第27話 ミルズ村改革
ミルズ村宣言から2ヶ月後
季節は夏から秋になろうとしていていよいよ収穫期に入るところだった。
その頃、巷(アウレリア)ではハジメが開発しジョシュワ商会が販売したリバーシが大ヒットとなった。
庶民用の廉価版も人気だが、貴族用の特注品が飛ぶ様に売れた。ココにも実はハジメのアイデアがあった。
貴族用に盤のデザインを数パターン、ランク毎に用意して置いて、盤の横には各家の紋章を入れるスペースを作ったのだ。
見栄に拘る貴族達は当然最高ランクを欲しがる。その最高ランクに自分の家の紋章を入れられるとしたらどうだろうか?
単に遊べる玩具としてだけで無く、貴族同士の贈り物にも最適であった。
そして木を切り出す木こり、リバーシの盤を作る職人、飾りを担当する職人、貴族の紋章を担当する鍛冶屋達にも新しい仕事が増えた。それを一手に販売するジョシュワ商会の利益はとんでもない物となった。
『パウロ様、リバーシの売れ行きが好調過ぎてとても生産が間に合いません!如何しましょう?』
『それは凄いな。ただコレでいいのだ。ハジメ殿最初からこうなる事を想定しておった。簡単に手に入らないからこそ希少価値が付いて、それが商品の価値を更に上げるのだ。全く、この話しを他の商会でされていたら生きた心地がしなかったよ。娘のカレンが作った縁に感謝している。』
(ここまで売れてくれれば先行してある程度のお金を先にハジメ殿に渡しておいた方がこちらの信用にも繋がるだろう。)
『先月1ヶ月の売り上げの3割をワグナー子爵領の新支店の責任者に持たせてハジメ殿に確実に届くようにしろ。』
このやり取りから半月後、ワグナー領内にジョシュワ商会の支店がオープンした。責任者はオープンに先立ってハジメにパウロから預かっていた手紙とお金を渡していた。
その額なんと白金貨20枚(2000万円)だった。
ミルズ村の本来の税収が金貨100から150枚前後なのですでに15年から20年分に当たるお金がハジメの手元に届いた。
このお金を元手に、村の改革を始めた。
まずは住居の整備と村のインフラの下水(主にトイレ)からだった。
建材はジョシュワ商会に依頼して大工も呼んで冬まで終わるようにお願いした。
下水は人口が200人・戸数が70未満なので村の協力もあり設置にはあまり時間は掛からなかった。
山側から水を引いてきて水車で各家庭に水を循環させて村の外れの低い部分に浄化槽を設置。
これは簡易的な活性炭・石や砂を使ったモノだが飲み水では無いので十分であろう。
家の中に汚物が溜まるを防ぎ流す事で衛生面も改善されていくだろう。その浄化槽の横にこちらも簡易的な糞の堆肥化の為の設備を考えている。元々堆肥に使っていたのだが各家庭から回収する労力と匂いが大変そうだったので村の外れに下水処理と一括した。
次に作りたいのが日本人なら入りたい温泉である。村の老人達に聞き取りした所、裏の山の奥(ミルズ山の奥は標高が一気に3000m級になりガリア王国の中でも人が住めない未開の地になっている。この山の反対側に国境の川が流れている。)でおよそ300年前に火山の噴火があったらしい。
もしかしたら温泉が出るのでは無いかと密かに期待はしていたのだ。ただ現代の様に試掘する為のボーリング業者もいない。人力でやるしか無いのだがハジメはとりあえず村の人達に採掘の仕事をお願いしてみた。もちろん給料を出す事として皆んなからの応募が殺到して抽選で5名が2日交代でやってくれる事になった。
この温泉と前にパウロに伝えていた新しいお酒・ウイスキーが出来れば村の観光産業になるはずだ。
ハジメは商会の責任者からお金と一緒にパウロさんからの手紙ももらっていた。
内容は今度時間が少しできたら一度アウレリアに来て欲しいとの事であった。出来れば早めにという事だったので、皆に任せて向かう事にした。
ミルズ村からハイムで一泊した。
アウレリアへ行くこととミルズ村の現状の報告である。そしてルーカスからアウレリア行きの了承を取り付けた所でケリーもアウレリアに連れて行く事になった。
前回置いてかれた事を根に持っている様でルーカスからくれぐれと念を押された。
ルーカスから馬車と御者と護衛3名を借りて翌日アウレリアに旅立った。
途中コパー峠で温泉に入りリフレッシュしてからアウレリア入りした。
正門ではワグナー家の紋章を見せるとパウロから連絡があったのだろう。あっさり通過でき迎えの兵士に案内されてパウロ邸を目指した。
『いやいや、良く来てくれたね。そしてこちらが未来の奥方になる方だね。はじめましてジョシュワ家当主のパウロだ。』パウロはご機嫌でハジメと歓迎のハグをしケリーと握手をした。
『こちらこそお会いでき光栄です、ワグナー家当主ルーカスの娘のケリーでございます。』
『うむ、遠路大変であったろう。滞在中は我が家と思いどうか寛いで欲しい。』
「パウロ様、早速ですが手紙あった内容とは?』
ハジメが切り出す。
『まぁまぁ、それは夜にご飯を食べてながら話そう。まずは夜までゆっくりしてくれ』
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