺されて異能に目覚めたんだ。異能というのは自分の身に危機が降りかかる時に発動される。そして、異能を発現させた者は皆政府によって危篤視されて秘匿させられる。君が普段のような生活をすることはできない……というわけだ」


 絶対にNoと言えない問題を出されるのはちょっと違うんじゃないかなぁ!?

 これは予想だにしていたけれど、まさかそんなにも重要な、国家機密並みのものだったとは……。ああ、これは逃げることが容易ではないということは現実だろう。

 これがクソゲーって奴なんですかそうですか。控えめに言って最悪だ。

 これをクソゲーと言わずして何と言うのよ!


「そしてそう言ったものは稀にだがTSする。その確率は天文学的数字だ。あーだこーだしてこーだあーだと言うわけなんだよ。君は【大日本帝国第一王朝異能学園】というところに転入してもらうことになる。分かってくれるね?」


 分かってくれるね?じゃねーよ!俺の意思どうしたぁ!?

 あ、意思は須く消されるんでしたね。

 普通に生きた場合ってどうなるか聞こうかな。

 その答え次第によっては別に転入しなくてもいいってことになったりしないかなぁ?

 そんなご都合展開期待しちゃったりするなぁ〜?


「もし、普通の生活を送りたい場合なら、それは不可能だと言っていい。そもそもが秘匿されている国家機密故に、ここの場所すらも秘匿対象だ。良くて生体実験の材料にされるのが関の山と言ったところだろう」


 終わったわ、俺の人生。

 もしかして、俺……入学ぅ!?

 免れはしないっぽいから、なんかトイレにこもって1・2時間サボってきてもいいですか?

 あ、だめですかそうですか。

 ああ、これが不運と言わずして何というのだろう。

 最悪なことにも、お膳立てはされているっぽいし、こんなことになるなら、普通に刺されずにそのまま死んだほうが何倍もよかったという、刺されて死ぬか転生するかの選択肢は二つだけだったろうに、生きてしまったが故にこんな奥深い秘密を知らずに済んだのかも知れないのに、普通のサラリーマンにとっては辛いことこの上ないっすよぉ〜!!

 ……本当に勘弁して……?

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