第16話ショタを自由にさせてはいけません


 ふっ、ショタは満足です。

 おもしろおかしい人生はこれからだ!ショタの次回作をお待ちください。

 おっと、自分の仕事が完璧すぎて物語を終えそうになってしまった。


 俺の左手の先には婚約者のグリエダさんがいる。

 俺がデザインしたドレスを着てくれていた。

 この国がある地域の流行りのフリルや色とりどりの柄入り生地、パラソルのように膨らんだスカート、権力を持ってますと言わんばかりのゴテゴテのアクセサリー。

 それら全てに喧嘩を売ってみたらハリウッド女優が着てそうなドレスになってしまいました。


 血より深い紅のドレスをその身に纏う彼女は美しいの一言に尽きる。

 男装していた時には誰も見られなかったその身体のラインが浮かび上がり、コルセット着用や詰め物する今までのドレスとは一線を画している。

 いつもは結っているか軽くリボンで纏めている銀髪を、今は光り流れ落ちる水のように垂らしている。


 クックックッ、男共はリビドーマックス!そして女性達は己の体形と見比べて大ジェラシーッ!

 ショタは背景にもなれませんでした。

 三人メイドがグリエダさんドレスに隠れて俺のタキシードも作っていたのに出オチのみ・・・。

 時間的にありえない速度で二着作った変人共は本当に真っ白に燃え尽きていたよ。

 それでも、絵師を、絵師を呼んでお二人の姿をぉ~!と叫び続けていたから大丈夫。


 王城の廊下を誘導係に従って歩いているのだけど何度も曲がるところを間違っているの。チラチラこちらを見ないで案内に集中するのだっ!

 あ、グリエダさん、そんな密着しようとしないでください。

 綺麗なお顔がショタの身長だと間を取らないと二つのお山で見えなくなるの。


 う~ん、グリエダさんはマジでスタイル良すぎない?

 前面と後面で反対なのよ。

 ドッカーンとお山があってその後は美しい丘陵で、背面はそれが下から上になのだ。

 銀髪で隠せているけど実は背中が腰まで全開、広がらないようにレースで覆っているが、それがまたヤバし。

 覇王様が女王様になってしまいました。

 エロいのだけど美しい芸術を見ているようでもあり、男性陣達の脳みそはどちらを優先すべきかで混乱している模様。

 欲望まる出しで手を出そうとすれば死ぬので良かったかもしれない。

 肉体的にはグリエダさんからで、精神と社会的には俺が死なせてあげよう。ブラジャーを販売している店で○○様が大変興奮なされた下着ですと噂を流してやるのだ。

 独身なら嫁が来なくなり、嫁がいるなら家での居心地が悪くなるぞ、あと貴族社会でも。


「こら、悪い顔をしているぞ」

「む、していませんよ。ただグリエダさんを襲おうとしようとする輩がいたらどうやって制裁しようかなと考えていただけです」


 ムニムニと頬っぺたを摘ままれる。

 この身体の頬っぺたはつき立てのお餅並みに柔らかいのが自慢だ。


「ん~、もしかして嫉妬してくれているのかい?」

「見るのはグリエダさんが美しいし、僕が自慢したかったのもあるので我慢しますが、手を出そうとしたら嫉妬どころではすみませんよ」


 俺の顔を覗き込むグリエダさんの顔がその言葉に驚き、内容を噛みしめたのか、ドレスと白い肌に合わせた紅をさした唇がニマーと口角を上げていく。

 恥ずかしくないよ?

 こういうのは正直な方が相手は喜んでくれると学んでいる中身のオッサンだ。言わない方が格好いいと思っている男共よ、それは悪手だ。


「好きな男にそう言われるのは嬉しいね」


 そして握っていた手を離して改めて俺の腕を取り、組んでくるグリエダさん。

 無理があり過ぎるので引き寄せられてお山に頭がフニョン。

 心の中のオッサンが瞬間で自分の顎を打ってセルフ気絶、グリエダさんと一緒にいるようになって習得したマインドコントロールだ。


「無理です。身長差がありますよ」

「男の子だろ?少しは私の為に頑張ってくれよ」


 いつも俺に甘々な彼女からの珍しいおねだりには男として頑張らなければならないだろう。

 大丈夫っ、俺には魔力という不思議動力があるのだっ。

 グリエダさんの魔力使いとして才能がずば抜けていたので、ちょっと検査させてもらった。

 そのおかげで俺の身体能力強化は1.2倍から1.23倍に増えた。

 そしてロンブル翁は石を投げる距離がさらに伸びた。

 おのれー若作りジジイめー。


 その1.23倍の身体能力を今こそ使うべきっ!


