第35話 遺跡調査
ファンネルライトは大活躍だった。
天井に先行して10個を一定間隔に設置することで足元の不安も無くなりアリーのシーフのスキルもあってトラップに引っ掛かる事は無かった。後ろも5個を残して進みながら回収すると万が一のバックアタックも防げる。
後ろにはエルフ兄弟の兄エリーに任せている。
『だいぶ進んできましたな。マッピングも順調ですが、この遺跡は何の目的で建てられたのでしょうな?』ロートンが呟く。
通路を挟んで細かく部屋が区切られて、一部屋辺りおよそ6〜8畳程度くらい。
ハジメの感覚では狭いビジネスホテルの廊下のようだった。あるいは病院の廊下のような。
『うーん。前の世界にあった単身者用の狭い宿屋かもしくは…。』
『もしくは?なんですか?』
『あぁ、例えば病院かな。それも末期の患者用だったり隔離病棟だったり。どちらにせよあまり良い印象ではないかな。』
『隔離病棟とは何ですか?』レゴットが質問する。
『うん、もう治らない病で死を穏やかに迎えるのが終末医療、死を待つ人が居た場所ってことさ。隔離病棟は流行り病を患ってる人を隔離してそれ以上流行させない様にする所。どちらにしても自由がない人達が居た場所かもと思ったらやりきれなくてね。』
『なるほどな。もしそうならあまり良い場所では無いな。』ライブリーが静かに言う。
皆が少し静かになってしまった。
『いや、もしかしたら宗教的な礼拝や巡礼者用の部屋なのかも知れない。まぁ奥に何が有るかで答えは分かるさ。』
更に奥に進むと大きく左に曲がりそこから螺旋階段の様に下に続いていた。登る階段は無いのだが上にもつながっていて、この螺旋階段は吹き抜けの構造の様だ。
『ここまで来てモンスターに一匹も会わないのは不思議ですな。ココが発生源では無さそうですかな?』
『うーむ、確かに魔物の気配は無いが。何か下には居そうな気がするな。ハジメはどうだ?』
『ライブリーさんの言う通り、下には何か居そうな気がしますね。しかもあまり好意的ではなさそうだ。』
そのまま慎重に螺旋階段を降りる、ライトのおかげでもう地面は見えているし、その先に何が有るかはぼんやりながら見えていた。
階段を降りて有ったもの、それは祭壇だった。正確に言うと祭壇の前に何かがいる。
『生アル者ガ来ルトハ珍シイ。ソナタノ名ハ?』その声の正体は骸骨がボロボロのローブを纏って頭には錆びついた冠があった。
『リッチ、なのか?』レゴットは狼狽える。
『小童ヨ、イカニモ。我ハリッチ、死者ノ王ダ。』
『ハジメさん、こいつは不味い。モンスターランク1級の危険な魔物でこの人数で倒せる相手じゃ無い。撤退を!』
『そんな危険な魔物を放置しておけん。ハジメやるぞ!』
『ライブリーさんの言う通り、ここで引いてもすぐに螺旋階段で追いつかれる。ここで勝負する。エリーとアリーは弓で牽制と援護に。レゴットは退路の確保とポーションで治療を頼む。ロートンとライブリーさんはタンクと前衛を頼む!俺は魔法で対抗してみる!各自頼んだぞ!!』
『幾千の魔法の矢よ、我の邪魔をする敵を撃ち抜け!アローレイン!!』
相手は一体のみなので矢の数は抑えた30本にその分一本ずつが強力になっている。
『ホウ?中々の魔力ダ。シカシ使イ方ガ雑ダナ。』軽々とリッチは30本の矢を避ける。
その先にアリー・エリーも弓で攻撃するも当たっているのだがダメージが無い。
(回避も上手い。当たってもダメージが無いか。物理攻撃はあの骸骨の体には無意味か。ならば、ファンネルライトの応用で完全に攻撃用に切り替えてやる)
『我が魔法の矢よ、我の意思の通りに踊り我が敵を撃ち抜け!ファンネルランス!』
矢の数は12本に減らして矢が先ほどの数倍の大きさになる。それはもはや小さな投げ槍の様だった。その槍が先ほどのとはまるで違う軌道でリッチを襲う。
さすがのリッチも見えない角度からの攻撃には反応しきれない様だ。何本かの槍がローブに突き刺さる。
『ムゥゥ?実体ノ無イ我ニダメージヲ与エルトハ、貴様イッタイ?』
『槍の属性を変えて撃ち込んでいる。お前の苦手であろう聖属性にしてな。』
『マサカ!キサマ聖光教ノプリーストナノカ?』
『残念だったな。聖職者では無いが使えるんだよ。その出立ちからしてアンタも恐らく生前は貴族だった者なんだろうが、悪いが今は俺がこの領地の領主でな。民の安寧の為に退治させたもらうぞ。ファンネル!』
光がより一層輝きを増してリッチに突き刺さる。リッチの体から白い煙が上がっている。
『ハジメ様、効いてます!あと少しです!』
『分かった!残り一気に行けー!ファンネル!』倍に増やして一気にトドメを刺す。
『我ハリッチ、死者ノ王。ソレガコンナ若造ニ…。ウ、ググ。身体ガ、保テナ…イ。嫌ダ死ニタクナイ…。皆ノ…眠リヲ守ラネバ…。』
最後の言葉は掠れてハジメ以外には聞き取れなかった。
リッチの身体は崩れ、ボロボロのローブと怪しく光る石が嵌った錆びた王冠を残して灰となって消えていった。
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