お悩み解決人はバディを探している

鹿嶋 雲丹

第1話 電話

リリリン、リリリン、リリリン、ガチャッ

「はい、お電話ありがとうございます。たすけ、担当、兎型うさぎがたリタです」

 うっわ、久しぶりに電話なんか受けたから、声がめちゃくちゃよそ行き仕様になってる……我ながら演技派だなあ……うふふ……

「あ……あの……チラシ……」

「はい、当店からのご案内をご覧頂いたんですね! ありがとうございます、ご興味がおありですか?」

 まあ、あるから電話してきたんだろうけどね。しっかし、声小さいなぁ……どうも、男の子っぽい声だけど……

「あ、きょ、興味というか、その……ほ、ほんとに自信が持てるようになるのかなって……」

「はい! ご安心ください! 当店の実績は業界ナンバーワンです!」

 つうか、業界とか言ってるけど、こんなことやってんの当店うちくらいのもんなんだけどね。

「……でも僕、勉強も運動も精霊魔法も……なにをやっても、全部ダメなんです」

 うん。メンタルがまずね。

「お客様、当店ではまずお客様と丁寧に話し合い、それから契約されるのかをお決め頂きます。迷っていらっしゃるのなら、一度面談をされてはいかがかと存じます」

「め、面談……で、電話じゃ無理なんですか?」

 声だけじゃわからないことが、沢山あるのよねぇ。

「はい、お客様と直接お会いすることで、当店のスタッフがなにを提供できるかも変わって参りますので……」

 うん、って言いなさいよ。

「え……どうしようかな……お金……」

「ご安心ください、費用は成功報酬です。お客様が満足頂けなかった場合は費用は一切頂きませんし、相談は無料です」

 声の様子じゃ、どうも子供っぽいしなあ……適当に話聞いて終了案件だなあ、こりゃ。

「じゃ、じゃあ……ま、またかけ直します……」

 あーあ……逃げたか……久々のお客さんゲットと思ったのになぁ……まあ、なんの得にもならなさそうだし、仕方ないか。

「かしこまりました、では、またのお電話を……」

「あっ! ま、待って! やっぱり!」

 お……坊や、踏みとどまったぞ。

「や、や、やっぱり……あの、僕がそちらに行けばいいですか?」

 おぉ、非常にいいリアクションだ。

「それでもいいですし、こちらからそちらへ伺うこともできます。他の場所をご指定頂くことも可能ですよ」

 さあ、久々の仕事か……腕がなるなあ!

「じゃ、じゃあ……水の神殿の前でお願いします」

「かしこまりました。お客様のお名前は?」

 さー、メモメモ。

「ルシェ、です」

「ルシェ様、私担当のリタと申します。兎耳が目印なので、すぐにおわかりになると思います。ご希望の日時はいつでしょうか?」

「う、兎? あ、はい、えっと明後日の朝十時とか……」

 兎だよ、兎の耳生えてんだよ……会って驚け、この可愛らしさに!

「では明後日、朝十時、水の神殿前でお待ちしております」

「は、はい……よろしくお願いします……」

 最後の最後まで、声小さかったな……でかかったのは、踏みとどまったあの瞬間だけだった……

「ルシェ様とお会いできますこと、このリタとても楽しみにしております!」

 これは、本当。楽しみだな、うふふ。

 つー、つー、つー……

「おい、最後の私の台詞、聞いてたか⁉」

 私は憤慨し、受話器を思いっきりテーブルに叩きつけたのだった。

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