第45話 抜けた先は

サーペントを倒して後、再出発までに約15分かかった。

南陽騎士団は約10分で準備を終えていたのでミルズ側の用意が掛かってしまったが、初遠征という事もありこれは致し方ない部分もある。


出発から約1時間ちょっとで森を抜けられた。この時ハジメの時計の針は17時45分を指していた。この時期であれば日没まであと1時間弱というところだった。

今後を決めるに辺り、騎士団員は一時休憩となった。


(なんとか日没前に森は抜けられたな。ここまではタイムスケジュールに大きな遅れは無いが。あとは皆の疲れ具合と言いたいが、朝から移動しっぱなしだ。休憩できるなら少し休ませたいな。)



森の出口からすぐに崖になっており眼下にはアフリカのサバンナの様な景色が広がる。


『ティナ殿、ここから町まではあとどのくらいか?』ミハエルがティナに尋ねる


『そうですね、先ほどのように魔物に出会わなければ、あとは真っ直ぐなので日が落ちるまでにはロラに着くと思います。』


『男爵、ここは一旦我らが先に先行してティナ殿かイーシャ殿と一緒に町まで行くのはどうでしょう?幸いここから真っ直ぐであれば馬を飛ばして緊急で戻ってくる事も出来ます。』


『うーむ。戦力の分散か。たしかに南陽騎士団にはまだ余力がありそうだな。分かった。ではこちらに何かあった時には空に向かって爆発の魔法を打ち上げるからその火を見て救援を頼む。我々はここで陣を張り一晩探して早朝にロラの町に向かうとする。』


『畏まりました。では先行して町の人に説明をしておきます。南陽騎士団はこれより使者殿と先行してロラの町に向かう。ではティナ殿を連れて参ります。』


『お婆様、では先にロラに戻ります。』

『はいよ。皆に宜しくな。」


『ではティナ殿を宜しく頼む。レオナルド、今夜はここで野営となる。見張り番のローテーションを組んでくれ。』


『はっ。よーしお前ら我々ミルズ騎士団は今夜はここで野営となり早朝に出立とする。各班で順に見張り番を立てるから小隊長はこっちにこい。』


こうしてミハエル達南陽騎士団とティナチーム・ミルズ騎士団とハジメとイーシャで二手に別れて行動する事になり、南陽騎士団が崖に使った急斜面の道を降りていった。


約40分後

いよいよ日が落ち、辺りは暗くなってきた。

ミルズ騎士団員には疲れが出ていて晩御飯を食べずに見張り番が後の者達はそうそうに寝てしまっていた。

これを見るとたしかにミハエルの言う通り先行させて良かった気がする。

陣の中で仮の指揮所で椅子に座り、ふと考えていると後からレオナルドがやって来た。


『ハジメ様、少し宜しいですか?』

『どうしたレオ?』

皆の前ではレオナルドと呼ぶが、今は南陽騎士団も居ないし、2人だけであったのでレオナルドの愛称のレオで呼んでいた。


『はい。まずは森でのサーペント退治お見事でした。そして我が団員の体力不足で南陽騎士団に同行出来ずに申し訳ございません。』


『いや、これはレオが悪い訳ではない。元々急拵えの今回の遠征だ。皆は良くやってくれている。無理に発破はかけなくても大丈夫だ。そこはミハエル殿も分かっていよう。だからこそ南陽騎士団だけの先行を具申してきたのだ。お前も今日は慣れない指揮で疲れただろう。小隊長達への伝達が終わったらお前も早めに休んでいい。朝は早いからな。』


『はっ。有難きお言葉。帰ったらしっかり体力不足を補える様に指導します。ではここで部下達に指示を済ませたら明日の用意をして休むとします。ハジメ様もご自身のテントにお戻り下さい。』


『うむ、ではこの指揮所を任せる。俺も戻って休むとするよ。』


例のテント内にはイーシャがリビング部分で椅子に座り休んでいた。


『如何ですかな?、私のとっておきの寝床なんです。コレのおかげで遠出をしても安心して休むことが出来ます。』

温かい飲み物をイーシャに手渡す


『これはこれは済みませぬな。それにしても見事な魔導具じゃ。空間拡張系の魔法は失伝して久しいと聞く。今残っておるのは殆どが旧時代の遺物を使ったアイテム入れのバッグはポーチはかり。極々稀にスキルとしてストレージを持つものはあるがせいぜい自分の体重と同じ重量までのはず。

其方は知識と魔力と言い、この大きさが収まるストレージスキル持ちと言い一体何者なんじゃ?あ、いや不審には思ってはおらんのじゃ。それこそ何か神の使い、使徒様なのかと。』


『いやいや、そんな大それた者ではありませんよ。しかし、先の事もあります。少し私の身の上話を聞いて頂いても?』


『大変興味がある。宜しく頼みますじゃ。』

『まずはコレを見て頂いて。実は私は…』


ハジメは例の兜を見せてから、前の世界の話を覚えてる限り一通り今までの事を話した。中にはケリーにも話していない事もあったが何故かこのイーシャになら話しても良いと思った。イーシャには何か巫女の様な神聖な雰囲気があり、話しておくべきだと感じだからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る