第36話 猫にこんばんは
おかげさまで今は夫婦共々元気で暮らしているのだが、物忘れが気になる昨今、私は自分が認知症になるのではないかとひそかに恐れている。同じ物を何度も買って来て冷蔵庫が卵で満杯、食べたことを忘れてご飯!…という話を聞いていた夫が、さっき食べたばかりなのにご飯にしようって言われたら、俺、どうしようかな、食べちゃうかも…なんて笑いながら言っている。そのかたわらで私はひそかに、夫の分を用意せず自分だけでご飯をかきこむ姿が浮かび、ブルっとした。
そこで頭のトレーニングをしようと考えた。クロスワードの本でも買おうと思ったが、まずは「大きな字の脳活漢字ドリル」(※下記参照)という本を買った。なかなか良い。そして楽しい。現状では9割正解という打率の高さも楽しさにつながっている。できる人はできるから楽しいんだと、この齢になってようやく気がついた。
祇園精舎の鐘の声とか、まだあげ初めし前髪の…といった名文も出てくる。美しい日本語を学ぼうというコンセプトの高齢者向けのドリルだ。お勧めである。と言いながら、遊び心がムクムクと湧いてきた。こんな問題はどうだろう。
1.読解力 同じ言葉が反復して使われているが、状況を把握し意味を述べよ。
a. やばい、やばい、やばい、やば~い
(車で走っていると前方の空が消し炭色に。風の音が物凄い。
見上げると空に木片?トタン板?竜巻だ!…という状況)
解答例:怖い。かなりまずい状況。このまま走れない。引き返そう。
b. やばい、やばい、やばい、やば~い
(某タレントについて街頭インタビューを受けている二人組の女性。
彼のファンらしい。突然、ロケ車から本人が登場…という状況)
解答例:うわぁびっくりした。かっこいい。テレビよりずっと素敵。
逢えるなんて信じられない。私、大丈夫?髪乱れていない?
2.ことわざ 次のことわざを正しく直し意味を調べよ。
a. 猫にこんばんは 解答(猫に小判)
b. 馬の耳にねんど (馬の耳に念仏)
c. いたくもない腹をさされる (いたくもない腹を探られる)
d. 犬も歩けば足が棒になる (犬も歩けば棒にあたる)
e. 石橋をたたいてこわす (石橋をたたいて渡る)
f. さわらぬ神にたたられる (さわらぬ神にたたりなし)
g. ぬすっとおびただしい (盗人猛々しい)
h. 肉を切らせて骨も断たれた (肉を切らせて骨を断つ)
i. 人のうわさは伝言ゲーム (人のうわさも七十五日)
j. 1円を笑うものは10円で笑死にする (1円を笑うものは1円に泣く)
今宵は猫にこんばんはって言ってみよう。馬の耳に粘土を詰めたら可哀そう。痛くもない腹を刺されては救急車。犬だって長く歩けば足が棒になる。石橋を叩いて壊すのは大変。触らぬ神に…はまさに宗教戦争。戦争は何でもありになると祖母が言っていたが、盗人おびただしく骨まで断たれちゃかなわない。単なる噂が流言飛語、デマになるのも恐ろしい。太平の世にて10円で笑っていたい。
面白ことわざは、まだまだあるけどこの辺で。
お声をいただいたら又紹介します。遊び心で頭を鍛えましょ。
※「大きな字の脳活漢字ドリル 実践トレーニング60日」
東北大学 川島隆太教授 監修 株式会社白夜書房 出版
※面白ことわざは私どもが発案創作したものではなく、夫が見聞きし書き留めて
おいたものです。
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