第7話ショタを甘く見るなよっ!
自分の現状を確認したらそこそこ危ないということがわかって、気を引き締めて生活するようになった。
学園ではぼっちなので、無意識に一人になるような場所に行くのを抑え、人が多い場所の端にいるようにし。昼になったらグリエダさんとの待ち合わせ場所にダッシュ。
転生してから前公爵夫人を味方につけるまでよくメイドと執事に襲われかけていたのは伊達じゃないのよ。
すぐそばの身の危機を察知するのはショタの基本能力です。
まさか幼少期の嫌な思い出が役に立つとは、何事も経験なのかもしれない。
何度か男子生徒に付け狙われたのはやはり報復の対象にされているんだろうな。ハイブルク家は大きすぎて報復したら反撃が凄いことになるから怖くてできないから、一番弱いショタを狙ってきたんだろう。
しかし甘いっ!
ひ弱なショタは自分の特性を把握しているのだ。
目立つ時は周囲の目があるから手出しは出来ないし、移動時を狙ってきても人混みの多い所を小さな体でスイスイと通れば撒くことなんて楽勝である。
気配なんてハイブルク家の変態メイドや変態執事に比べたらまるわかりよ。
ただ、なぜか侍女長の気配だけはわからない。イタズラしたときには背後に突然出現するレイドボスなのです。
あとはグリエダさんの所にいれば超安全。
王へと至る道を本当に作れる人のそばはゆっくりできるので、ショタを狙っている連中と、グリエダさんが不審と思われる奴を挙げてもらい、昼食後はそいつらを見ながら似顔絵を描き描きするのが最近の日課だ。
グリエダさんに褒められたから似ているだろう。
あとはこれを長兄に渡せば、数日後にはいなくなるお手軽後始末。
ぼっちにはなかなか刺激的で面白くなってきたよ。
派閥が違う同級生たちの謎の自主退学が続いて、ハイブルク家にすり寄っておかないと、とようやく思い始めた寄子の子供達が最近になって少しずつ戻ってきた。
でも友達じゃなく取り巻きなので俺のぼっちは未だ続行中。授業の間の短い休み時間の壁代わりぐらいの役には立っているが。
「う~ん、やはりヘレナ側妃のとこが多いですね」
「私の分も重なっているからかな?」
長兄から貰った紙には自主退学された生徒達の家と派閥のことが書かれていた。
その半数が側妃派閥のところという面白い結果が出ている。
他は元宰相達のところから数名、こちらは寄親が恥をかかされたと思い込んだ連中が勝手に動いていたみたいだった。
元宰相達の派閥の生徒は俺に恥をかかせてやれぐらいの気持ちの連中が大体で、親の方から注意を受けて大人しくなっていた。辞めた連中は調査をしたらその親にも問題があって、元宰相達にこちらの三家から注意勧告したことに起因していた。
「このままだと側妃派は瓦解しそうな勢いですが」
「権力にすり寄る愚か者は後を絶たないからそう簡単には潰れないよ」
「一匹見つけたら十匹ですか」
「百匹ぐらいで考えた方がいいね」
繁殖するから根絶は難しいと言う事らしい。ゴマすりで高い地位を貰えるなら派閥を鞍替えする連中は多そうだ。
歴史を見れば数世代、悪ければ自分達の代で滅ぶのがわかるのに同じことをしているのが理解できない。
学園、歴史を英雄譚みたいな部分ばかりじゃなくて、ドロドロしたところもちゃんと教えろよ。それだけで少しは国力が上がると思うぞ。
ハイブルク家では俺が面白おかしく地球のダメな統治方法を教えたから大丈夫。始皇帝、三国志は兄弟たちには大人気だった。なのでその裏のドロドロ部分も教えてトラウマにしてあげたよ。
趙高、呂雉、董卓、呂布、参考になる人がいっぱいいるから躾けに歴史は超便利です。信長、秀吉、家康も入れてあげたよ。
ゴマすり、身内だけで運営できるのは小規模だけ、国規模は地獄がこの世に現れるので要注意。
でも前公爵夫人には江戸幕府のことを詳しく聞かれたんだよな。一応成功例だけど島国だからこそ出来たことで・・・この国要所を固めれば鎖国が出来そうだ。うん、黙っておこう。
「王家派閥は沈黙ですか」
「私を知っていて動いたら勇気があるなと褒めてあげたいね」
自分のところのトップの首が常時落とされるリーチ状態では動けないだろうね。
それでも動く側妃派、脳みそはちゃんと持っているのか?
