第9話 向かうは南部の街・アドリアノープル
馬車を走らせること、約4時間。
途中何度か小休憩を挟みながら追っ手が来ないか用心しながら南東へと進んでいた。向かうは南部ある大きな街、アドリアノープルだ。
ガリア連合王国の東側アウストラシア地方を治めているのが、ガリア王国の中でも有力な貴族である侯爵のガロリンク家である。
領民の数は約50万人で北部は国境に接して鉱山資源が豊富であり中部は30万人都市領都のアウレリアを中心に流通と小麦、そして南部は大きく突き出た半島の形をしており天然の良港となっている。
目指すアドリアノープルは南部の半島の付け根にある中心都市で船を使った交易の要であり人口が約5万人となっている。
欧州の中世に似た世界観となると、飛行機や鉄道はもちろん無い。
大きな街にはそれなりの人口はいるが街から街への移動には場合によっては数日を要する事になる。
『追っ手の心配はやはり無さそうだな。もう少しで小さいが宿がある村に着くはず。今夜はそこで休む事にしよう。』
『分かりました。村があるならば食事の心配も無いでしょうし。馬も頑張ってくれてるので休ませてあげたいですし。」
さらに少し馬車で移動して、ハジメの時計の針は5時を指していた。太陽はだいぶ傾きかけ夕方になっていた頃、村に辿り着いた。
さっそく宿屋に向い部屋はなんとか手配がついたのだが、1つ問題があった。
時間もやや遅かったのと村にある宿屋では部屋の数が限られて部屋が1つしか空いていないのだ。
しかもダブルのベッドしか無い。
やむを得ずケリーさんに了承してもらい残っていたこの部屋で休む事になった。
ご飯は宿屋の一階がフロントとレストランを兼ねており、メニューはパンとスープ、そして近くで取れた鳥肉の料理で家庭的な雰囲気だった。
味は塩味しかないのか、ハジメにはやや物足りない味付けだった。
食事をすませそろそろ部屋へ戻ろうとした時に、宿屋の扉が大きな音を立てて開きハジメ達のテーブルに一直線に向かって来た老齢の男がいた。
ハジメは立ち上がり身構える。食事とはいえ腰には剣がある。
(やっぱり追っ手か?しかし村の中にこんな堂々と来るとは)
『お嬢様ー!!ハイマン様も物盗りに襲われと聞いて、このボッシュ居ても立って居られず!!!』
レストランの中がザワつく。
「ハイマンってあの代官さまの?」
「襲われたって?いい気味だろ?」
「どうせ、悪い事してたんだろうから天罰よ」
(思った以上にハイマンさんの評価が悪いな。下手をするとこちらにも飛び火するか?それにしても、この声の大きな老人は誰だ?)
『ボッシュ!相変わらずうるさいな、お前は笑ココはお前の故郷だったか。会えて嬉しいがお嬢様はやめてくれよ。息災か?』
『はっ、お嬢様におかれましてもますますお美しくなられて。このボッシュ感激するばかりです。亡き奥方様にそっくりになられて。』
ボッシュの声を聞いてまた場がザワつく。
「おいおい、ボッシュさんがお嬢様と呼んだって事はワグナー男爵家のご令嬢か?」
「あの男爵家の人まで襲われたのかい?なんて迷惑な代官だ!」
『とにかくココでは周りもザワついているので部屋で話しましょう。ボッシュさんも良いですか?』
『なんじゃ?どこの小僧だ?お嬢様と同じテーブルにいるとは不届きな。』
ケリーがやや本気で怒る。
『やめろ、ボッシュ!不届はお前の方だ。この方は私の窮地を救ってくれた恩人だ!!珍しい名前だが家名がある。貴様にもこの意味は分かるだろう!』
『むっ、それは失礼をした。某はワグナー家で長く仕えていたボッシュという者。其方は?』
『申し遅れました。ハジメです。ハジメ・ナカムラです。故あってケリーさんと行動を共にしています。それは置いといて、とりあえず部屋へ。』
こうして3人で上の部屋に向かった。
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