第10話 ミーティング
部屋に入りベッドにケリーが腰掛け対面して二つの椅子にハジメとボッシュが座り、話し合(説明、いや弁明)になった。
『なるほどのぉ、おおよその話は分かった。確かに北国の古い伝承に異世界からやってくる男がいたと聞いたことがある。』
腕組みをして老人、ボッシュは答える。
『しばらくは我が家で預かりたいのだ。それにハジメ殿はそちらの世界の大学という所で22歳まで勉強していたらしい。異世界の知識は我々の知らない事が多そうなのだ。』
『私たちの世界、特に私が住んでいた国では約半数が、大学まで勉強してさらに一部が大学院生になりますね。私はそこまで勉強したかった訳ではないので。』
『「半数?」』
2人は驚きの声をあげる。
『ええ、勿論世代によってちがいますがね。大学までいかないにせよ、ほぼ高校の18歳までは勉強してますし。それでなくても15歳までは義務教育なので。」
『勉強させるのが義務とは…それはたまげたわい。』
『ハジメ殿、ではそなたの領民いや国の民は皆が読み書きができるのか?』
『ええ、読み書きは勿論。
自国や世界の歴史も。数学なら掛け算や割り算や二次関数も。科学なら簡単な実験もしますよ。あと最低限の音楽や美術もやりますね。』
ハジメは当然のように答える。
『それはすごい!是非我が家ワグナー家のお抱えの教育者になって欲しい。給料は勿論出すからどうだ?』やや食い気味にケリーが話し出す。
『ええ、行く宛がないので仕事を頂けるならありがたいですが。私の知っている知識の中での教えになりますが良いですか?』
『勿論だ!国の全ての民が読み書きが出来るなんて素晴らしい事だ。この王国内はおよそ4割にしか満たないのだ。我が領内に限って言うと話せるが字が書けない者も多い。農村部ではもっと状況が悪くなる。
計算などは商家や貴族や役人の人間くらいな者だ。科学とやらはよく分からんが音楽や美術なとは貴族しか勉強しない』
『そうゆう事でしたら、お役に立てるように頑張りますので、宜しくお願いします。』
『お嬢様、成り行きとは言え良い方を見つけましたな。コレでワグナー家もますます発展していく事でしょう。ナカムラ殿、一つ宜しく頼むぞ。剣の事であればいつでも指南するから尋ねてきて欲しいし、忙しいようであればこちらから領内にでむこう。』
最初の態度と打って変わってボッシュさんも笑顔だ。主家の娘とはいえ、よほどケリーさんが可愛いと見える。
『それは良い。ボッシュはあぁ見えて剣の腕は確かでワグナー家の剣術指南をしてもらっていた。今は大きな戦はなく平和とは言えるが、出会った時のような事がなくはない。私からも父上に話しておくのでボッシュもハジメ殿の時間がある時に手ほどきをお願いする。」
『はっ。このボッシュ、もう一度ワグナー家のお役に立てて嬉しい限りでございます。』
話の方向性がまとまった事で今夜はおひらきとなった。
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