第39話 領地開拓と出張
ハジメがルウムから戻って2ヶ月
心配したモンスターの襲来も無く、ハジメは以前よりシアに提案されていたミルズ西部の森を開拓して新たに居住区を増やそうとしていた。
順調に人口が増えて、いよいよ住宅地が足りなくなっていた。
調査の結果は森にモンスターの棲家らしき物は無く、元々いる住民(旧村民)達と相談の上西の森開拓を決定した。
開拓第一弾として1平方キロを考えていた。
コレはざっくり言うと千葉県にある某夢の国のランドとシーを出したくらいの広さであり、森全体の5分の1にあたる。
まずは森の奥側に高さ3メートルくらいの塀を作り万が一の侵入に備える。
ちなみに西部は奥にはミルズ山しか無いので近隣の領地とのイザコザは発生しない。モンスター対策が出来ていればいい。
街の外周部は基本1キロ四方を1区画として、大きな道路を縦横3本通して碁盤の目にしようと計画した。そして下水道菅を事前に埋設させてより衛生的な区画にしたかった。
大まかなイメージだけをフランススコに伝え、今回は任せてみようと思った。今後のミルズの為にはシアやフランシスコに仕事を振るのも領主としてやるべき事だろう。
西の開発も始まった頃にアウレリアからの侯爵家の使者がやってきた。
手紙の内容としては、リバーシの大会を開きたいので発明者として来賓に招待するとの事だった。
リバーシはすっかりアウレリアで定着し、前に提案していた侯爵領内での大会を開く事になった。来賓とあるが、実際は企画運営で知恵を貸して欲しい方が本音であった。
主催はジョシュワ商会だが、スポンサーが侯爵家になっており賞金白金貨1枚を侯爵閣下から直接手渡される名誉付きだ。
さっそく応募が5000名を超え急遽予選をする事になった。
リバーシ大会が娯楽の少ないこの世界で一大イベントになったのだ。
ハジメは使者に参加する旨を伝えたが、まずは寄親のワグナー子爵に連絡を入れてから返事をするとして使者を一旦帰した。
使者を送った後にそのままルウムに赴きルーカスの了承をとり(ルーカスも侯爵派閥なので無論了承はされるのだが)
一旦ミルズに戻って用意をした。
良い機会だと思って、ケリーを誘ってアウレリアに行く提案をルーカスにして渋々ながら了承された。
数日後、互いの用意が出来たのでアウレリアに向かう。今回はジョシュワ商会が精鋭を派遣していたので2人はほとんど馬車の中で過ごすことになった。
10日後アウレリアに到着して、パウロ邸に顔を出す。約半月はココでお世話になる事になっていた。
『やぁやぁ、遠路はるばるご苦労様だったね。』さっそくパウロ本人が笑顔で出迎えてくれて、肩を叩きながら屋敷に案内してくれた。
『今回は前に君が話してくれたリバーシの大会を開く事になり開発者の君に是非来賓席に座ってもらって楽しんでもらおうと考えたんだよ。閣下も大層リバーシを気に入って、この大会も大賛成してくれたんだよ。』
『私もまさかここまで大事になるとは思ってもいませんでした。それだけ庶民の娯楽が少なかったと言う事でしょうか?』
『痛い所をつかれたな。しかしお陰でリバーシが大流行して今やほぼどこの家庭にも一台ある普及っぷりだ。勿論たくさん儲けさせてもらったがね。』
『いえいえ、こちらこそあんなにリバーシの収益があるとは思わずに領地経営で大変助かってます。』
歩きながら話が弾む
『聞いたよ。君の領地の税が近隣よりも5分の1つまり2割しか取ってないと言うことを。それでは君の財産にならんだろうに。』
『損して得を取れと言う諺が私の故郷にあります。目先は損でも長い目で見ると益はありますよ。今は領民が増えてくれるのが1番ですからね。』
『損して得を取れか…深い言葉だな。相変わらず君は商才があるな。そして今回もケリー様とご一緒とはね。君も隅には置けないね。』
『ご無沙汰しております、パウロ様。この度はワグナー家の名代としてでは無く、ナカムラ男爵の婚約者として参っております。何卒宜しくお願い致します。』
『なんと!これは、ますます隅には置けないな。我が娘を是非にと思っていたが…。ルーカス殿に先を越されてしまったな、ハハハ。』
『お伝えするのが遅くなり申し訳ございませんでした。ケリーさんとはワグナー家とナカムラ家と言う家の繋がりだけで無く1人分女性として大切にしたいと思い、ルーカス様にお願いして婚約を認めて頂きました。何分若輩者ですのでご指導ご鞭撻頂ければと思います。』ハジメは深く頭を下げた。
『うんうん。若さとは素晴らしい事だ。しかも君はその若さできちんと礼節をも弁えている。本当に私の義理の息子になって欲しかったよ、残念だ。おっと、いかん。つい本音が出てしまったね。ハハハ』
実はケリーとアウレリアに向かう事をお願いするにあたって、ハジメはルーカスにケリーとの婚約をお願いしていた。
元の世界ではアラフォー独身が、こちらに来てから初めに出会い惹かれた女性がケリーだった。
ルーカスもこの時ばかりは
『いよいよこの日が来たか…。』と落ち込んだと言う。
勿論相手のハジメが嫌な訳では無い。むしろ理想の相手ではあるが、愛娘を取られる父親の気持ちは察するにあまりあるものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます