第37話 砂漠の民
遺跡調査から1週間、遺跡の近辺を探してみたがモンスターの棲家は発見されず調査は一旦打ち切りとなった。
それに伴い、派兵のお礼とカストロ(墓守の骸骨)より受け取った宝物をルーカスに検分してもらいにハジメはライブリー・レゴットと一緒にルウムに赴いた。
ルウムに行くのは半年ぶりであった。
『久しいな。してモンスターの大量発生の件はどうだった?』
『はっ。まずはライブリーさん・レゴットさんをはじめ、防衛、調査の為に派兵頂きありがとうございました。肝心の発生源は見つけられませんでしたが、今回その調査中に見つけた遺跡より数点、お見せしたい物があり参上しました。ご検分下さいませ。』
『ほう、遺跡とな。しかし鑑定となると俺よりケリーの方が得意だろう。おそらく鍛錬場に居るだろうから、ここに呼ぼう。すまないが、ケリーを連れてきてくれ。』
数分後
『失礼します。父上、お呼びですか? ハジメ殿!久しぶりですね。こないだはモンスターにミルズが襲われそうになったと聞きましたがご無事で何よりでした。今日はどうされたのです?』
『おいおい、ハジメを見ると俺は急に居ない者になるのか笑』
『父上の顔は見飽きてますが、ハジメ殿が来るのは久しぶりなのでつい。』
『ご無沙汰しています。ケリーさんもお元気そうでなによりです。実は見てもらいたい物があってお呼びしました。鍛錬の途中にすみませんでしたね。』
『ハジメ殿は男爵なのだから、私に敬語は不要ですよ。それにもう少しくだけてもらって構わないのに…。』
『だから、俺を無視するなよ。これだから若い者は』
『いや!ルーカス様、決してそのような。』
『冗談だよ!婿殿に娘を取られるかもしれんのだ、このくらいの嫌味は言わせろ。それじゃケリー、ちょっとコレを見てくれないか?』
『コレは?かなり古い物のようですね。』
『ミルズ山の中腹で見つけた遺跡の奥の宝物庫に有りました。遺跡はおそらく今から1000年以上前の時代のその土地の王族の墓になります。事情があり墓守の骸骨と主従関係になってます。お2人にお願いがあります。墓の事は内密に願います。』
『墓守と主従関係とは、テイムしたと言う事か?相変わらずやる事が斜め上をいきますね、ハジメ殿は。』
『まぁ、形式状はテイムになる…のかな?たしかにテイムのスキルを獲得したので。その墓守がカストロと言う名で存命中は王の近衛兵長を務めてた男です。ただ時間が経ち過ぎていて詳しい過去までは聞き出せませんでした。』
『そこで発掘したいくつかをお前に見て欲しいんだよ。お前は古王国時代に興味があっただろう?たしか昔に何かの本を大金出して買った記憶があったな。あの時は珍しく欲しいと言ったので覚えていたんだが。あの本はまだあるか?』
『あります!ちょっと部屋から持ってきます。ハジメ殿少しお待ちを』ケリーは急いで自室へ向かう。
『最近は、ずっとお前の話ばかりするんだよ。お前さえ嫌じゃなければウチのジャジャ馬の事を真剣に考えて欲しい。本人の前で言うと怒られるのでな。』ルーカスが楽しそうにけど少し寂しそうに話した。
(結婚が近い彼女のお義父さんってこんな感じなのだろうな。前の世界では経験がある様でここまで仲良くなれた人も居なかったから。もちろんケリーさんは美人だし俺には勿体無いくらいだけど結婚も考えないとな。ミルズの将来もあるし。)
『この件が落ち着いたら真剣に考えさせて下さい。私にはケリーさんは勿体無いくらい素敵な方ですが、前にいた世界では親が決めた結婚と言うのは少なくて互いで決めて親に報告するのが主流だったもので。』
『まぁ、それが理想よな。しかしお前も男爵となり曲がりなりにも貴族だからな。家を存続させる事も考えておいて貰えると助かる。そろそろアイツが戻ってくるか…。一旦この話はここまでとしておこう。』
『畏まりました。』ハジメは立ち上がり頭を下げた。
『お待たせしました。この本です。東の砂漠の民の古い言い伝えの本です。たしかこれも1000年近い前の時代の話だったと思います。』
(砂漠の民か。確か東のステップ地帯の奥が砂漠になってるんだったか。ステップ地帯の一部と交流があるとジョシュワ商会の人も言ってたか。コレから見せるのは個人的にはすごい見覚えのあるモノなんだが。少なくともこの世界の思い出ではないんだよな。)
『では、コレを見て下さい。兜の様な物の後ろに何か模様の様なデザインがあるのですが、分かりますか?おそらく、どこかの貴族の紋章なのか、国や部族の旗のデザインなのか。それとも所属していた部隊の紋章か。』
ストレージから取り出したのは金属製の白っぽい銀色に近いメタリックなヘルメットの様なモノ。
バイザー部分は上下にスライドして、おでこの辺りで上げるとストッパーがかかり固定出来る。下まで降ろすと顎まで薄い板覆う事が出来る。顎周りはどちらかと言うと人よりも何かの生物の口元をデザインしている気がする。
『確かに兜のようだか、随分と薄い金属のようだな。』
『持った感じもほとんど重さがないけど触った感じは堅そうですね。もしかしてコレはミスリル銀なのでは?だとしたら王が使った儀式用の兜かも』
『なるほどな、確かに色と軽さから考えるとミスリル銀の可能性はあるな。コレ一つでそれこそジョシュワ商会に渡したら白金貨が何十枚になりそうだな。』
『ミスリル?ミスリル銀はやはりあるんですか?』
『ハジメ殿はミスリル銀をご存じなのですか?あちらの世界にも?』
『いえ。元の世界には存在はしないのですが、物語などでは良く出てくる金属でした。たしか魔力を良く通して、軽く錆びにくい丈夫な素材だと。ただ加工が難しい様な記述が多かったと思います。』
『そうなのですね。似たような話があるとは不思議ですね。ミスリルですが鍛治には詳しくないのですがかなりの高温と技術がないと加工が難しかったと思います。それにこの模様何処かで見た事があるような…』
『ちょっと兜を付けてみたらどうだ?みた感じサイズはちょうどお前に良さそうだけどな?』
『ええ、では装着してみますね』
ハジメが兜をつけると兜が光だした。
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