あ~、虫だから短期間では学習できないんだな。
ゴマすり親の子供たちだから貴族意識が高いだけの間抜けばかり。自分は次期子爵だぞ三男ごときが、と大勢の生徒の面前で宣言した奴は流石にハイブルク家の寄子が取り押さえたよ。
三男だけど公爵の三男というのを理解していないのかな?学園の教師達にはその辺りをしっかり教えてもらいたいものだ。
「これで偵察部隊はだいたい終わりかな」
「酷い言い方ですよ。せめて先陣を切ったとか言ってあげないと」
今まで俺達にちょっかいを出してきたのは下級貴族達だけだ。伯爵より上は出てきてもいない。
あ、側妃の実家は自分の寄子になにしてんだとハイブルク、アレスト両家に抗議してきたよ。普通は見捨てると思うのに怪我をした、誇りを傷つけられたとか言って金銭を要求してきた。
凄いね側妃派、あれだね愚王から無能を下賜されたんだな。うつりそうだから近寄らないようにしておこう。
ここ二、三日は直接狙ってくる者はいなくなった。
地位が高い連中ほど自分の手を汚したがらない。下の者を使い、それでもしぶとく生き残るのを見てやっと腰を上げるのである。
ある意味これからが婚約破棄の影響の本番だろう。
なので気を引き締めて。
「じゃあ、どこに行きましょうか」
「ん~、君はどういうのを見ているんだい?」
気晴らしに遊びに出掛けることにした。
学園からのご退場者リストを横に追いやって、二人で見るのは劇場の演目のリストだ。お付きの三人メイドにお願いしたら王都の全ての劇場を調べ上げてくれたよ。
毎朝三人メイドに倒されるショタを狙う変態執事のアレハンドロはなぜか賭け闘技場を調べてきたが、主人である俺をどこに行かせたいのだろうか。
学園で害をなす者が少なくなった今は、グリエダさんとの婚約期間を楽しみたいのだ。
ぶっちゃけるとヘレナ側妃の派閥の子供達がかなりの人数いなくなったので、直接的な危害を加えられる可能性がかなり低いと判断したからだ。
別に学生の嫌味や物を隠されるとかぐらいなら全然平気なの。
だって前世はオッサンなのよ。そのくらい取引先の嫌味を何時間も聞かされたり、もっと金額を抑えてくれと、既に限界まで低くしていると訴えても無視されたり・・・フフフ。
貴族の言葉には裏がある?ブラックが大半の日本企業をなめんなやこらぁ!
ハイブルク公爵領では口約束なんて許されません。重要な事柄は契約書を作って、控えをその土地の貴族が保管するようになっています。その貴族が不正をした場合は下手すると家族全員で奴隷身分行きになるのです。
大丈夫、公正であればホワイトなハイブルク公爵領です。今なら空いた土地がありますのでお役人として働きたい人は是非とも来てください。
一年お勉強をして三回ほど面接と試験をしたら安定したお給料を払いますので。縁故、裏金は出来るものならやってみてください。成功したならそのまま採用で、でも働いて無能なら容赦なくクビですから。
ハイブルク公爵領で一番人気の職業はお役人なのよ。平民でもやる気と才能が有れば採用するから。
おっと前世のトラウマが出てきてしまった。
まあそれなりに危険が少なくなったからグリエダさんとお出かけに行くことにしたのだ。
転生して初のデー・・・トではありませんでした。
ごめんなさい、すでに前公爵夫人と前公爵第一側室レアノ様とデートしてます。母と姉は血が繋がっているのでノーカンで。
お二人も恋仲ではないから違うということにしよう。
「そうですね、僕も最近は行ってないですけど定番のは見ていますね」
「じゃあそれ以外だ。あと愛憎と小難しいのは除いて」
三人メイド達はタイトルと簡単な解説を書いてくれているので知らない作品でも除外しやすかった。
「悲恋はいいんですか?」
「あれはあれで良いものがあるからね。こう見えても恋愛ものは好きだよ」
わかってますよ~、可愛いモノ好きのショタ好きさんですからそちらもいけるかなとは思っていました。
ギャップがあるグリエダさん、グッ!ですっ。
笑える系も最初のデートでは排除と。
なんか二人で話し合って決めるの楽しいな。
これは愚王と第一王子に感謝しなければならないな。神様は信じていないが今後は裏目様に祈りを捧げよう。
どうか王家の裏目が俺達の幸せに繋がりますように。
一週間の間にかかる演目をチョイスしてもらったが愛憎系が多い。ハッピーエンドはあまりないな。
ううむ、ここはどれにすればグリエダさんは喜んでくれるのか・・・。
「悩んでいるが、どれ」
「あっ」
演目を見ていたらヒョイと紙をグリエダさんに取られた。
「これとこれは日にちが遅すぎる。こっちは間がただ引き延ばすだけで面白くなかった」
ペンも取られてグリエダさんは残った演目に線を引いていく。迷いなく引かれる線は真っすぐだった。
「よし、これだな。三日後の午後。悲恋系だが演目名が気に入った」
「・・・あれ?」
グリエダさんが気に入った演目どこかで見たような・・・じゃなくてがっつりあるよ!
「覇王と別れの美姫、なにか私達に合っていると思うね」
「ええ、合いそうですよね」
項羽と虞姫じゃないかっ!
誰だ、ハイブルク家の情報を売った奴はっ!・・・レアノ様だろうな、あの人、歴史の恋愛モノをよく聞いてきたもの。巴御前と静御前とか。
レアノ様から著作権料取れるな俺、次会った時にお小遣いをもらおう。
しかし覇王別姫か~。完全に覇王はグリエダさんで虞姫は俺だよね。
ま、グリエダさんが楽しみにしているからいいか。
ーーーーーーーー
グリエダ「一人ぐらいは私の方にも来てほしかったな」
セルフィル「いくら間抜けでも覇王の気配をただ寄せていたら逃げますって」
前哨戦は回一つで終了~( ̄▽ ̄;)
ショタはすばしっこいのです。変態達から逃げないといけないので(*´∀`)
さあ次こそは普通の日常回ですっ!(^-^)
筆者を信じたらダメですよ、寝たら忘れますから(ノ´∀`*)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます