第3話 好きなことってなんだっけ

 年末に仕事を辞めてから家にいる。だからWBCの決勝戦が平日だって困らない。朝からずっと観ていた。グッズを買うほどのファンではないが、野球は子どもの頃から当たり前のように観ていたから、自然と声が出る。手をたたく。夫と二人、立ち上がっての大騒ぎとなった。


 ひと息ついて、ふと思う。こんなに大きな声をあげたのは久し振り。目を見開いて手を組んで祈り、ワクワクドキドキした。


 最近、1日が早く終わる。老後生活の出発に真面目しか取り柄のない私は、きちんと生活しようと「やること」を決めた。同じ時間に起きる、1日3回、歯を磨く、散歩をする、書くために語彙の勉強、朗読、読書、映画を観る……。これがルーチンの作業になっていた。作業を終えて1日が終わる。あっという間に一週間が過ぎる。


 私の好きなことってなんだっけ。

書きたいんだよね。だから学ぼうって思ったんだよね。

老後の日々を大切に過ごしたいから、きちんと生活しようと思ったんだよね。

だけど、ワクワクしない。ルーチンワークをこなすだけになっていた。


 好きなことを見つけよう。

まずはルーチンのなかで自らに問いかけよう。本読むの好き? 書くの好き? 

意外にも朗読が楽しい。もしかしたら私、自分の声が好きかも。

散歩は楽しい。自分の感性で外界を見よう。

心の海の底もみよう。目をそらしてみていなかったんじゃない? 

書く技術よりも何を書きたいか、書きたいものをみつけること、じゃない?


 私の好きなことってなんだっけ。好きなことをやらせてあげよう。

WBCはまた3年後、3年後の私は…どうしているかな。

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