第28話 パウロ邸 会合
会合とは相談、討議などのために人が集まること。その集まり。集合。寄り合い。と辞典にはある。
今回の会合にはハジメ、ケリー、パウロともう1人くる事になっていた。
ケリーはルーカスの名代としての参加である。
食事が終わって、少ししてもう1人の男が数人のお供を連れてパウロ邸にやって来た。
男の名はルーファス
ルーファス・ガロリンク侯爵である。
お供は近衛騎士であろう。全くの隙がない。
『待たせたな。ややむさ苦しい供がいるが今夜は只のルーファスとして参加させてもらうぞ。そのつもりでいてくれ。』
『ええ、ではこれよりミルズ村の今後の経営とハジメ殿の展望を聞かせていただきたい。ハジメ殿宜しく頼みます。』
『ではご説明します…』
ハジメが村の改革案を伝える。そしてそれを興味深くパウロとルーファスが聞く。
『君の発想というか目の付け所はすごいな。そして例の件はどうなっているだ?』ルーファスが感心する
(例の件、ウイスキーの事か。全くゼロからのスタートになるからな。)
『はい。まずは施設を作る土地ですが、これは幸いにミルズ村がとても適しています。キレイな水と夏場も高温になりすぎない好立地です。醸造する為の設備はアウレリアの鍛冶屋に話を持って行き試作を作ってもらい詰めていきます。そして実際の製造が上手くいって最短で最低3年は掛かると思います。』
『少し時間が掛かると?』
単純に建てて作ってはい、お終いとはいかない。寝かせる作業もあるし試行錯誤で3年は掛かるだろう。下手したらもう少しかかるかもしれない。
『はい、すべてが上手くいって3年です。ですので5年くらいの長い目で見て頂ければと思ってます。その代わりこの世界に新しいお酒を誕生させられると自負しています。そして私が作りたいモノはこんなイメージです。』
ハジメはストレージから一本の瓶を取り出しテーブルの上に載せた。中の液体は琥珀色。
瓶は四角で少しカッティングが入っている。日本人には馴染みのある黄色いラベルのアレである。
『これは?』ルーファスが興味を示す。
『では、パウロさんグラスを4つご用意頂けますか?』
ハジメがウイスキーの蓋を開け、それぞれのグラスに注ぐ。グラスからは濃厚な香りが漂う。
『それでは皆さん、まずは一口、本当に一口だけ含んで下さい。』
ケリーとパウロはあまりのアルコールの強さに顔を歪めた。しかしルーファスはさすが酒好きを自称してるだけあって別の反応を示した。
『なんと力強い酒だ。口の中、いや身体中が熱くなる。コレは素晴らしいぞ。君はコレを作りたいんだな?」
『はい。私が愛してやまない酒、コレがウイスキーです。作る土地、水、樽により色々な味が生まれます。まずはミルズ村で1つのブランドを作り、いずれはエールやワインに並ぶ飲み物にしたいと思います。もし最初の品種が出来たならルーファスさんに命名して頂きたいのですが宜しいですか?』
『良いのか?よし、気に入ったぞ!我が侯爵家も金銭的な援助を決めた。鍛冶屋も誼の店に優先的に仕事をさせる様に言付けしておく。遠慮なくいってくれ。アウレリアを王国の一のウイスキーの産地にしようぞ。』
『ありがとうございます!必ずや成功させて見せますので何卒宜しくお願い致します。』
こうして侯爵家のバックアップも決まり会合は終わった。
そしてこれから5年後にはミルズとルウムとアウレリアは王国きってのウイスキーの産地として有名になる。
翌日
大まかまな設計図を作り、侯爵家御用達の鍛冶屋を訪問して親方に設計図をみてもらいながら説明する。
やはりこの世界も異世界のテンプレであるが鍛冶屋と言えばドワーフであった。ドワーフと言えば酒が好きだ。親方にも飲んでもらい大好評でコレを飲めるなら仕事をしてやっていいと確約を取り付けた。
次にウイスキーを貯蔵・熟成させる樽だがコモンとセシルオークがヨーロッパでは有名どころだ。そして日本だと水楢(ミズナラ)になるが、ミルズ村にもオークがありやや水分を多く含んでいそうな感じであった。どちらかと言うとヨーロッパのオークより水楢に近い感じかとハジメは感じていた。
こうして資金のパトロン、設備を作る鍛冶屋の目処がついていよいよ本格的にウイスキー作りをスタートさせる事になった。
アウレリアでミルズ村のみんなに日持ちするお土産を選びルウム経由でミルズへ戻った。
甘い食べ物が村にはほぼ無いため、特に焼き菓子が好評だった。
約1ヶ月振りに村に戻ると今年の収穫がほぼ終わっていた。
本来大麦は6月の収穫なのだがこちらの世界では夏の終わりから秋にかけてだった。
今年と来年の収穫分は全て自分達で使えるとあって収穫も皆助け合い例年になく楽しく行えたそうだ。それでも何軒か不作の所もあったようで、宣言の通りきちんと補償をする事にした。収穫も終わったので田畑の整理がつき次第村人特に若い男性達にウイスキーの醸造所の建設を手伝ってもらった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます