第24話 謁見す
ジョシュワ家滞在5日目の朝
ようやく城からの使いが来て、明日の朝に謁見できる事となった。
この5日間の治療でカレンはすっかり良くなり、パウロはとても満足の行く日々だった。
そしてハジメはパウロの妻も治療していた。症状は娘とほぼ同じだった。
そしてハジメはパウロに依頼され、新たな娯楽性のある物を開発した。
所謂リバーシとトランプである。
サンプル品を作り侯爵に献上予定でもある。
リバーシは異世界転移で鉄板ネタだが、作りもサンプルだしルールも誰もがすぐ覚える。それでいて戦法は沢山ある。
トランプも基本的な事を覚えれば色んなゲームに使える。結果的にリバーシがジョシュワ商会の今年度1番のヒット商品になった。
貴族向けにはリバーシの材質や盤の装飾を豪華に。
庶民には安価な安い作りでとにかく沢山の人に遊んでもらえたらと考えた。
そこでハジメはこのリバーシの大会を提案。
ジョシュワ商会の主催にして各支店で地方の予選大会を開き、優秀者にはアウレリアで本大会を開き賞金もつけた。これは年を重ねる毎に大きな大会になりアウレリアの名物になり、この大会に合わせて各地でも祭りをやったりして運営に携わるジョシュワ商会はより盛り上がっていく事になる。ちなみに発売から3年までは売り上げに2割がハジメに渡される事になった。所謂ロイヤリティである。
そしてもう一つ、これはまだ数年は掛かると思うがウイスキーの開発もワグナー領で行う際のスポンサーになってもらった。成功すれば独占的に販売出来る条件つきだが。何よりポットスチルをはじめとした設備や酵母など課題は山積だが。
迎えの馬車に揺られて、貴族街から城へと登城する。
元々の成り立ちが前線基地だった名残か、まさに要塞と呼ぶのに相応しい重厚な城壁だ。
城門で念のための身体検査と持ち物検査を経て中に進む。城は中心から見て左手の塔が高さ約20メートル程の7階建らしい。中は主に宮廷貴族がその配下と各種の役所的な仕事を行い、最上階は緊急時の見張の展望台になっている。
その奥に幾分低くなっているが中央に5階建の侯爵達の居住スペースがある。謁見もこの中央塔の3階の謁見の間で行われる。
右の塔は主に騎士団が鍛錬の場と緊急時の兵糧の保管に使っている。
謁見の間の控え室でパウロとルーカス、カークス、ハジメの4人が待っていた。
そして近衛兵に案内され謁見の間へ向かう。
扉が開き、4人は片膝をついて下向いて侯爵が
やってくるのを待つ。
そして数分後
奥の扉が開き数名の足音が聞こえた。
『楽にして良いぞ。久しいな、ワグナーの息子よ。父は息災か?』
下を向いたままルーカスが応える。
『お久しゅうございます。閣下におかれましては…。』『よいよい。ワシも堅苦しいのは好きではないのだ。ただでさえ最近は肩の凝る話ししかないのでな。皆も面を上げて楽にしてよい』
膝はついたままだか、4人が顔を上げて幾分楽な姿勢をとる。
『では失礼をして。そんな中にでまた肩の凝るお話になりますが、先に書状にも記しましたが、南部にて閣下の代官を務めるハイマン卿が暗殺されました。賊は未だ捜索中です。
』
『うむ。書状は読んだ。ハイマンを失ったのは残念だか、しかしながら其方の書状の内容が真実であれば惜しいとも言ってられんだろう。』
『それに関しては私よりもこちらにいるナカムラ殿に説明させます。ハジメ殿よろしく頼む。』
『今ルーカスから紹介に預かりましたハジメ・ナカムラと申します。現在はワグナー家にてお世話になっている身です。それではご説明させていただきます。まずは…。』
数分後
『それでは私からの説明を終えたいと思います。何かご質問がございましたら。』
王の左手に控えるのは、財務官達だ。
皆青い顔をしている。それもそのはず、自分の上司がいる目の前で自分たちの仕事のミスを、ぐうの音も出ないくらいに説明されてしまった。
しかも財務官達は現場に行き、例のカラ発注の工事を見に行っていない。
『ナカムラ殿だったな。どうしてコレを見破ったのだ?』侯爵はハジメに問う。
『まずは不審に思ったのが、年貢の納税が出来ないくらいに酷い河川の氾濫があったのならば、もう少し周辺の村からも陳情があってもよかったはずです。そして例の村よりも少し下流の村では例年通りの麦が穫れています。
冷静に周辺の地図と収穫量を考えれば気付くはずです。』
侯爵が頷く。
『なるほどな、分かった。よく説明してくれた。其方達も反論が無いのであれば彼の説明で合ってるということだな。そしてハイマンの不正が有ったことも証明されたと言うことか。』
侯爵が立ち上がり右手し宣言する。
『ハイマン子爵を横領と不正の罪で罰を与える事とするが、すでに本人が死んでいる為にこれを持ってハイマン家を男爵家に降格とし代官の任を解く。そしてワグナー家を子爵に叙爵してハイマンに代わりに南部地域の代官に任命する。しっかり励めよ、ルーカス。』
「はっ、ありがたき幸せ。』
『そしてナカムラ殿よ。見事な推察であった。そしてパウロから聞いているが其方はパウロの娘を救出した際に治療をして、その腕も知識も優れていると聞いている。今度我が領内の医者達にもその知識を教授してやって欲しい。差し当たってその類い稀なる知識と盗賊退治の労を労い、一代限りで土地は無いが叙爵し男爵を名乗るが良い。給金は年に金貨300枚とする。パウロのジョシュワ家やワグナー家を補佐してやってくれ。』
『はっ、ありがたき幸せ。必ずやワグナー家とジョシュワ家を今以上に民に慕われる、より良い家になる様に努めます。』
『では、ワグナー子爵よ。改めて南部域の代官としてよく励むように。ハイマン家に関してはこちらより人を送るのでよく計ってくれ。以上だ。』
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