アンラッキー777

夏伐

粗大ごみやろうめ

 ギャリギャリギャリギャリバッキャ――――ン!!!!


 筐体がより一層大きな音を立てて、画面の手前の飾りが画面をガッシャーンと覆う。

 よく理解できていない俺の肩を揺らして、隣に座っていた友人が大げさに喜んでいる。

 画面には7と7と7が並んで光っている。


「やったなーーー!!! 今日は飯をおごれよ!!!」

「なんで俺が当たった?のにお前におごるんだよ」

「俺は負けて、お前は勝ったからだよ。そういうもんなの! それがスロってもんだろ~?」


 パチスロはよく分からないままだが、流れ続けるコインを眺める。

 たしかに友人は、俺が勝ったらステーキをおごってやる、と言っていた。


 勝ったところで、俺はスロをやめることにした。

 友人はもっと勝てるから、と俺がどいた席にどかっと座りこんだ。


「じゃあ換金?してくるから」

「換金じゃないって!」

「?」


「なんか近くの質屋で換金してくれるボールペンがあるわけ、換金って言っても交換してもらえねぇぜ?」


 意味が分からないが、それならそうなのだろう。

 俺はパチ屋の受付へメダルを持ち込みに友人に背を向けた。


「飯屋でカツ丼でも食ってて~」

「わかったわかった」


 友人の言葉に適当に返事をすると、後ろからまたギャギャギャギャと大当たりの音がする。

 この調子なら、ここへ来る前に彼に貸した一万円と約束のステーキをおごってもらえるだろう。少しほっとした。


 ☆


 俺が謎のボールペンをポケットに入れてカツ丼を食べていると、友人が青ざめた顔でやってきた。


「負けた……」

「は?」

「マイナスの5万だ……」


 軍資金を貸してくれと言われて、大学の構内で土下座されしぶしぶ貸したのは一万。残り四万はどこから出てきたんだ?


「三万はどっこから出てきた? それと俺が貸した一万はどうなる?」

「お前に借りた一万もそうだし、山崎に借りた2万も、寺岡に借りた一万も溶けちまった……」

「あの二人は土下座されたってパチに使う金を貸してくれるとは思えないんだけど」

「生活費と借金返済って言って借りた……」


 こいつ本当にどうしようもないやつだな……。

 俺は呆れつつも、ポケットに入れたボールペンを友人に見せた。


 途端に、やつは顔をキラキラと輝かせる。


 友人に言われるまま、質屋でボールペンを買い取ってもらうと、友人が横からかっさらうように金を受け取った。


「うおおおおお!!! たすかったよ!!!!」


 俺の手元に戻って来た金からは四万消えていた。


「せめて三万じゃないのか?」

「パチンコの紹介料ってことで勘弁してくれよ~!」


 その後、あぶく銭は使った方が良いと居酒屋を数軒巡るはめになった。俺の収支は返ってこない貸した一万、居酒屋の支払いオーバー分でマイナス2万だ。


 パチンコの777が表示されてラッキーだったが、となりにこいつがいるだけで全てアンラッキーに転じる、そのことに気づくべきだった。

 俺は酔いつぶれて眠る友人を粗大ごみ置き場に寝かせた。


 運が良ければ誰かが拾ってくれるだろうし、今は暖かくなってきたから死にはしないだろう。

 お前も運試ししてみれば良い。

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