第34話 忍び寄る足音 ②

襲撃から3日後、ルウムから50人の兵士が来てくれてライブリーとレゴットも来てくれた。


『ルウムから50人も来てくれて、しかもライブリーさん、レゴットさんも来てくれて助かります。』

『そう言ってもらえるとこっちも嬉しいぞ、なぁレゴット!』


『もう!ライブリーさん、今はナカムラ男爵様なんですから!』


『お城じゃないんですから構わないです。今まで通りで呼んでくれれば』


『ほら、そう言ってるんだからお前も気にするなよ!ガハハハ。』

『もう!じゃお言葉に甘えて、ハジメさんと呼びますよ。それで今回の被害は?』


ハジメは2人に今回の経緯を伝えた。


裏の山からゴブリンがメインのモンスターの襲撃だった事。被害は死者が1名で怪我人は居たが全て治療済みなので、実質的にこの死者1名が被害だけだった。


『約200に襲われてほぼ無傷とは、さすがですね!』

『それでも1人死者を出してしまった。まだ若い人でこれからの人だったのに。』悔しそうに伝える。


『気持ちは分かる。しかしな、警備隊にいる以上は万が一がある。』ライブリーがハジメの肩を優しく叩いた。


『領主としては被害が最小で済んで良かったです。ただ最小とは言えその家族には大きな影響です。残された家族がしっかり暮らしていけるように図ります。』


『立派になられましたね、ハジメさん。』

『うむ。さすが我らがルーカス様に認められた男だな。』


ライブリーとレゴットが来てくれたので、ハジメは数名を連れて山の奥のモンスターの発生源を調べる事にした。


翌日、ハジメとライブリー、レゴット、そして警備隊長のロートンと部下6人の10人で奥の調査に出かけた。


斥候に出したのはエルフと呼ばれる森の狩人の種族でエリーとアリーの兄弟だ。彼らもアウレリアからの移籍組でアウレリア近辺のエルフの森の出身らしい。


兄エリーは弓の名手で弟のアリーは魔法と罠の解除や索敵が得意なシーフの才能も持っていた。この兄弟コンビが山の中腹の村の水源の近くに、古い遺跡を見つけた。

山肌をくり抜いて石を積んだ造りの遺跡で洞窟状になっている。


『隊長。中は薄暗く、奥行きがかなりありそうです。ハジメ様からお借りした灯りで近くの視界は確保出来ますが…。』


『うむ、ご苦労だった。引き続き遺跡の周りを調べてくれ。モンスターと接敵したら迷わずに戻ってこい、くれぐれも2人で戦闘しないように。』


『ハジメ様、如何なさいますか?』


『うーん。まずは遺跡の中よりも周りを調べるか…。その間に中を調べる案を考えてみる』


(さて、どうしたものかな?とうぜん人が作った遺跡ならば灯りが無いと見えないから、松明や蝋燭や油みたいので灯していたのだろう。さすがに電気はないしな。いや、待てよ。電気は無いけど、魔力はあるか。例えば…)


『ちょっと待って!アリーさん、こっちに来てくれないか。試してみたいことが有るんだが魔法の原理が俺には分からなくてね。相談なんだが、ココにコレをこうしたいんだけど…出来るものかい?』


『はい、出来なくは無いと思いますが。せいぜいこの魔石だと持っても数時間だと思います。』

『なら、こっちの魔石だと?』

『これなら半日くらいは持つかも知れない。コレは先日のオークの?』


『そうだね、あの大きなジェネラルの魔石さ。コレを割ってそれぞれのランタンに入れてやれば』


『いや…もしかしたらハジメ様、こうゆうのを作る事は出来ますか?』反対にアリーがハジメに質問する。


『なるほど、〇〇みたいなもんか。それなら消費電力(魔力)も少ないかもしれないな。やってみる少し時間をくれ。』


30分後

休憩も兼ねて少し広くなっていた場所で皆が休んでいたが、大きな平らな岩がある所を作業台代わりにしてハジメとアリーは何やら作っていた。


『消費魔力はどうでしょうか?』

『問題なさそうだな、これなら100使ってもほとんど魔力は減らないかな。』


『それは凄い!さすが領主様ですね。ハジメ様はハイエルフの長老並みの保有量がありますね。』

『エルフの君に褒めて貰えるなら、少しは自慢できるな、ありがとう。コレで中の探索ができそうだな。おーし皆集まってくれ。探索の為の灯りの目処がついた』


ハジメは当初、魔石に魔力を注入して魔石を明るくして照明代わりにしようとした。

それをアリーに魔力で光そのものを作れないかと質問された。エルフ達が使う魔法でライトと言う魔法だ。直径5〜6センチの小さな光球だ。ただこの魔法は明るいが火の魔法が元なので消費魔力が大きいので長時間使いっぱなしには出来ない。


そこで思いついたのがキャンプでテント内での照明にも使う、通称ホウズキ型の小型ライトだ。これならLEDなので光だけが出て熱の排出が少ない。

一個当たりはそこまで明るく無いがコレを一定間隔で設置してやれば前後の明るさも確保出来る。

しかも魔法なので場所の移動や回収も容易だ。大昔に見た某モビ〇スーツアニメに出てくるファンネルの様にエネルギーが無くなったら本体(ハジメに)戻って再チャージすれば良い。

ハジメは安直なネーミングだが、コレをファンネルライトと名付けた。

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