第19話 救出

『聖騎士様!どうかお嬢様をカレン様をお助け下さいませ!!』ハジメは長身の女性に腕を引かれて奥にいく。


そこにはぐったりとした女性がいた。

皆だいたいに顔色は悪いが彼女は特に悪い。衰弱しきっているようである。


『コレは、だいぶ不味いようですね。ちゃんと治せるか分かりませんが、ヒール!』

ケリーの時のように魔力を強めに込める。


すると顔にやや赤味が戻って肌ツヤが少し良くなってきた。しかしまだ衰弱しているようだ。

『レゴットさん、ポーションお持ちですか?あれば一つ貸して下さい。』

『あるのは普通の品質のポーションだが良いのかい?お世辞にもコレで改善するとは…。』


『えぇ、ですのでこのポーションにも私の回復の魔力を込めれば少し良くなるかなと思って。』

『そんな事…いや、たしか昔の魔女はポーションに自分の魔力を込めて高品質なハイパーションを作った話があった気がする。もしかしたらハジメさんなら。』


先ほどよりも魔力をポーションに込める。

するとポーションが輝きだした。

一口舐めてみると元気が出る気がする。


『さぁ、カレンさん頑張ってコレを飲んで…。』

虚ながらも言われた通りにカレンと呼ばれた女性は頑張って飲み干す。


そして数分後、カレンの身体が光輝き先ほどまでの不調が嘘の様に顔色も戻っていた。


『助けて頂き、ありがとうございます。私の名前はカレン、カレン・ジョシュワと申します。』


レゴットが驚いて声をあげた。

『あのジョシュワ家のご令嬢がどうして?』


『レゴットさん、すみませんがジョシュワ家というのは?その驚きからすると大きな貴族でしたか?』

『ハジメさん。大きいも何も、ジョシュワ家は王国一の大商人ジョシュワ商会ですよ。しかも私財を投げ合って新しい道を作り流通網を整備した事が評価されて今は子爵家となってます。少し前のコパー峠の整備が特に有名ですよ。』


コレは、とんでもない人を助けてしまったな。助けたから悪い様にされる事は無いのだろうけども。


『私を助けてくれた聖騎士様はお名前は?』カレンがハジメに尋ねる。


『これは失礼いたしました。某はハジメ・ナカムラと申します。故あって今はワグナー男爵家でお世話になっております。彼はその男爵家当主ルーカス様の配下のレゴットさんです。』


『レゴット様とナカムラ様ですね。それにしてもナカムラ様…。珍しいお名前ですね。もしかして北方のご出身でしたか?そして助けて頂いて聞くのも何ですが、どうしてここへ?』

ハジメは簡単にこれまでの事情を話した。


『そうでしたか…。ガロリンク公に謁見の為に。』

『差し出がましいとは存じますが、ジョシュワ様はどうしてこんなところへ?』


『私は…。』

『それは私から…。カレン様のお世話係を長らく務めております。マリエッタと申します。お嬢様は体調を崩されており静養のために。』


『なるほど、峠の温泉で湯治でしたか。もしかすると、カレン様は日頃からめまいや立ち眩み、朝起きるのが辛い事などございませんか?後は疲れてくると座っていても目がまわるよう感じとかは?そして…。』

最後の所だけ小声でマリエッタにのみ尋ねる。


『スゴい!何故それを?』

マリエッタとカレンが同時に驚く。


(やっぱりな。生理痛も重たいみたいだ。部下にも辛い子がいて大変そうだったもんな。そしておそらく貧血の症状が辛いのだろう。さらにメニエール病もありそうだな。この世界の食生活がどうなってるかは分からないけど、レバー系や鉄分の吸収に良いビタミンCを補える果物を食後に食べてもらって。反対に何を控えたら良いんだっけな?あ、たしか飲み物の中にあるタンニンか。紅茶とか飲みそうだから控えてもらって様子を見てもらえれば若い子だし少しずつ改善していけるんじゃ無いだろうか?

メニエールは内耳のリンパ液だから治療は無理だろう。もしかしたら先ほどのキュアで少し改善されるなら定期的にしてもらっても良いのかもしれない。)


『マリエッタさん。カレン様のお身体ですが、私も医者では無いので正しく説明は難しいのですが。おそらく重度の貧血とメニエール病かと思われます。紅茶やコーヒーなどの飲み物を控えて大豆や新鮮な卵や魚、肉のタンパク質を摂取して食後にビタミンCを取れるように果物を食べさせてあげて下さい。』


『聖騎士様、聞いた事が無い言葉が沢山出てきて分からなくて。申し訳ございませんがもう一度よろしいでしょうか?』


(あ、しまったな。メニエールもだけどビタミンとか言っても何を言われているか分からないよな。)


『後で紙に身体に良い物と控えた方が良い物を書いてお渡ししますよ。さぁ、カレン様。念のため耳の周りにもう一度回復魔法をかけて起きますね。』

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