「ふぬっ」


 俺の身長が伸びる。

 つま先立ちになっただけだが、ギリギリお山に寄り掛からないですむようになった。


「頑張れセルフィル君、女の子のパートナーをすることはあっても女の子として扱われたことが無かったから。うん、これは良いものだね」

「それは地味に悲しい過去話ですよ、グリエダさん・・・」


 まったく、この世界の男共は何をやっていたんだ。こんな美女を放っておくなんて・・・いや、そのおかげで俺が婚約者になれたのだからグッジョブだ、見る目の無い男共よ。


 ところで誘導係の人、あとどのくらいで部屋に着きますか?

 俺の身体強化は全力で使用すると約5分で終了なの。そしてその後、十分は動けなくなるのでハリーッ!


 なんとか一分残して到着した。

 俺が誘導係の背中に念を飛ばしたのが良かったみたいだ。

 グリエダさん、ショタの頑張りで数分間だけだがご機嫌だった。

 あと数年待ってくれたら身長も伸びて釣り合うぐらいにはなるだろうから期待して欲しい。

 ・・・伸びるよね身長。


「たしか義兄殿とアリシア様と一緒の部屋だったね」

「そうですよ?」


 扉の前でなぜか緊張しているグリエダさん。


「いや、どうでもいい連中は大丈夫だったがお二人、とくに義兄殿とは何度も会話しているから、羞恥が今さらながらに湧いてきた」


 彼女は頬を赤らめながら身をよじる。

 うん、チョーカワエーッ!

 なにっ?覇王様オーラが完全に無くなった照れるグリエダさんが可愛すぎるっ。

 周囲はっ!よしっ誰もいないな。

 このグリエダさんは俺だけのものだっ。

 いやっふぅぅうっ!

 覇王様は何度もドキドキさせてくれるぜっ。


「セルフィル君?」


 おっと、心の草原でショタとオッサンがマイムマイムを踊っていたよ。

 オッサンは笑顔でセルフ顎打ち、人の字の形に寝かせてショタは現世に戻ってきた。


「大丈夫ですよ。そのドレスはもの凄くグリエダさんに似合っていますので見せつけてください」


 ギュッと彼女を抱きしめる。

 まあ差があり過ぎるから顔がおへそより少し上、前頭部がお山にめり込むのは勘弁してほしい。


「ん、そうかな?」


 少しビクッと身体が震えたけどグリエダさんも腕を俺の背に回してくれる。


「ええ、完璧すぎて僕が目立たないぐらいですから。こう見えてもご婦人には大人気になると思っていたのに、グリエダさんに全員目を奪われていましたからね」

「それはよかった。君は私のモノなのだからあまり見られたくない」


 覇王様は束縛系と。


「長兄も男なのでしょうがないとは思いますが、目に余るようなら僕が制裁しますので許してあげてくださいね」

「いや、そこまでする必要はないよ?ちなみに何をするつもりなのかな」

「アリシア様がいらっしゃるので、子供の頃に(水浴びの為に)長兄に裸にされたんですけどどうして剥かれたんでしょうか?と尋ねるだけです」

「まて、それは義兄殿の未来が凄いことになるから止めてあげてくれ」


 え~、少しぐらい家庭にスリルがあった方が面白くないですか。

 声から恥ずかしさは感じなくなったからもう大丈夫かな。

 でももう少し、男装の時とは全然違う感触をもう少し味わおう。

 オッサンは眠っているから大丈夫っ。


 ガチャ。


「おいセルフィル、部屋の前で何を・・・」

「「あ」」


 グリエダさんとイチャついていたらドアが開いて長兄が目の前に現れた。

 長兄の目が俺を見たあと抱き合っているグリエダさんを見る。


 上から下まで視線が移動した。

 そして長兄はスーと膝立ちになり、正座に移行。

 そのまま上半身を折り曲げて頭を床に擦りつけ、両手は頭部の先に指を真っすぐ綺麗に整えて置いた。


「アレスト女辺境伯、私の弟が本当に申し訳ないことを」

「バルト様っ!?」

「バルト殿っ!?」


 長兄、土下座はハイブルク家でしか通用しませんよ。

 あと部屋にいるオッサンは誰?



ーーーーーーーー

セルフィル「触れるのは僕だけです!」

グリエダ「そうだね(侍女達には裸も見られているけど)」


サッカーのせいでイチャイチャになっちゃった♪(*´ω`*)

グリエダさんは城の中で男達の視線集めまくりの罪な女王様になりました\(^o^)/

手を出したら死にますが(;´д`)

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